魔法科の御伽魔法書   作:薔薇大書館の管理人

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うおぉぉぉぉ~~~!!


咄嗟の慰め

 

 

 

 

 

 

 

 「大丈夫か? 美晴。 立てるか?」

 

 

 廊下で腰を抜かしている美晴に近寄り、膝を付いたRYUは、美晴の表情を確認しながら、問いかける。美晴は、その声でようやく俯いていた顔を上げ、RYUの顔を見る。すると、涙が溢れてきた。美晴は必死に止めようと目をこするが、極度の緊張から解放されたからか、涙は止まらない。

 

 

 「あ…、ご、ごめんなさい! 泣くつもりはなかったんですけど! どうしても止まらなくて…! 弱い所を見せてばかりでごめんなさい!」

 

 

 ひたすら謝り続ける美晴にRYUは何と声を掛けるべきか分からなくなった。そしていつの間にかRYUとしてではなく、達也としての意識で接してしまうのだった。そもそも達也は泣いている女性を慰める術など知らない。(知っていたら相当のナルシストだ)だから咄嗟に達也は頭を優しく撫で、平静心を保ちつつ、優しくした声色で励ます。それは、落ち込んでいる深雪を慰める時にする行動でもあった。

 

 

 「謝らなくていい、美晴。美晴もよく頑張ったな。あの雰囲気の中で自分の意思を言えるなんて普通ならできないさ。それに、感心もしているんだぞ?あの時美晴は迷わず俺を逃がそうとしてくれてたな。」

 

 

 頭を撫でて、微笑みを浮かべる達也が話しかけてきた言葉で、美晴はまだ涙を流しながらもはっきりと目を開いて達也を見つめる。

 あの時は、本心から出た言葉だ。自分が人がいる場所で気軽にRYUを呼んだり、オーディション関係者にRYUの事を聞かれて盛り上がったりして嬉しくて、話してしまわなければRYUが自分のためにオファーを受ける事もなかったのに。美晴の心の中は、激しい後悔が沸き起こっていた。だから、自分がオーディションに落ちたとしてもRYUがここをされればそれで良いと本気で思った。ただそれだけが美晴を動かしていた。

 

 

 「あ、あれはただRYUさんを助けないとって…。私のために無理やりオファーを受けるなんて嫌でしたから…。」

 

 

 「そうだろうな、美晴が本心からそう言ったのは分かっている。だが、既に仕事の依頼が受理された。俺はそれを遂行するのみだ。

  俺は、美晴のその素直なところはいいと思うぞ?」

 

 

 「…本当ですか?」

 

 

 「ああ…、だからもう泣き止め。 これからオーディションだろ? 笑って挑め。」

 

 

 「…はい、分かりました。…私、もう泣きません! RYUさんを超えるためにも…、私の実力で私の夢を叶えたいから…! …ありがとうございます!RYUさん!」

 

 

 いつの間にか何事かと廊下をドアの陰から覗いて見てくるオーディション参加者も増えてきたので、達也はポケットからハンカチを取り出し、美晴に差し出す。

 

 

 「これを使え。 」

 

 

 「あ、有難うございます。」

 

 

 「オーディション…、頑張れよ。」

 

 

 「はい! RYUさん、応援お願いしますね!」

 

 

 「……ああ。」

 

 

 涙も止まり、笑顔を見せれるようになった美晴の手を取って、立ちおこしてあげる達也。そして、控室となっている所まで早歩きで向かって行く美晴はなぜか耳まで真っ赤にしていた。

 

 その美晴をどうにか慰める事が出来たのか?と自問した達也だったが、去り際に美晴の肩から払い取っていた小さなチップを指に掴んで見つめた。

 

 

 (やはりあの男は好きにはなれそうにないな…。)

 

 

 そう思いながら、そのチップを指に力を入れて粉砕する。

 

 それからペコペコ頭を下げながら近づいてきたオーディション関係者に呼ばれ、急遽審査員として会場に入る達也は、またRYUとして意識を引き締めるのであった。

 

 

 




ギリギリ…、ではなく時間通り越してしまってごめんね!
(最近毎日更新が上手くできなくなってきているうち)

早く達也の曲を歌わせてあげたい!!

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