魔法科の御伽魔法書   作:薔薇大書館の管理人

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 実際に今、攻防戦したらどうなるんだろう!?


NST!! 出動!!(後篇)

 

 

 

 

 

第一トラップフィールドが発動。ちゃにゃんが仕掛けた『幻影投影』で大浴場までの道を分断し、RDCの精霊魔法『濃霧』で深い霧を発生させ、視界を奪う。

 

 「ミナっち、仕掛けてきたな。みんな、はぐれてはだめだ。道順は体に刻みついている。感覚を忘れず、進むぞ!!」

 

 

 マサユキの合図で、NSTは一塊になる。しかし、RDCにかかれば、それは無駄な足掻きといえる。RDCは即座に『木霊迷路』を発動。NSTの三半規管を狂わせ、方向感覚を見失わせる。

 

 しかし、ここで惑わされないのが、NST。

 

 未然にこういう攻撃をしてくると経験上、予測していたため、最新の魔法アイテムを装備していた。

 NSTは振動波や周波等に対抗できる周波阻害魔法の起動式が格納されたヘッドフォンをしていた。これにより、どんな振動系魔法で錯覚や感覚麻痺を仕掛けようとも、その周波に応じて自動的に阻害する振動魔法を発動させ、中和するように変数化されている。事実上、ただヘッドフォンを身に着けるだけで、相手の錯乱を防げるという訳だ。だから、RDCの『木霊迷路』が効かず、ただいま、視界が悪い状態の中をヘムタイが突き進んでいる。ちなみに彼らのメガネは録画機能付きのカメラを搭載した普通のアイテムである。

 

 

 「う~ん、Rっち、木霊は解いていいよ。ちゃにゃっちはそのまま続けて。」

 

 少し考えながらRDCに魔法解除を指示するミナホ。魔法が阻害されている事をRDCも分かっていたからすぐに聞き入れて、解除する。しかし、この第一トラップフィールドが成功する、しないではNST撃破に大きく関わってくる。RDCはミナホの考えを聞くべく、問いかける。

 

 「このままじゃ突破されるけど、どうする? ミナっち。」

 

 

 「こうなったら、あれを使うか。 何とも皮肉な事だけど。」

 

 取り出したのは、半透明の緑色の液体が入った小瓶だった。

 

 「それは? 」

 

 ちゃにゃんが小瓶の中を覗き込みながら、尋ねる。

 

 「あまり匂いを嗅がない方がいいよ。 即効性だしね。 もしかして、これを?」

 

 小瓶の中身を知るRDCがちゃにゃんに軽く注意をする。そして、苦笑気味に確認する。ミナホは頷き、小瓶の蓋を開けると、液体を単一の加熱系魔法で蒸発させ、気体化させると、『スモークボール』で5つに分け、密集させる。後は、『エレメンタルサイト』でNSTの位置を確認して、5つのスモークボールをそれぞれの顔面に移動させ、魔法を解除する。すると、NSTの動きに変化が表れ始める。さっきまで一塊で進んでいたはずが、徐々に乱れ始め、あらぬ方向へ行ったり来たりし出した。

 

 小瓶の中身の正体は、マサユキのマリ一族秘伝の錯覚・感覚麻痺効果の香水だった。これは、マサユキがミナホが開発した性別変換の魔法薬と交換で渡したものだった。何かに使えればと取っておいた香水を使ったが、自分の香水で墓穴を掘る事になったマサユキ。ミナホが言ったとおり、本当に皮肉な事だ。

 

 こうして、ちゃにゃんの『幻影投影』と合わさって、隊の分断に成功する。いや、半分成功した。ホームズ・御神・ホムラのチームとマサユキとくろちゃんのチームに分かれる。本来は、くろちゃんをホームズ達の行動させるつもりだったが、同じにおい同士で引き付けあうのか、全く離れずにこのような分断になってしまった。これには、防衛チームも苦笑するしかなく、心の中ではやはり似た者同士は怖いなとまったく同じ考えをしていた。

 

 それでも防衛チームは次の第2トラップへと移行する。

 

 

 

★★★

 

 

 ホームズサイド

 

 

 「どうやら、マサヤン達とははぐれたみたいだな。」

 

 「ヘッドフォンしていたのに。やるね!ミナっち達!!」

 

 「引き返す?」

 

 のんきに会話するホームズ達は濃霧と香水の効果が切れたため、再度浴場に向かう事にする。しかしそれを許す訳がない防衛チームが仕掛ける。いきなりホームズ達の頭上に熱湯が降り注ぐ。

 

 「「「熱っ!!!」」」

 

 そこに尽かさず、ドンッ!! ドドドドドドドッ~~~!!!

 

 あまりの轟音に服を脱ぎながら、音がする方を見ると、廊下一杯の大きさの鉄球が猛スピードで迫ってくるのだ。これにはムンクの叫びという絵画のようにヒィ~~!!となって、全力全身でホームズ達は逃げ出した。

 

 「こ、これはっ! 今までなかったよ~!!」

 

 「おいら、もうやばす!!」

 

 「そんな事より、どうするよ~!!」

 

 全力で逃げるが、一向に止まる気配がない。更に一本通路が続いていて、横廊下が見当たらない。ちゃにゃんが『光学迷彩』で横廊下を屈折投影で隠しているからだ。一か八かでホムラと御神が横壁に突進するが、運はミナホ達に傾いたようで、見事に壁に激突した。頭が錯乱状態の二人に「こんな時に~!!」と突っ込むホームズ。このままでは、鉄球がやってくるのも時間の問題。

 

