睨み合いを始めた深雪とピクシーを見て、放っておくと大惨事につながりかねないと思うほどのプレッシャーが二人から放たれているのを敏感に感じ取った達也は、仲裁に入る羽目になった。
「落ち着け、深雪、ピクシー。いがみ合う必要は無い。」
「いいえ、お兄様。深雪がお兄様をご奉仕するのは当然の権利です!ここはきっちりと主張しませんと!」
『ご主人様(マスター)からの命令に付き従っているだけです。意味不明な言いがかりは止めてくださいませんか?』
「それはこちらの台詞ですわよ?お兄様の事は深雪の方が良く知っていますから!」
『それはこれから知っていけば済む話です。』
だんだん話がエスカレートしていき、何で言い争っているのかが分からなくなってきた頃、達也がもう一度二人を呼ぶ。
「深雪…。ピクシー…。」
『「!!」』
今度は黙り込む二人。達也の声はそれほど大きくはなかったが、重みのある声色だった。ようやくくだらない争いをしていた事に深雪は気付き、恥ずかしさからか顔を俯かせる。その合間から見れる頬や耳はほんのり朱色に染まっていた。
「ピクシー、俺を慕ってくれるのはいいが、仕事中は自重してくれ。他にも人がいる。それに俺がお前をここに置いているのは、生徒会のバックアップをしてもらうためだ、分かってるな?」
ピクシーに振り向き、表側の理由を口にする達也。それを聞き、ピクシーは達也が何を言いたいのか気づき、冷静さを復活させていく。そして次に深雪へと顔を向ける。
「深雪も落ち着きなさい。 ここでの給仕等をピクシーに一存しているのは、俺達が円滑に生徒会業務を行うためなんだ。深雪の気持ちは嬉しいが、分かってくれないか?」
「…はい、申し訳ありません、お兄様。」
自分がはしたない姿を見せたと赤面する深雪は俯いていた頭を更に下に向け、お辞儀する。そこへ達也は深雪の頭を優しく撫で、微笑を浮かべる。
「わかったのならそれでいいんだ、それに俺の方もすまなかった。少しきつい言い方だったな?」
「いえ!お兄様は何一つ悪くはありません!」
「いや、俺の態度も悪かった。だから…、俺が家に帰ったら深雪が作ったコーヒーを淹れてくれないか?」
「…!はい!喜んで!」
さっきまで落ち込んでいたとは思えないほどの満面の笑みを浮かべ、達也に諭されて残りの生徒会業務へと鼻歌を歌いながら取り組む。
吹雪の嵐の予感が過ぎ去った事にあずさや五十里、ほのかはほっと安堵するが、一人だけ達也を怨めしそうに睨みつけてくる泉美の視線を受ける達也だった。
深雪、キャラ崩壊したんじゃないか?