魔法科の御伽魔法書   作:薔薇大書館の管理人

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 よし、ここからが見せ場だ!


カウントダウン

 

 

 

 

 

 「よし、今度の魔法試合にとうとうくろちゃん達を参加させるか!」

 

 

 マサユキが自信満々の笑顔でいきなりギルドメンバーに言い放った。しかし、一瞬沈黙したが、すぐにそれぞれの会話に戻る。

 

 

 「ちょっと! 聞いて! 二人とも力もつけてきたし、そろそろ魔法試合にも参加させようかなって…! みんなの意見を聞かせてほしいんだよ。」

 

 「何をいまさら。 そもそも二人を試合に出すことは元々決定事項だし、おいらたちの話を聞かなくてもいいはずだよ。」

 

 「それに、今日は、二人ともクエストタワーの完全攻略に行ったんだから、今日にでも正式に一人前の資格をもらえるでしょ。 慌てなくても大丈夫だよ。」

 

 「まさやんって、くろちゃんにご執心だからな~。あんまり構ってばかりいると、嫌われる…、いや、逆に二人で暴走するかな?」

 

 

 みんな言いたい放題言って盛り上がる中、マサユキは俯きながら言い放つ。

 

 

 「みんな、好き勝手言って…。 こんな事をしている間にも、進行しているんだぞ…!」

 

 いつにも増して深刻な表情のマサユキに皆は会話をやめ、マサユキの言葉を待ちつつ、ギルドの抱える問題に触れるのかと冷や冷やしていた。そして、とうとう顔を上げ、大声で叫んだ。

 

 

 「私が大好きなあのギルド”愛しドル”が魔法試合で徐々にオタク達を虜にするために大胆になってきつつあるのだぞ! これは早く魔法試合に参加して拝まないっ……と…。」

 

 

 「いい加減だまれっ…。 ヘムタイ相談役。」

 

 暁彰がマサユキを踏み付けて、暴走を止める。みんなもよくやったという顔で称賛の意を示す。撃沈されたマサユキだったが、顔はなぜか踏まれて嬉しいと書かれていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その夜、みんなで夕食を食べ終わった後、ホールでミーティングする事になった。

 

 

 「みんな、今日、くろちゃんとちゃにゃんがクエストタワーを完全攻略し、一人前の証、マギクスバッジを手にして帰ってきた。これにより、本格的に依頼を受けるだけでなく、魔法試合、イベントクエストでも参加できるようになった!まずは二人を祝福だ~!!」

 

 

 進行役のマサユキは最初は落ち着いた雰囲気だったが、徐々に興奮状態となり、いつものノリに戻ってしまう。先程、くろちゃんとちゃにゃんの祝福会をした後のため、メンバーの中には既にダウンしてしまっている者もいる。一刻もベッドに運んで、縛り上げないといけないメンバーのため、マサユキに先を急がす。

 

 

 咳払いをして、マサユキはくろちゃんに質問する。

 

 

 「くろちゃんはギルドにはランクがある事は知ってる?」

 

 

 「うん。ランクによってギルドに依頼される仕事のレベルが変わって、それを決めるのが、魔法試合とイベントクエストだってクエストタワーの受付嬢に聞いた。」

 

 

 「そうなんだ。まぁ、一応説明するようには言われているし、簡単に説明するよ~。」

 

 モニターにリモコンを向け、ギルドのランク説明の資料が表示された。

 

 

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ランク付けは帝国魔法師ギルド上位機関がギルドの成績や仕事依頼の達成度によって選定する。ランクは次の5つ。

 

 〇ランクS

  帝国ギルド上位機関によって、選ばれたたった1つのギルドに与えられるランク。

  主に、帝都の警備監督、帝都の重心、有名人からの依頼等の帝国に関する仕事が巻かされる。

 

 〇ランクA 定員:30ギルド

  商人や店を運営する者からの仕事依頼、帝都の大部分の捜査活動依頼などを担当。ギルドに訓練場を創設可能。

 

 〇ランクB 定員:150ギルド

  一般人からの依頼を担当。 捜査活動依頼の際は、ランクAギルドのサポート。

 

 〇ランクC 定員:500ギルド

  店のお手伝い程度の依頼を担当。

 

 (〇ランクD) 定員:?

