魔法科の御伽魔法書   作:薔薇大書館の管理人

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そう言えば、この予定が入っていたな。忘れそうになっていたけど、達也も内心は待っていただろうし、やりますか!


約束までに。

 

 

 

 

 

 

 

 四月二十九日、日曜日。

 

 

 

 

 朝早くからFLT開発第三課を訪れている達也は、夜通しで研究していた研究員たちと作業し、開発会議を執り行っていた。

 

 

 「それでは今回の開発会議だが、御曹司が提案されたこのCADを開発案を採用しようと思っている。」

 

 

 会議の司会役として牛山が流れを運んでいるが、その牛山がずっと達也の企画をここで発表出来て喜んでいるのはもちろんの事、また学期的な開発に携えて歓喜しているのだ。その興奮が醒めきる事はなく、企画を説明していく中、声量にも動きにも力が入っている。

 

 いつもながらCADを開発する際の牛山のテンションの高さはたまにどう接すればいいか分からない時がある。それは牛山だけでなく、開発第三課の研究員全員に言える事だ。今も、開発会議に参加している全ての研究員が牛山の説明に全神経を集中させ、しきりに上下に首を振って真剣な表情で頷いている。そんな会議の状況を牛山の説明を耳に入れながら誤った伝え方をしていないか確認しつつ、観察していた達也は「相変わらず、研究熱心だな。生気の研究員ではない俺の我が儘なのだから、断ってもいいんだが…。」と自虐的な考えをする。

 しかし、達也はそう思っているが、牛山達はそんな事を考えてはいない。寧ろ達也の提案した開発案だからこそ、気合を入れ、何としても開発させ、世に広めたいと張り切っているのだ。これまで達也のお蔭で冷遇されていた開発第三課のイメージを払拭させ、自分達がやりたかった自主的な研究も権限を得た事で自由にできるようになった。だから、牛山達が達也を見下す事もないし、冷遇する事もない。自分達の一員として、何より自分達のリーダーとして心から認めている。

 

 達也のためなら、牛山達はたとえ本部から依頼された研究があろうと、家族との時間を過ごしていようと、自分の研究をしていようと、達也から新たなCADや魔法開発が持ち込まれれば、それらを放り出して、身体が壊れそうでも己の持つ力を余すことなく発揮する。…そんな思いを開発第三課の全員がそう誓っているのだった。

 

 

 「………という事で、御曹司が今回なされようとしている完全思考操作型CADは、従来のCADをそのまま起用できるだけでなく、自身の思う通りの魔法がより鮮明に発揮できる画期的なものだ!

  これなら、既に完全思考操作型CADを世界初として発売されているローゼンのものより効率がいい!

  御曹司のこの企画を俺達の技術で実現してやろうぜ!お前ら!」

 

 

 「「「「「「「「「「はいっ!!」」」」」」」」」」

 

 

 「いや、そこまで盛り上がる事でもないと思うのですが…。」

 

 

 「何をおっしゃっているんですか、御曹司! 御曹司の天才的頭脳があるからこそ、魔法師のより良い未来に歩めるんです! 」

 

 

 「そうですよ~、あんたのその頭脳を俺らで実現する事が何よりの喜びでさ~。」

 

 

 「いつも本当に助かります。実現する技術があってこそ、世に広められるのですから。それこそ牛山さん達がいてくれてこそです。俺は、ハードになるとまだ素人同然なので。」

 

 

 「素人ってそんな馬鹿な事を言わんでくだせぇ。俺から見ても御曹司の腕は既に高校生レベルではないですよ。」

 

 

 「その高校生レベルでは、社会で通用できるCAD開発をするのは難しいですから。やはりプロの腕には敵いませんよ。」

 

 

 「…ああ~~もうダメましょう! 御曹司に口で勝てる気がしねぇ~。それより、今回の企画について話でもしましょうや。」

 

 

 「実も俺も同じことを考えていました。」

 

 

 牛山と達也が顔を見合わせて、互いに笑みを浮かべると、会議はすぐに研究へと早変わりした。今までも会議の後はすぐに研究に入っていたため、他の研究員もすぐに対応し慌ただしく動き出す。その動きには、持ってましたと言わんばかりの衝動的な手早い動きとわくわくしている笑顔を全員がしていた。

 

 

 こうして、雫が企画した達也の少し遅めのバーズデーパーティーが始まるおよそ二時間前まで牛山達と議論しながら完全思考操作型CADの研究を進めるのであった。

 

 

 (せめて約束までに、開発の方針や指示を明確にしておかないとな…。)

 

 

 




この完全思考操作型CADが関係してくる事でしょう!(ほんの少し?)
牛山のキャラ、崩れていないよね?

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