魔法科の御伽魔法書   作:薔薇大書館の管理人

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オリキャラもこれから増えていくんだろうな…。必死に考えなきゃ。


急ぐ帰路

 

 

 

 

 

 

 

 なんとか深雪を宥め、急ぎ途中まで立ち上げていた通信機能を再起動し、加速魔法を使っているのではないかというほどのスピードをキーボードの上で指を動かし、メッセージを作成する。

 そしてそのメッセージを送信した相手は同じ部屋の中にいた。もっと言えば、先程まで深雪と言い合っていた存在に。

 

 

 『はい、ご主人様。』

 

 

 対象を達也だけに絞り込んだ能動テレパシーで応えが返って来る。そのテレパシーには、感情も微かに含まれており、気が沈んでいる風でもあった。先ほどの一件で出過ぎた真似をしたと反省している。しかし、反省しすぎて達也に突き放されるのではないかと、別れを告げられるのを恐れているのであった。

 

 達也も人間らしくなりつつあるピクシーのテレパシーに感情が入ってくるようになったと気づいていたが、それよりも達也には確認しておくことがある。

 

 

 『データの改竄は出来ているか。』

 

 

 他の所為とか言い役員の耳を憚る筆談は、

 

 

 『ご命令の通り、リアルタイムで偽のデータを記録させました。』

 

 

 達也の望んだ答えをもたらす。

 

 ピクシーはまだ怯えていたが、達也の問いに答えた。達也に教わったハッキングで達也が模擬戦で使用した『分解』魔法を知られないようにするため、別の魔法とすり替えた形で記録したのだ。元々、達也からハッキング技術を教えてもらっている時に「もし学校内で俺が本来の魔法を使った場合は、リアルタイムでデータをすり替えてくれ。」と言われていた。ピクシーも生徒会室に送られてくる監視カメラのネットワークを通じて模擬戦を見守っていた。だから、改竄するのは容易かった。

 

 しかし、ピクシーはまだ不安が拭いきれないからか、達也に恐る恐る問いかける。

 

 

 『ご主人様(マスター)。私は貴方のお役に立てましたか?』

 

 

 『ああ、ご苦労だった。』

 

 

 達也の役に立てたと理解し、ほっと安堵するのと同時に嬉しさを感じるピクシー。

 

 

 達也も一瞬だけピクシーへ視線を向け、秘密を守り通した魔性を労った。

 

 

 『今日はもう休め。』

 

 

 『はい、ご主人様(イエス、マスター)、サスペンド状態へ移行します。』

 

 

 ピクシーは達也の命令に従い、休止に入る。自然と瞼を瞑る。その前に、達也へ熱き視線を向け、微笑んでから夢見心地な表情でサスペンド状態となるのだった。

 

 ピクシーが休止したのを『精霊の眼』も使って、確認した達也は通信記録を抹消し、通信記録以外に開いていた事務書類をあっという間に終わらせ、片付けに入る。

 

 

 「会長、出は自分はこれで失礼します。決裁が必要なものはファイルにして、送付しておきましたので後で確認しておいてください。」

 

 

 「は、はい! お疲れ様です。」

 

 

 「お疲れさま、司波君。相変わらず早いね。」

 

 

 「五十里先輩もお疲れ様です。…深雪、悪いが先に帰る。水波と一緒に帰っていてくれ。」

 

 

 「…はい、畏まりました。お気をつけてお帰り下さい、お兄様。」

 

 

 「ああ、夕食は深雪の手料理をもらうから。」

 

 

 深雪が頭から湯気を出しつつも、作業を一旦止め、達也をドアまで見送る。それから達也が去っていく背中を見えなくなるまで見送ると、席につき、溜息を吐くのだった。

 ものすごく寂しそうな顔をする深雪。それを見ていたほのかもなんだか同じ寂しさを感じ始め、達也が部屋を出てまだ数分も経たない内から恋焦がれていった。

 

 そして二人を(主に深雪の方だが)今まで見届けていた泉美はこれは好機だと思い、深雪にたくさん話しかけ、有意義な時間を堪能するのだった。

 

 

 

 

 ★★★

 

 

 

 

 

 校門を出た達也は、情報端末で水波に深雪の護衛を頼んだメッセージを送り、最寄駅まで猛ダッシュし、芸能事務所へと急ぐ。

 

 

 (かなりの引き留めをさせているんだ。後で叔母上に叱られなければいけないかもしれないな。……甘んじて受けるか。)

 

 

 

 予定時刻よりオーバーした達也は、遅刻した事の罰を覚悟しながら、真夜の待つ、これから約四か月アイドルRYUとして世話になる事務所はどういった所なのか思いながら、向かうのであった。

 

 

 




急げ~!!交渉はじめてから、かなり経ってるもんね…。もう四時間は過ぎてるよね?
………やばくない?

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