魔法科の御伽魔法書   作:薔薇大書館の管理人

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 これこそROSEの絶好調だよね!


魔法試合

 

 

 

 

 

 今日は待ちに待った魔法試合当日。ギルド内も浮き足立ち、モニターの前に全員集まっていた。

 

 

 魔法試合は帝国ギルド連盟がランダムに対戦ギルド、対戦場所、時間もランダムに決めるため、朝一番に参加ギルドに発表される仕組みになっている。場所や時間を間違えただけで不戦敗し、ランク落ちするギルドや魔法師もいるため、この発表は魔法試合の参加者には息も詰まるほどのものだ。(実際に息を詰まらせたら、試合にも出られないけど。)

 

 

 魔法試合発表時刻になり、モニターに試合運営のマスコット、マジバトが現れた。帝国が名のある魔法師に作らせた人工頭脳を搭載した鳥類型CAD.会話もでき、魔法も自分の思考の元で、行使できる。ただし、暴走する事も考慮して、ストッパーの起動式も内蔵されている。鳩に似せていて、片目には鼻掛けメガネがおしゃれに掛けている。帝都の至る所で起きる魔法試合を飛び回り、実況するのだ。

 

 …と、話が逸れたが、マジバトが画面に現れ、発表する。

 

 

 「おっはよう~!! 今日も快晴。 明日も快晴。 魔法試合も快晴!君の心も快晴か~い!!」

 

 

 「「「「「「「「「「「「………………」」」」」」」」」」」」」」」

 

 

 ギルド内に吹雪が吹く幻影が見えた。

 

 

 「おいおい。ノリが悪いぞ~!! 楽しまなきゃ!」

 

 

 「どうやって乗れっていうんだよ。 いつもながらサブい。」

 

 

 ギルドを代表して、みんなのムードメーカーである剣崎兵庫が突っ込むが…。

 

 

 「よっしゃ! じゃ、今回の対戦ギルドを発表するぞ!」

 

 

 「って! 無視か!Σ(ー口ー;)」

 

 

 相変わらず自分のペースで話を進めるマジバト。

 

 

 「対戦ギルドはこいつらだ! ”精霊”と”ノワルナ”だ!」

 

 

 「ノワルナ…か。 相手にとっては不足なし。」

 

 マサユキがニヤニヤと呟く。

 

 

 「第一試合はギルド”精霊”との対戦。今から3時間後にマギクススクールの校庭で対戦だ。

  次に第二試合はギルド”ノワルナ”との対戦。第一試合終了後から2時間後にクエストタワー最上階にて対戦。

  以上が今日の対戦カードだぜ! う~ん! 盛り上がってきたな~!」

 

 

 「相手にとっては不足はないが、対戦場所の位置が少し離れている。クエストタワーの事は…まぁ、お互いランクAだし、大丈夫だろう。」

 

 

 暁彰がマジバトの情報をもとに、対戦時間と場所を考慮し、調整していく。

 

 

 「じゃ、健闘を祈るぞ! 」

 

 

 そういったかと思うと、いきなり剣を取り出し、「ケン、ケン」と言いながら画面の正面まで来ると、「トウ~~っ!!」と言って剣を振り下ろし、画面は切れた。

 

 

 それを見ていたギルドメンバー全員、静まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして、第一試合”精霊”との魔法試合が始まろうとしていた。くろちゃんは戦況を見つつ、指示しないといけないため、頭の中でイメトレをしていた。そこに、ホームズが肩をたたいて、励ます。

 

 

 「大丈夫さ。今まで訓練してきたことをそのまますればいいだけさ。それに、何よりギルド全員がいるんだ。何かあっても、絶対フォローしてやるよ。」

 

 

 「うん、ありがとう。試合の時はよろしくね。 総司令長ホームズ!」

 

 

 「おいらもよろしくな。 リーダー兼後衛隊長、くろちゃん。」

 

 

 それから持ち場について、試合の合図を待つ。くろちゃんはその間、持ち物の点検に入る。CADに魔法試合報酬記憶キューブ。

 

 魔法試合は報酬がもらえるため、その報酬を記憶するキューブが渡される。勝敗だけでなく、試合での貢献度でも報酬がもらえるため、このキューブがないと、報酬がもらえないのだ。ちなみに、対戦場所には観測領域魔法が展開するため、その魔法のおかげで、データを取ることができる。

 

 

 そして、相手ギルドの”精霊”が現れ、試合時刻が迫ってきた。

 

