そしてかなりの覚悟をもって見てください!!
あ、メリークリスマス!!
今日は年に一度のクリスマス・イブ。
この日は想い人と一緒に幸せな夜を過ごす特別な日…。
女性なら夢見るこの聖夜を深雪も満面の笑みを浮かべて喜びを噛み締めていた。
「ふふふ。今日はお兄様と二人きりで過ごせます! 深雪は嬉しいですわ。」
クリスマスの飾りつけをしながら、達也と二人きりという状況に嬉しがる深雪。水波もいるのだが、テーブルに置手紙を残して出て行ってから戻ってこない。
帰りの遅い水波も心配だったが、久しぶりに達也と二人きりになれるという事が上回り、「水波ちゃんが気を効かせてくれたのね。」と解釈し、心の中で感謝を伝えるのだった。
「…これでいいかしら? 忘れているものはないですわね?」
一通りのクリスマスの飾りを終え、(それにしても凝った演出をしているが)おかしな点がないかを確認する。
「……料理も出来上がりましたし、ツリーも問題ないですね。雪彫刻も…はぁ~、何度見ても立派ですわ~~!!」
得意の冷却魔法で大気から雪を作りだし、見事な達也の雪でできた彫刻を作り上げ、目がある度に頬を赤らめ、物思いに耽る深雪。
雪彫刻達也は、深雪によってドレスコードされ、達也なら普段…、いや本人からは絶対に着ないだろうプリンス衣装を着ていた。そして、腰を折り、掌を上に向け、そっと差し出し、笑みを浮かべる様はまさしく「美しい姫君、僕と踊ってくれませんか?」という夢見る女子には憧れのシュチュエーションをもたらしていた。
そんな雪彫刻達也を見つめ続けながら、水波の帰りを待っている深雪だったが、背後から声を掛けられ、身体が跳ねる。
「綺麗な飾りつけだね、深雪。 手伝えなかったのがもどかしいくらいだ。」
「お、お兄様っ!」
突然の本物の達也の登場に慌ててカーテンを閉めて、雪彫刻達也を隠し、振り返る深雪。そんな深雪を見て、訝しく思った達也だが、深雪が息を吐き出すのを見て、思った以上に驚かせてしまったらしいと思い、申し訳ないと謝る。
「すまない、驚かせすぎたな。」
「い、いえ!滅相もありません!」
「そうか?有難う?」
必死に大丈夫だと首を強く振り続ける深雪の様子にどこか違和感を感じた達也は無意識に疑問符を使ってしまった。
しかし、気を取り直し深雪との会話を楽しむ事にする。
「深雪、疲れただろう?ここまで立派に飾りつけしたんだ。俺に何かできる事ならするぞ?」
会話を楽しむより、最愛の妹に労いをする達也。実は達也も飾りつけや準備を手伝うと言ったが、深雪が頑なに達也に手伝ってもらう事を拒んだため、出来上がるまでリビングには入れなかった。深雪は達也を驚かせて喜ばせようとしていた。それに飾りつけを手伝ってもらった事で達也の研究する時間が削られる事に胸を痛めるほど、申し訳ないと思っていた。だから、達也にお願いして水波と一緒にクリスマスの準備をしていたのだった。
達也も深雪のお願いを受け入れ、何かあれば声を掛けるようにと伝えて、地下室で地下室で研究をしていた。
その間、水波が買い出しに出かけたので、一人で完成させた深雪を水波が帰って来るまで労いたいと思うのは、達也にとって当然の行いである、……………はずだった。
「さぁ、深雪遠慮しないで何でも言ってごらん?」
「え!!? 何でもですか!? お、お兄様に? 」
「そうだ、可愛い妹の願いを叶えてあげたいんだ。」
「もう…、お兄様ったら! 可愛い妹だなんて…。ふふふ。」
「ああ…、間違えたね。”愛しい妹”だった…。」
「え?」
自分にだけ見せてくれる優しい笑顔だった達也が急に真剣な眼差しになり、深雪の顔に自分の顔を近づける。
真っ直ぐに、しかも近距離で達也に見つめられ、固まる深雪。
「お、お兄様…?」
動揺のあまり、声が裏返りながらなんとか達也に呼びかけるが、達也はそれをスルーした。
「俺は深雪がこの世界で一番愛おしい…。こんなにも胸が熱く、鼓動が跳ね上がるのも深雪…、お前しかいない…。 まったく、罪深いな…、深雪?
