魔法科の御伽魔法書   作:薔薇大書館の管理人

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淑女と老執事が出てきたけど、誰なんでしょうね?
…って言わなくても、分かっている人がいれば、凄いや!


天然すぎる契約受諾

 

 

 

 

 

 席につき、美晴に紅茶とチョコケーキを出され、淑女は紅茶を一口飲んでから、金星に顔を向けた。その際に、ずっとかけていたサングラスを華麗に外し、老執事に差し出す。

 

 

 「こ、この度は我が事務所との提携を考えていただき誠にありがとうございます。………」

 

 

 頭を深く下げ、もう少しで額がテーブルに勢いよくぶつかりそうになりながらも感謝の言葉を述べる。

 

 

 「いえ、私共もあなた方のような方がいる芸能事務所を探していたんですの。直接会ってみて、あなた方に選んで正解だったと思ってます。」

 

 

 「では…!」

 

 

 「ええ、契約を結ばせて頂きます。」

 

 

 期待の眼差しを向ける金星へ、何を考えているか悟らせない笑顔で頷く淑女。淑女の言葉を待っていたかのように後ろに控えていた老執事が紙の書類を差し出す。

 

 

 「私共があなた方の芸能事務所と提携を結ぶための条件を纏めたものです。読んでみてくださいな。」

 

 

 淑女に勧められるがまま、金星が書類に目を通す。この時金星は社長らしくしっかりした振る舞いで真剣な表情で内容を読んでいく。そして、一瞬書類を巡る手が止まり、顔を上げて、問いかける。

 

 

 「あの…、この提携に期限があるのはどういう事でしょうか…?」

 

 

 「ああ…、それですね。確かにあなたと提携を結ぶことはよろしいですが、私共の資金援助は見込みのない者にまで手を差し伸ばすような甘い事はしないのですよ。

  提携を契約した期限の間に援助するだけの価値があったという事を証明してもらうためにも、期限は設けさせていただきました。」

 

 

 「…それでその期限というのは?」

 

 

 「八月末までです。それまでにあなた方の事務所が元の大手芸能事務所へと再建し、業績も今の80%以上の成果を出して証明してみてくださいな?」

 

 

 「そ、そんな……」

 

 

 あまりにも無謀とも言える条件に金星は絶句する。隣に控えていた美晴もだ。

 

 二人の顔を見て、どう出てくるか楽しみだという笑みを浮かべ、微笑む淑女を老執事は「奥様もお人が悪い。」と心の中で褒めるのだった。(褒めるんか~~い!!)

 

 この話を冷静に聞けば理解できるとは思うが、この話の落とし穴は再建に成功しようかしまいか期限が来れば、提携は打ち切りになるという事だ。もし成功しても期限更新というものはない。勝負は今日から八月末までの約四カ月の間。今の状況では難しい。

 

 淑女は金星がどんな結果を下すか紅茶を飲みながら待っている。

 

 

 金星は驚きのまま口を開いたまま、しばらく固まっている。しかし、ようやく復活した瞬間、なんと号泣し出した。

 

 

 「…………え?」

 

 

 「……………」

 

 

 これには淑女も老執事も驚く。

 

 

 突然目の前の男が泣き出すのだ。何が起きたと驚くのは当然だと言える。だがこれで驚くのはまだ早かった。

 

 

 「うう…、なんていい人なんだ…!!

  私達の事務所の再建のために援助していただけるだけでなく、私達が怠けないようにあらかじめ期限を定めておくことで、私達に発破掛けてくれるとは…!!

  素晴らしいです!! 正しく私達の救世主様っ!!」

 

 

 「はいっ! 社長の言うとおりです! 救世主様のお蔭でアイドルとして頑張っていく自信がつきました!ありがとうございます。」

 

 

 「私達は救世主様のもたらされた機会によってやり直す事が出来ます! もちろんこの契約の通りに励ませていただきます!!どうかよろしくお願いします、救世主様っ!」

 

 

 「救世主様!」

 

 

 「………………」

 

 

 予想外にもほどがあると言える展開とさっきから二人が口にする『救世主様』という何とも言えない呼び方をされている淑女は、言葉を失い、危うくポカンと口が開きそうになるのを淑女スマイルで耐える。

 

 まさかの度を越した二人の天然さに呆れ感が拭えないでいる淑女は、視線で老執事に命令し、自分の代わりを務めるように放った。それを同じ思いだという事を一旦横に置き、主の代わりに承諾の返事を行った。

 

 

 「…畏まりました。でもそのように致しますゆえ、お二人とも頭を上げてください。」

 

 

 「「はいっ!!」」

 

 

 老執事に言われるまでずっと土下座していた金星と美晴は、「懐が深くて、才色兼備の女神さまだ…!」と思いながら目を輝かせるのだった。

 

 

 




どこまで天然なんだよっ!!筋金入りだな、おい!

でも、前向きにとらえるのはいいよね~!…この状況でこれはありなのか謎だが…。

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