ですので、少しだけ時間を遡って、行こうと思います!!
四月二十七日、金曜日。
その夜、達也は学業を専念した後、藤林から連絡を受け、陰謀を企てている(つもりの)琢磨と共謀関係にある人物の元へ、赴いていた。
そして、琢磨に付けていた盗聴器から『黒幕』があの小和村真紀だという事を突き止め、さっさと交渉を終わらせ、厄介事を終わらせようと達也は仕掛ける。黒幕が真紀だったと知った達也は、雫のパーティーで会った今後関わりたくないと真っ先に思った女性だという印象しかなかったが。
「さて、俺はこれから言ってきますが…、なんですか、響子さん?」
服を着替えて、乗り込もうとしている達也が顔を固定したまま、視線だけを後ろに控えている響子に向け、質問する。そんな達也に睨まれている響子は、笑いを必死に堪えようと頬を赤らめ、口を手で覆っていた。
「ふふふ…、だって、その格好…、どこかで見た事があるんだもの…!ふふふ…、これから脅迫してくるって言うのに、なんでその格好…?ふふふ…!」
なぜかツボって、笑いが毀れている響子の問いに答えたのは、達也ではなく、今回一緒にいる真田だった。
「何が可笑しいんだ、藤林君? 僕の渾身の装備に何が不服かね?」
「あ、やっぱりこれって、真田さんのデザインでしたか。もしかしてこの装備のテストも兼てこっちに来たんじゃ…。」
「それは違う。既に柳に実験台になってもらった。データは整っている。」
「まぁ、俺は全身を黒ずくめにできればそれでいいんですが。」
「ほら、達也くんだってこう言ってくれているんだし、藤林君も甘く見ないでほしいな~。」
「別に甘く見てはいませんよ?電波吸収素材を使ったステルス装備ですし、さすがだと思います。ですが、なぜ覆面に「耳」をつければそっくりな蝙蝠をモチーフにした古い映画の怪人のような格好になるんですか?」
具体的な例えを正確に言いきった響子に、達也は「そんな古い映画を見てるんだな、響子さんは…。」…と、映画とか関心のない日常を送ってきただけに、感心した。
達也の本心から言うと、ムーバルスーツが着たかったわけだが、こんな小さな件に着られるわけもないと理解しているため、何も言わなかった。
そんな達也をよそに響子と真田が未だに話し合っていた。
「だから、偶然なんだ。」
「本当ですか?私から見れば、相手が美人女優だから、芸能界に関連着いた服装に合わせたんだと思ってました。」
響子がそう言うと、真田は口を閉ざした。
「響子さん、いくらなんでもそこまで真田さんは考えていなかったかと………」
「何で…、分かったんだい?藤林君…。」
「「……………」」
響子に図星を突かれ、独り言のように呟いた真田の言葉に思わず達也も響子も絶句してしまう。それからは、もうどうでもよくなって、怪人と化した達也はそのまま真紀のいる部屋のベランダへと飛んだのであった。
(早く厄介事は終わらせておこう。明日は予定が詰まっているからな。先送りは勘弁してもらおう。)
真紀の部屋へと翼を広げて暗闇の夜の空を飛ぶ達也は、明日の予定を思い出し、続け様にやってくる厄介事を片付けようとする…。
まずは、交渉から…。
何故これを忘れていたのか…。
答えは、原作を読んでいなかったからだよ~!!何してるんだ、うちは~~!!