拳銃を向けられながらも達也は冷静に分析をする。
自分に拳銃を向けてきているこの男達がテレビマンであるはずがない。相手も拳銃の構え方から見て、相当の手慣れだ。…と言っても、脅威だと感じるほどの実力ではないと達也は直感していた。
引き金に指がかかる。
無論、発砲を許す達也ではない。達也の右手には既にスタンバイ状態のトライデントが握られていた。分解の対象を切り替えるのにタイムラグは生じない。
銃口は五つ。
その全てが銃としての形を失ってゴンドラの床に散らばった。
その光景を目の当たりにした男達は達也の分解魔法に驚いた。が、意外なほどに次への攻撃へ移行するのが速かった。これを見て達也は少し感心した。突然、銃がバラバラになり、手から零れ落ちる様を見れば、驚愕で動揺を誘い、隙が生まれやすくなる。しかし、彼らは驚愕こそはすれ、それが相手への絶好の機会へと変わる事が理解できている。戦い慣れしている。そう判断した達也は、彼らの無力化に全意識を向けた。
左右両端の二人が達也へ向けて拳を突き出す。その中指に鈍く輝く真鍮色の指輪。ゴンドラを相子のノイズが満たす。アンティナイトによって発振されたキャスト・ジャミングだ。内側の二人がナイフを構えて、揺れるゴンドラの中、達也へ向けて突進する。
CADに掛かる達也の指が二度、動いた。
キャスト・ジャミングのノイズ構造を消し去り、五人の曲者全員が両足の付け根を貫かれ床へ崩れ落ちる。
無力化は成功した。
しかし、それで終わりではなかった。中央に立っていた男が倒れ込む瞬間、左手を握りこむ仕草を見せた事に達也は気付いていた。
すぐに開け放たれていたゴンドラのドアから、空中へとダイブする。
閃光と共に爆音が生じ、ゴンドラが炎に包まれた。
達也は飛行船がマンションに落下しないように飛行船にトライデントを向けた。
仰向けに落下しながら雲散霧消を発動。
飛行船の残骸が塵と消え去る光景を見ながら、記憶した魔法の中から慣性制御を呼び出す。その直後、達也は激しい衝撃を背中に感じた。
達也は色々な作用が講じて全身骨折は免れた。もっとも『再成』が働かなければ二度と立って歩けなかっただろう。
『達也君、何が起こったの!?』
通信機から聞こえてくる響子の声も、さすがに焦っている。
当然だ。盗撮阻止のために乗り込んだ飛行船がいきなり爆破し、消え去ったのだから。まさかスキャンダル阻止で、ここまでするとは響子も思ってはいないが、突然の出来事過ぎて理解が追い付いていないのだ。響子の声の後ろからも息を呑んで達也の返事を待っている真田の息遣いも聞こえた。
「不明です。テレビ局の方に手掛かりがあると思います。あの飛行船はハイジャックされていたようですから。」
ハイジャックではなくテレビ局もグルなのかもしれなせんが、と憮然たる声で付け加え、達也は落下の痕跡を消した屋上から体を起こした。
『ハイジャック!? 何でまた!』
「目的までは結論できません。ですがハイジャック犯はおそらく大亜連合出身の者だと思いますよ。その出身と思われる語感を叫んでいましたし、アンティナイトを持ってましたから。」
『それは本当かい?達也君。』
響子ではなく、真田が通信に出てきたが、それには気にも留めない達也は返事をする。
「ええ、間違いありません。」
『………分かった、ありがとう達也君。今回の件は少佐にも伝えておく。』
「お願いします。では俺はここで失礼します。少尉、後の事は任せてもよろしいですか?」
『ええ…、もちろんよ。お疲れ様、達也君。』
微かにまだ信じられないという様子が窺える声色だったが、仕事に対してはきっちりする人なので、後の事を響子と真田に任せて、達也は覆面を脱ぎ、出掛ける際の服装に着替え、愛車の電動二輪に跨り、帰路に着いた。
そして真田と響子は、今回のデータといきさつを報告するため、風間が待つ国防軍の基地へと足早に戻るのであった。
よしよし、これで先に進める…。アイドルするけど、やっぱり達也だから、波乱ありで行かないと!
おお~~と!!危ない!!間違って違う小説に投稿する所だった!!