魔法科の御伽魔法書   作:薔薇大書館の管理人

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ここで美晴が凄いって所を見せていかないと!!…できるかな?


意外満載な序奏

 

 

 

 

 

 

 

 合図が入り、美晴がプリンセスの演技を開始する。

 

 そのためにまず一番最初にした事は………、自分の整った髪を手でボサボサに乱れさせる事だった。身嗜みも崩して(たとえばボタンを掛け間違えたり、片方のレギンスの裾を持ち上げて、だらしなさを演出する)、更にしっかりと伸びていた背筋も前に少し曲げて猫背にする事によって、さっきまでの美晴とは思えないほど、印象がガラッと変わった。

 

 さっきまでは明るくて、笑顔いっぱいだった美晴とは違い、オドオドしていて引っ込み思案な少女になっていた。

 

 この変わりようには小さなどよめきが起こる。しかし今が審査中だというのは弁えているため、すぐに収まる。

 

 

 

 まぁ、既に切り替えている美晴は、オドオドした態度で演技に入る。

 

 

 どうやらあたりをキョロキョロし、何かを避けるように歩いて座り込む。いや、崩れ落ちると言うべきか。力なく床に座り込み、全身を震え上がらせ、頭を抱える。何かに恐怖している様子だ。

 

 この演技を見て、リアルに感じる恐怖が伝わってくるが、審査員も参加者たちも訝しい視線を向けている。

 確かに演技力は凄い。美晴が演じている少女が怯えているのがひしひし伝わってくる。しかし、大澤監督が提示したのは、「自分なりのプリンセスを見せてほしい」だ。プリンセスと言えば、綺麗なお城で美しいドレスを着て、優雅で何不自由ない生活をしてきた美人。輝きを持っている存在だ。それなのに美晴が演じているのはそれとはまったく正反対のもの。訝しむのは当然だった。しかし、ここでそれぞれが抱く考え方が大きく変わってくる。

 

 一つ目は、プリンセスの演技とは到底思えない美晴の演技に「ミスったわね。」「これでライバルは一人消えてくれたわ。」等の不敵な笑みを浮かべた参加者たち。

 

 二つ目は、プリンセスの演技とは到底思えない美晴の演技に「あの子は何をしようとしているんだ?」「これは審査の基準に当てはまらないのでは?止めるべきか?」等の困惑と疑問、鼻白むオーディションスタッフ。

 

 そして最後の三つ目は、美晴の演技をプリンセスの演技の前振りだと読んで、どこまでの表現力を魅せてくれるのか、興味と期待が混じった視線で見つめている大澤監督、翔琉、RYU、そして鈴蘭といったこのオーディションの深淵に気づいている者達だった。

 

 

 このそれぞれの観点から美晴を見た時、同じ結果を見たというのに、浮かべる表情は全く異なるのはもう少し先になる。

 

 

 

 

 …話が少し逸れたが、美晴は自分なりの”プリンセス”として考えて演技を続けていく。

 

 

 

 その演技は誰でも当てはまる可能性がある内容だった。

 

 

 ……女の子として生まれたなら。

 

 

 




…そう言えば気が付いたら、300話超えていた。

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