 ホームズはCADを操作する。そして、とうとう間近まで迫ってきた鉄球に勝負を挑む。

 

 「反撃してやるぞ! 『殴打』だ!」

 

 ホームズは自身の腕を重点的に座標固定し硬化させ、鉄拳攻撃を繰り出した。まさに鉄球VS鉄拳の珍しい構図の対決だ。この決着は、まさかの鉄球を粉砕した鉄拳の勝利で幕を下ろす。

 

 「さづが、ほおにゅづだお!(さすが、ホームズだよ!)」

 

 「はふかぁた~。(たすかった~)」

 

 壁の激突の影響がまだ続いて呂律が回らないホムラと御神。それでもホームズに賞賛を送る。ホームズはふふんと鼻高々になるが、油断したのが運のツキ。ホームズの上にタライがバキィ~ンと言う音を立てながらホームズの頭にグリーンヒットする。その場に倒れるホームズは逆上せていた。そこに、逆方向からの鉄球が三人を襲い、踏み付けられ、完敗する。

 

 「よし、三人は始末した。後は、マサユキとくろちゃんだね。」

 

 三人を壁に貼り付けて、CADを取り上げる防衛チーム。ホームズは肉体的に丈夫なため、すぐに目を覚ます。そして、負けたために今は、口を尖らせて不貞腐れ中。

 

 構っている時間はないため、ホームズは無視して、残りの排除に防衛チームは向かう。その際に、ホームズ達を張り付けにした壁は『光学迷彩』で隠す。

 

 

 

★★★

 

 

 

 マサユキサイド

 

 

 「…どうやら、みんなはやられたようだ! くそっ! 安らかに眠れ。民の事は忘れない。」

 

 (勝手に殺すな!)

 

 

 「どうしましょ!隊長! ここで引くのはNSTの名誉に傷がつきます!」

 

 (いやいや、そんな大層な名誉じゃないだろ!)

 

 

 二人は大浴場の入り口まで来ていた。ここまで来たら、後には引けない。いや、元より引く気はないっ!!鼻血を垂らしながら、慎重に入ろうとする二人の録画機能付きカメラ搭載メガネが消え去る。ミナホが『雲散霧消』を使ったからだ。もう、防衛チームは付き合うのが面倒になってきたため、害虫駆除に本格的に乗り出した。

 

 「カメラがっ!! これでは、録画が!!」

 

 「大丈夫だ。我が愛しい相棒よ。そのための秘密兵器を用意しておいた。」

 

 (いつのまに相棒までの仲になったんだよ!)

 

 

 そこで取り出したのが、出動前にマサユキが確認していたものだった。

 

 「ジャジャ~ン! ”ドローン”だ!!」

 

 「どろーん?」

 

 最近帝都で販売された機械で上空を飛びまわりながらも機体に搭載したカメラでリモコントローラーについている画面に映し出される映像が見れるのだ。本当の仕様はドローンに特化型CADと同じ機能が付いているため、起動式を自分で調整できる。そして、奇襲作戦などに役立てる代物のはずだ。それをマサユキは覗きのために大幅に改造した。

 

 「それでは、発進!」

 

 胸に期待を乗せて、ドローンを見送るマサユキとくろちゃん。しかし、それはものの数秒で儚くも散っていった。

 

 RDCの『雷導子』で攻撃され、完膚なきまでに壊された。マサユキ達は間一髪の所で障壁魔法を展開し、雷撃は食い止めたが、目の前の夢が潰えた。しばらく、沈黙が続いたが、それでもあきらめないのが、ヘムタイ魂。床を這い蹲りながら浴場に向かおうとするマサユキとくろちゃんは粘々した物体に捕らわれてしまう。

 

 「なんだ?これは…。」

 

 「それですか~? トリモチですよ~?」

 

 マサユキの独り言に答えたのは、微笑を浮かべてマサユキ達を見下ろすちゃにゃんだった。その近くには、RDCとミナホまでいた。三人とももう目が笑っていない…。

 

 ものすごいオーラを放つ三人にマサユキとくろちゃんは背筋が凍るような悪寒を感じる。

 

 「見事に引っかかってくれました。 ありがとうございます。」

 

 「いや、あの、その…。引っかかりたくて引っかかったわけじゃ…。」

 

 「まぁ、せっかく捕獲したことだし…、害虫駆除を始めますか…。」

 

 「では、そうしましょうか…。 二人ともいいよね?」

 

 

 

 

 「「いやややああああぁぁぁぁぁ~~~~~~~~!!!!!」」

 

 

 

 ギルド中に広がる悲鳴を合図にこの攻防戦は終了した。

 

 

 

 

 攻防戦が終わり、ぼろぼろになった状態でホールに戻ったくろちゃんはよぼよぼとしていた。そんなくろちゃんにホールにいたみんなは激励の言葉を述べる。

 

 

 「がハハハハ! くろちゃんもよくやったけどな~。 あの一瞬に障壁魔法を出せただけでも立派だよ!」

 

 とサガットがくろちゃんの背中を力いっぱい叩きながら、励ます。でも、くろちゃんは背中が痛い事よりもどうして攻防戦の内容を知っていたのかが気になった。

 

 その理由はモニターを見て分かった。モニターには先ほどの攻防戦が見事なカメラ角度で撮られ、流れていた。その映像には肌露出高めの風呂上がりのミナホ達が鮮明に映っていた。しかも、どっちか勝つか、賭け事までしていた。

 

 

 (…みんなもヘムタイじゃないか!?)

 

 

 と突っ込みを入れるくろちゃんだった。

 

 





 魔法と古典的な仕掛けで防衛…。

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