 依頼なし。

 

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 ピラミッド型に図を表示して、説明したマサユキは最後に近づくにつれ、表情が引きつり始めたが、くろちゃんとちゃにゃんはモニターに注目しているため、気づかなかった。

 

 「質問はある?」

 

 

 「えっと、ROSEって、ランクどこに入るの?」

 

 

 「ROSEはランクAだな。 だから、割と自由に動けるのさ。」

 

 

 「じゃ、ランクSはどこのギルドなんですか?」

 

 

 ちゃにゃんの質問で、ギルドが一気に静まる。くろちゃん達は訝しみ、聞いてはいけないことだったかと話を変えようとした。

 

 

 「ランクSは”アスカ”だよ。」

 

 

 重苦しい雰囲気の中、くろちゃんの質問に答えたのは、ギルドでも前衛に特化した魔法師、hukaだった。一つの魔法だけで、大ダメージを与える彼女はギルドの中でも戦力として数えられている。そんな彼女が落ち込んでいる。くろちゃん達もギルドに張り込む空気でどれくらいのレベルのギルドが否応でも分かった。

 

 

 「”アスカ”は全員魔法力や体力が桁違いの強さを持ったメンバーで構成されていて、ほぼ無敵を誇っている。」

 

 

 「イベントでも魔法試合でも、その強さでいつも一位を手にしているんだ。あいつらに勝つにはそれなりの力と作戦を練っておかないと、一瞬で撃沈される。」

 

 

 サガットと暁彰の説明でさらに”アスカ”の脅威をひしひしと感じる。

 

 「でも、”アスカ”には勝った事があるし、それほど恐れなくても大丈夫!みんなで協力すれば、倒せない事はないから!」

 

 場の空気を一掃しようとミナホがいつもより明るい口調と声色で声かける。

 

 

 「そ、そうなんだ! 心配ないですね! そ、それで今度の魔法試合に参加するって言いましたけど、いつですか?」

 

 ミナホに合わせて、ちゃにゃんも参加しつつ、話を次の魔法試合に移す。そうすると、さっきまでの空気が嘘のように生気を復活させた。

 

 

 「明日だけど? 」

 

 

 「「明日っ!! 」」

 

 「そうそう。で、明日はくろちゃんのギルドリーダーとしてのお披露目も兼ねているから、頑張ろうね!」

 

 

 マサユキはこれでおしまいというかのようにメンバーを解散させて、明日の備えて早めの就寝をするように言うと、二階の寮部屋へ上がっていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ベッドに横になったくろちゃんはなかなか眠れず、寝返りを何回もしていた。明日は自分がリーダーとしてみんなをまとめないといけない。上手くできるかわからない…。わくわく感と不安感が入り混じって興奮していたが、ようやく安眠導入機が効いてきて、まぶたが重くなってくる。やっと眠れると思いながら、ふと疑問に思って、言えなかった事が頭の片隅に浮かんだ。

 

 (そういえば、何でランクDは曖昧な記述しかなかったんだろう?…。)

 

 

 だけど、それを考える意識は既に深い眠りについていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 帝都のとある店の奥部屋…

 

 

 

 部屋を暗くしたこの部屋に年は20歳代ほどに見える好青年がモニター越しである人物と会話していた。相手の方は非表示にしていて映らない。

 

 「明日の準備はどうだ?」

 

 

 「滞りなく準備完了はしておりますよ。 これでも一流商人ですからね。」

 

 

 「…だが、この前は失敗しただろう?」

 

 

 「それは耳が痛いですね~! これは恥ずかしい。 何しろまだ未熟者が指示していましたので…。」

 

 

 「それはお前の選任が悪かったという事だろう。」

 

 

 「相変わらず厳しいお人だ。 でも、その者を主犯としましたので、ばれてません。」

 

 

 「…そういう事にしておこう。 だがまた失敗するようなら…、言わなくても分かるな?」

 

 

 「そりゃあもう! ご期待に沿えるように努めさせていただきます!」

 

 

 男の何を考えているか伺わせない笑みを浮かばせ、拝謁する。そして画面の向こうの声の主は用がないというかのように無造作に切る。

 

 

 この気さくな男はやれやれと手振りをし、この部屋を後にする。

 

 




なんだか、やばす?

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