 試合の合図のランプが赤から、黄色、そして青となり、ブザーが響き渡る。

 

 

 「魔法試合、開始~~~!!」

 

 

 ブザーと一緒にマジバトが試合の宣言をする。それを合図に一斉に両者、魔法を展開する。

 

 相手ギルドの”精霊”は早速攻撃魔法を打ってきた。『氷炎地獄(インフェルノ)』・『凍火』等の全体攻撃に、『ブリオネイク』・『激震の共振破壊』等の単体攻撃を仕掛けてくる。

 

 それに対し、ROSEは後衛が『ブラックアウト』・『無風領域』で相手の防御を低下させ、魔法力も低下されていく。更に、前衛が『召精』で自分の魔法力を増加させた。強力攻撃魔法を前衛は受けるが、後衛のホームズが『オキシシャワー』や『リラクゼーション・ソーン』の回復魔法を発動する事で、前衛は回復をしながら、相手の攻撃を躱し続けてゆく。その間、後衛陣がサイオン弾や『遠当て』で着々と相手の攻撃する。

 

 

 相手ギルドはROSEの攻撃を訝しく思いながら、攻撃を続ける。先に前衛をダウンさせれば、後衛の攻撃ではまっとうな威力の攻撃はできないからだ。だが、いくら攻撃しても、すぐに回復されてしまい、一向に倒れない。”精霊”に焦りが見られ始める。

 

 

 それを目敏く見ていたくろちゃんは前衛に指示を出す。

 

 

 「今だ! 前衛は攻撃開始! 回復隊は攻撃に回って!」

 

 

 それ合図に、前衛は待ってましたと攻撃に転じる。

 

 

 前衛の御神、暁彰、ルー、huka、サガットは強力攻撃魔法を繰り出す。

 

 サガットは『地割れ』を、ルーは『破城槌』、『直列地雷』を、御神は『ランド・スプリング』を、暁彰は『爆裂』を、hukaは『フォノン・メーザー』を発動した。

 相手の前衛はこれくらいなら凌げると思っていたが、一発で撃沈される。

 

 

 「な、なぜ!?」

 

 

 「コンボパワーだよ。」

 

 

 相手の問いかけに御神が答える。相手は返事が返ってくるとは思っていなかったが。

 

 ”コンボパワー”はギルド内で魔法発動をすると、コンボが加算されていき、それに応じて、魔法力も上がっていくシステム。観測領域魔法の特性を利用したのだった。これにより、魔法力が飛躍的に上がったROSEの攻撃を”精霊”は防げなかったという訳だ。

 

 しかも、既に魔法力を全て攻撃に尽くしたため、復活する魔法力も尽きてしまった。後は、ROSEの一方的な攻撃タイムとなる。

 

 ROSE後衛がサイオン弾で稼いだコンボをやめ、気絶した相手の有効な『地鳴り』に魔法を変更し、撃ちまくる。

 

 ”精霊”の前衛が全滅し、後衛の連携が乱れる。『マルチ・アロマ』で御神達の防御を下げようとするが、初めに後衛が魔法力を低下させたため、威力は米粒程度。

 さらに、攻撃魔法を必死に展開するが、『風刃乱斬』や『能動空中機雷』をするがやはり弱っているため、威力が発揮されずに、どんどんポイントに差が生まれる。

 

 

 そして、とうとう試合終了ブザーが鳴り響き、圧倒的大差でROSEが勝利した。

 

 「くろちゃん、いい感じに指示できたじゃない!?」

 

 

 「タイミングもばっちりだったし、よかったぞ!」

 

 

 みんなでハイタッチし、祝いあった。

 

 

 それから、第二試合でも前の試合の疲れを感じさせず、圧倒的大差で今回の魔法試合の完全勝利を果たしたのだった。

 

 

 

 ギルドに戻った後、

 くろちゃんは報酬記憶キューブに貯まったポイントを嬉しそうに掲げた。ちゃにゃんも同じく初めての報酬にくろちゃんが何をするか参考に聞いてみた。

 

 「くろちゃんは貯まったポイントで何をするよ?」

 

 

 「ふふん! 新しいカメラを買うんだ! 防水加工付の最新録画用カメラを!」

 

 

 「絶対に買わせないっ!!」

 

 

 ちゃにゃんはくろちゃんの記憶キューブを取り上げ、逃げた。それをくろちゃんが追いかけ、追いかけっこがギルド内で勃発した。

 

 

 






 カメラから離れないのね~。

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