この二人を纏めないと…!!
未だに感謝され続けながら接待を受けている淑女は、これ以上ボロを出さないように口を閉ざし、後の事は老執事に任せる事にした。
「あ、ですが、問題が…。
条件を呑むのは大変結構ですが、何分今この事務所に在籍しているアイドルは、ここにいる美晴ちゃん……、日暮美晴の一人だけなのです。スタッフも私一人だけですし…。それにまだこの子にはアイドルとしてのレッスンも十分にさせてあげられていない状態でもあります。売り出す以前にその前段階までできていない今、やはり人材が必要です。
とてもすぐに利益をお見せする事は…、できません。」
「ええ…、よく存じております。あなた方と提携を結ぶために申し訳ありませんがあなた方の事を調べさせていただきましたので。」
「い、いえ! 当然の事だと思います。援助してもらうんです。ちゃんと援助するだけの器がどうかを見定めるためにも相手の事を知るのは悪い事ではないです!
…ですが、それならお分かりのように、まずは下積みから始めなければいけないので………」
「それなら心配は必要ないですわ、金星さん?」
老執事と金星が話をしている中で、お気に入りの紅茶を老執事に入れてもらいながらティータイムを優雅に堪能していた淑女が話に割って入った。
飲んでいた紅茶のカップを老執事に渡すと、不敵な笑みを浮かべて金星と目を合わせる。淑女はこの時を待っていたのだ。
金星が人材不足である状況を話す事は読んでいた。
それが話題に上がるのを待ち、ついに着た瞬間、淑女は待ちわびていた台詞を口にしたのだった。
淑女にとってはこれからが本気………、本番だったのだから。
「え?心配は必要ないってどういう事ですか?」
「言葉通りですわ。私共があなた方に目をつけたのは、そこですもの。」
「?おっしゃられている意味が分かりません。鈍くて済みません。」
「いいのよ、金星さんはそれで。
それでお話を戻しますけど、人材不足というのは認識しています。私共はその点で貴方にお願いしたい事がありますの。」
「お願いなんてそんな…! 此方の方こそ良くして頂きますのに! 何でも言ってください!!」
(…………お願いを聞く前からそんなに意義込んで大丈夫なのか?……はぁ~…。)
淑女と金星の会話を少し離れた場所から耳を澄まして聞く人物はため息を溢しつつ、見守る。
「そう?ありがとうございます。では早速お願いしますわ。………入ってきなさい。」
突然独り言を言った淑女に若干の訝しさを感じ、美晴と顔を見合わせた金星。するとそこに事務所のドアを開けて、ワイルドでありながらミステリアスな雰囲気を醸し出す青少年が入ってきた。
その青少年に視線を向けた金星と美晴は、目を見開いて言葉を失い、驚いた。美晴は持っていた盆を落とし、固まる。二人の反応に淑女は嬉しそうに微笑む。
「「ああああああ~~~~~~~~~!!!!!」」
しばらく固まっていた二人は、徐々に意識が回復していき、完全に復活した瞬間、驚きの声と共に青少年を指差す。
そして、興奮気味に二人は青少年に話しかけるのだった。
「き、君はもしかして…!」
「…………り、り、RYU~~様!!?」
二人に尋ねられた青少年は濃いめのサングラスをかけたまま、唇を吊り上げ軽く笑みを浮かべて見せるのであった。
突然現れた今、芸能界で大注目されているアイドルが目の前にいる事実に、再び思考が停止する金星と美晴。
人気の芸能人が目の前に現れたらビックリ仰天だよね。
うちは、幼い頃から芸能人と会う機会が多いんだ。偶然というかなんというか…。でも話した事はないから、一度は話したいよね!普通に話せるか分からないけど!www