魔法科の御伽魔法書   作:薔薇大書館の管理人

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達也の案が採用された事で…。


頑張れよ。

 

 

 

 

 

 RYUと翔琉のCM勝負が決まった事で、大澤監督も胸を撫で下ろすと同時に面白味を感じていた。この勝負は絶対にこれからの二人の成長に大きな一歩を与える。そして自分自身もまだ知らないRYUの魅力を引き出せるかもしれない。未知数の可能性が垣間見え、大澤監督は意気揚々と弾む気持ちを内側に秘め、早速中断していたオーディションを再開するように指示を出すのであった。

 

 

 

 

 

 ★★★

 

 

 

 

 

 「ねぇ、まだ決まらないのかな?」

 

 

 「いつまで待てばいいのかしら。」

 

 

 「でも、待つ価値はあると思わない?だってあの”RYU”様と出演できるかもしれないんだから!」

 

 

 「そうよね! 私、RYU様の曲を聞いた時からもう好きで、一緒に仕事出来たらどれだけ幸せかな~。」

 

 

 「あ、私、さっき飲み物を買いに行った時、スタッフの人に連れられて会場に入っていくRYU様を見たわ!」

 

 

 「本当!? なら、オーディション頑張らないと!」

 

 

 オーディション参加者である女子が騒ぎ始める。

 

 その光景を黙って見守る美晴は、RYUが出演する事になった事実を誰にも話さず、ひたすらスタッフが呼びに来るのを待っていた。彼女達に本当の事を言うつもりもなかったし、RYUが審査会場にいる事は分かっていた事だったので、気持ちを高ぶらせないように落ち着かせていた。

 

 そこに、美晴の準備ができたのを確認したかのようなタイミングでスタッフが参加者を呼びに来た。スタッフについていく参加者たちは、今から生のRYUに逢えるかもという願望を胸に、互いに囁き合いながら向かっていた。例外なのは、美晴と先程美晴に話しかけてきた鈴蘭くらいだ。

 

 

 「それでは、みなさん。お待たせしました。一人ずつ入って、横に一列で並んでください。」

 

 

 審査会場のドアの前で一度止まり、指示を受ける。参加者全員返事をして、中に入っていく。一人ずつ入っていく中、中からどよめきが聞こえてくる。…といっても、大声を上げる非常識な人間はいない。息を勢いよく呑み込んだり、あまりにもの興奮したのか、後退りしようとして、他の参加者にぶつかったり、転倒しそうになる参加者がいた。しかし、やはりいいマナーとは言えない。大澤監督がわざとらしく咳払いして参加者たちの意識を正常へと引き戻す。そして、鈴蘭も華麗な歩きで加わり、他の参加者たちと差をつけた後、最後の一人として美晴が会場へと入る。芯がある動きで前の参加者たちとも違って、多少幼さはあるものの、堂々とした歩きで列に並び、お辞儀する。

 

 この会場への入り方で大澤監督はある程度の関心を向ける子を選別していた。

 

 

 その一方、美晴たちから見る審査員の顔ぶれに驚愕する者や身を引き締める者、顔を真っ赤にして興奮している者とに分けられるくらい、参加者たちは審査員のメンツにただ固まっていた。

 

 

 数々の作品を生み出してきた大澤監督はもちろん、人気ダンス&ボーカルアイドルグループ『ハイスピード』のリーダーである小泉翔琉、そして突然現れ、瞬く間に注目を浴びたミステリアスなRYUが並んで座っていた。

 

 浮かれるなと言う方が、難しい。

 

 参加者たちが間近で本物を観察するファン精神を醸し出す中、美晴はしっかりとオーディションに意識を向け、自分の持てる力を出す事を念じていた。

 すると、RYUと視線があった気がした美晴。合ったと言っても、RYUは室内にも拘らずサングラスをかけていた。そのため、どこを向いているかなんてわからないが、美晴にはRYUがじぶんをみたような気がしてならなかった。

 しかし、美晴が感じ取った視線は気のせいではなく、RYUは他の参加者とは違って雑念を消し去って、オーディションに臨んでいる姿を見て、微笑ましくなり、少しだけ笑う。そしてそのまま声には出さずに口だけを動かす。

 

 

 『が・ん・ば・れ・よ。』

 

 

 RYUなりの激励だった。

 

 こうなったいきさつはどうであれ、美晴の挑戦を間近で見届ける事になったRYUは、せめて始まる前に美晴にだけ応援を向けた。これからは自分も審査員として見ていかなくてはならない。一人だけを見る事は出来なくなる。

 RYUは、美晴が精いっぱいに臨めるように優しく見守るのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




これで、達也様に頭ポンポンされたら、キュン萌えしてしまうな~。

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