魔法科の御伽魔法書   作:薔薇大書館の管理人

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今日も頑張りますか~。


私のプリンセス

 

 

 

 

 

 

 

 内気で暗い印象の美晴がなにやら本を読みだす仕草をする。そして表情にも少し憧れや輝きが見られる。ボサボサとした髪で目が覆われているため、内気なイメージが残りつつも、ほんのり笑顔を見せる事で、美晴が演じる少女の内心が垣間見えた。

 

 そこに、美晴がふと振り返り固まる。その表情には驚きがあったが、それと同時に頬を赤らめる。そして俯いてもじもじと指を絡める。少しした後で自分の頭に手を置き、今まで見せた少女の笑みの中で一番輝いていた。

 

 それからは何かを決心した顔つきを見せ、乱れていた服装も整え、ボサボサさせた髪も洗う仕草も取り入れ、綺麗に戻す。慣れないメイクをしている感を出しながら鏡の前で必死に自分を磨く姿を表現する。

 

 そしてついに輝かしい変貌(元の姿)に生まれ変わった。

 

 ドキドキしているのか、顔も赤いし、何度も深呼吸している。それはまるで告白する可愛らしい少女のように。

 

 その思考は正解で、次の瞬間、美晴が初めて台詞を口にする。

 

 

 『貴方の事が…好きです…!』

 

 

 精一杯自分の気持ちを詰め込んで一言の告白を口にする。

 

 目もつぶって返事を待っている美晴の手は震えている。どんな返事を返されるか怖い…。でも伝える事は言った、『好き』って。その想いが見ている人にも伝わってくる。審査員として美晴の演技を見ているRYUも、微笑ましさを感じて口元が少し緩み、微笑を浮かべていた。

 

 

 そんなRYUの微妙な変化に気づいたんだろう。ふと目を開けて視線が合ったRYUと美晴。微笑を浮かべて自分を見つめてくれるRYUを見て、美晴は緊張から解放され、ほっと胸を撫で下ろし、笑顔を浮かべる。

 

 誰もが想いが通じたと、見事恋が実ったと美晴の笑顔を見て、そう感じるのだった。

 

 

 

 「……はい、終了です! ちょうど一分です!」

 

 

 時間を計っていたスタッフから演技終了が知らせられる。その瞬間、空気が変わり、美晴は少しだけ身体の動きが硬かったが、お辞儀をする。

 

 

 「ありがとうございました。」

 

 

 「……一つだけ質問してもいいかな?日暮さん。」

 

 

 「はい、なんでしょう?」

 

 

 大澤監督が美晴を貫くように熱い眼差しを向ける。それにプレッシャーを感じる美晴だが、持ち前の明るい笑顔を保ちながら答える。

 

 

 「……どうしてあの演技にしたのか教えてもらいたい。あれが君のプリンセスだったのかね?」

 

 

 「はい。」

 

 

 大澤監督と美晴の会話を見守りながら聞く全員。

 

 

 「君のプリンセスとは一体何かな?」

 

 

 「はい…、素敵な恋に憧れる女の子…です。

 

  小さいとき、童話を呼んだりするとお姫様をカッコよく助けてくれる王子様に憧れてました。それが現実にもきっとあるって思うくらい。いつか自分の前にも王子様が現れてくれるって。お姫様を自分と重ねて頑張る人もいる…。それって誰でもお姫様になれるって事ですよね?

 

  だったら、お姫様のように恋に憧れ、頑張る女の子も立派なお姫様だと思って、私なりの”プリンセス”を監督に見てもらいました!」

 

 

 「……国を抱え、財宝も持ち、国の行く末を見守る現実的なプリンセスではなく、メルヘンなプリンセスでもなく、そのプリンセスに憧れる少女に視点を置いたという訳か。

  なるほど~。

 

  …分かりましたよ、答えてくれてありがとう、日暮さん。」

 

 

 「は、はい! ありがとうございました!」

 

 

 さっきよりも深くお辞儀した美晴は参加者たちが並ぶ場所に戻る際、ちらっとRYUを見て、こっそりと笑顔を送る。そして手にはピースサインを作って見せるのであった。

 

 

 




うんうん、美晴の言う事、良くわかるよ。
要するに「恋する乙女は皆プリンセスなのよ!」ですな!

なんだか天然な美晴らしい考え方…だったよ!(たぶん)

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