お前が俺の心を全て……持って行ってしまうのだから…。」
深雪の黒い髪を右手で掬って、その紙に口づける達也。そして上目遣いで心の奥まで見通す鋭い目が深雪の鼓動を跳ねらせる。
「お、お兄様!? どうしたのですか? い、いつものお兄様ではありません!」
「いつものって、俺はどんな奴なんだ?深雪のその柔らかくてかわいらしい唇を動かして甘い声で言ってほしい…。」
今度は耳元ではっきりした口調でなおかつ愛おしそうに囁く達也の声が深雪の思考を停止させる。
いつもの達也ではないと理解してはいるものの、こんなにも自分に愛を語ってくれる達也なら自分は全てを捧げても構わないと、一線を越えそうになっている深雪は、達也の甘いお願いを口にし出す。
「お、お兄様は、いつも深雪を守ってくれてます。ずっと私に寄り添ってくれています…。とても妹想いの方ですよ…。」
「うん、そうだね。でもそれっていつもの俺じゃなくても、いいんじゃないか?現に今の俺は違わない…。ありのまま、深雪に愛を捧げている。」
「お兄様…♥」
「だが……」
達也の言葉が嬉しくて、顔が真っ赤になる深雪は綻ぶ口元を手で隠す。しかし、その手を達也の大きくてたくましい手が取り上げ、顔を近づけ、深雪の頬を優しく、そして厭らしく舐める。
「キャっ!」
驚きのあまり、叫んでしまうが、その叫びさえも愛おしそうに聞き入れ、微笑を見せる達也。
そのまま近距離を保ったまま、数センチの距離でお互いが見つめ合う。
「だが深雪、間違っているぞ?」
「間違って…、いるですか?」
「俺は妹想いなんてものに収まるほどお前への愛は小さくない。
……深雪、お前が欲しい。…お前だけが欲しい。深雪の全てが欲しいんだ…。
流れるようなこの黒髪も、透き通るような瞳、氷の彫刻のような美しい白肌…。そしてお前の心も…。
なぁ…、深雪…? 俺の女になってくれ…。 妹として俺を愛するのではなく、一人の男として愛してくれないか?」
真っ直ぐに吸い込まれそうに深雪の心に入ってくる達也の気持ちに深雪は涙を流す。それを見て、達也は苦笑し、言葉を紡ぐ。
「………やはり俺を兄ではなく、異性として愛するのは嫌か…?」
「そ、そんな事はありません!!」
さっきよりも涙を流し、達也の言葉を否定する深雪。そのまま達也の胸に飛び込み、腕を背中に回して抱きしめる。
「深雪は嬉しいのです! お兄様と一緒に居られて嬉しかったです!でも、いつもお兄様に妹として見られるのは、寂しくて、悲しかった…。実の兄妹ですから、いずれお兄様が………、他の女性と結ばれると思うと、胸が苦しかったです。………お兄様と結ばれる事はないと思ってましたから…。
でも、深雪は今、その夢が叶い、嬉しいのです!
お兄様と添い遂げる事が出来る事が嬉しくてたまらないのです!
……お兄様、どうかわたしをお兄様の御嫁様にしてください♥」
深雪は自分を見下ろす達也の顔を縋るように見つめる。
達也は微笑を浮かべると、深雪の頬に優しく触れ、見つめ返す。
「良いのか…? 」
「………はい、お兄様。深雪をお兄様だけのものにしてください…。」
こうして、達也と深雪は唇を交わし、お互いの熱を肌で感じ、絡み合うのだった…。
★★★
「……………………深雪、深雪。起きなさい、深雪。」
聞き忘れる事のない達也の声を耳にし、深雪は目を覚ます。目を開けるとそこには深雪の顔を覗き込む達也の顔があった。
「!! お兄様!!」
「そんなに慌てて起き上がらなくてもいい。もう少しこのままでもいいから、ゆっくりと体を起こしなさい。」
「……はい、…お兄様? いつも通りですね?」
深雪はあんな事をしたのだから、もっと情熱的に囁いて起こしてくると思っていたが、冷静な態度のままの達也に疑問を覚える。そして、しばらくして慌てて自分の身なりを確認する。
(あら? 私、いつの間に服を着ていたのかしら?)
達也に脱がされ……こほんっ、こほんっ、されたはずなのにきっちりと着ている服の状態に疑問が止まらない。
「私は一体?」
「覚えていないのか、深雪? お前の願いを聞いてやると俺が言ったら、『では、お兄様…、膝枕してもらっても構いませんか?』とお願いされて、膝枕したはいいが、よっぽど頑張ったんだな…、すぐに眠りに入ったんだ。」
「え…、えええっ!!」
(じゃあ、今までのは全て夢ですのっ!!)
甘くて苦い自分の恋が実ったと思いきや、全てが夢だったと思い知り、脱力する深雪。そんな深雪を心配する達也の膝に頭を乗せ、これは夢だと思い、再びあの世界に戻るために目を瞑る。
しかし、すっかり目が覚めてしまい、これが現実だと理解した深雪は激しく落ち込み、達也から頭をなでなでされる事で、機嫌を取り戻す。膝に座るというおまけつきで。
「……これもこれでありですわ。」
そう呟く深雪は、夢の達也の事を思い出し、一人で含み笑いするのだった。
そして、なぜ深雪が自分を見て笑うのか、理解できず、水波が重い荷物を抱えて帰って来るまで、良くわからないまま深雪を甘く労う。
「お兄様…。」
「何だ?深雪。」
「メリークリスマス…。」
「ああ…、メリークリスマス。」
水波の帰宅で二人きりの時間が終わりを告げるのだった。
ごわぁ!!
(吐血)
こ、これは~~!! 完全に甘すぎるだろ!!そして、夢オチ。ほーちゃんの達也と深雪をイチャイチャさせるというネタとくろちゃんのリア充撲滅ネタを取り入れた結果…。こうなりました。
明日ももしかしたら、クリスマス短編すると思います!