魔法科の御伽魔法書   作:薔薇大書館の管理人

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やっぱりこの子がいないと、始まらんわ!!


さすが達也様!(亜夜子編)

 

 

 

 

 

 四月二十六日、木曜日。

 

 

 四校への登校途中の個型電車の中で、情報端末を手に持って、ニュースに目を見張る美少年と美少女の双子がいた。

 

 

 「達也兄さん、凄いや!! たった数日だけでこれほどの実験を成し遂げるなんて、僕にはできないよ! 」

 

 

 「ふふふ、そうね。達也さんだからこそこの実験を提案できたのであり、誰にもできなかった難問を攻略する糸口を見出されたのだから、評価されて当然よ。」

 

 

 美少年で、双子の弟である黒羽文弥は再従兄の達也のお手柄に心が躍り、憧れを抱きながら記事を読むのに対し、双子の姉である黒羽亜夜子は達也の事は褒めているが何やら含みがある言い方をしながら、記事を読んでいた。

 それを敏感に感じ取った文弥は向かい合わせで座っている亜夜子へ視線を向け、話しかける。

 

 

 「どうしたんだよ、姉さん。達也兄さんが世界的観点から見ても立派な成果を出したんだよ?達也兄さんのこの実験が本格的に稼働すれば、魔法で核熱融合炉を動かすことができるし、今までのエネルギー抽出とは比べ物にならないくらいの利益を得ることができる。僕達が生きていくための未来に大きな役割になるのは遠い未来じゃないかもしれないんだよ? 姉さんは嬉しくないの?」

 

 

 熱烈に熱く語ってしまった文弥だったが、それだけ達也を尊敬しているのはもちろん、この魔法師にとって歴史的快挙ともいえる恒星炉実験の成功を喜んでいることに他ならないからだ。

 それなのに、亜夜子は浮かない顔をしている。それに文弥から見て、なんだか拗ねているようにも見えた。

 

 

 「文弥…、そんな事はこの記事を見れば、一目瞭然。達也さんがご披露された実験がいかに優れているか、魔法師だけでなく人が生きていく上で重要な資源になりうるという事は十分に理解しているわよ。………だから納得できないのだけど。」

 

 

 頬を膨らませて、完全に拗ねながら、恨めしそうに応報端末に表示されている記事をみる亜夜子を見て、文弥はなぜこのような態度をとっているのか、理解できた。

 

 亜夜子は達也の実験自体に腹を立てていたのではない。それはもとより文弥は最初から理解していた。自分達が達也を疎ましく思うどころか、尊敬しているのは当たり前の事だから。

 

 問題だったのは、実験を取り上げた方だ。

 

 

 「達也さんの実験がどれだけ素晴らしいものか、理解も示そうともしないで、事実を捻じ曲げようとするなんて、マスコミは一体どんな頭をしているのかしら!?

  いくら”国民の目と耳である”記者でも、やっていい事とやってはいけない事があるでしょう? 本当に自分の考えが世論のものだと思い込んでいい加減な原稿しか書かない人に達也さんの栄光の実験を穢されたくないわ!!

 

  見て、文弥!この記事…、『魔法科高校生、水爆実験か!?』ですって!!

 

  この記事書いた記者………、どうやら痛い目に遭わなければ分からないようね…。」

 

 

 もはやマスコミへの偏見というレベルを超え、明らかに摩擦計画を立てそうな勢いを醸し出し、薄く笑みを浮かべる様子にさすがの文弥も黙っているわけにもいかず…

 

 

 「姉さん、落ち着いて! 

  姉さんのマスコミ嫌いは嫌ってほど知っているからさ! 僕も姉さんの言いたいことはわかるよ?でも、ここは達也兄さんのためにも穏便に…。」

 

 

 「達也さんのため?」

 

 

 「うん…、もし今、その記者に手をかけたら、真っ先に疑われるのは、魔法師…、もっと言うなら、その元となった達也兄さんに捜査が向けられるかもしれない。」

 

 

 「それはダメ!絶対に!! 達也さんは何もしてないですわ!」

 

 

 「だから落ち着いて、姉さん。……だから、抹殺しようなんて真似はしないでよね?」

 

 

 「わかったわ。抹殺だけはしないであげる。」

 

 

 「よかった。あ、駅に着いたみたいだよ。降りよう、姉さん。」

 

 

 「ちょっと待って、文弥。端末にメールが入ったの。」

 

 

 ちょうどいいタイミングで学校の最寄駅に到着したので、個型電車を降りようとした文弥に待ったをかけた亜夜子。

 亜夜子が達也への恋心から不躾な態度で取材をしたり、でたらめな記事を書いたりしたマスコミに怒りを覚え、危うく暴走するところを食い止めることができたが、情報端末に届いた一通のメールで亜夜子の表情が変わった。

 

 

 「……なるほど。そういう事だったのね…。」

 

 

 暗号化されたメールを読み、一人で納得する亜夜子の何かを企んだ微笑みが気になり、文弥は問いかけた。

 

 

 「姉さん、そのメールにはなんて?もしかして任務?」

 

 

 「そうね~…、任務と言えば任務ね。でも私達に出された任務じゃないわ。」

 

 

 「?…じゃ、誰の?」

 

 

 「それはその時が来てからのお楽しみ♥」

 

 

 ウィンクを文弥に向け、今度は上機嫌になり、満面の笑みで個型電車を降りた亜夜子。その後を急いで降りる文弥。

 亜夜子の意味深な言葉と笑みに問い詰めたい気持ちはあったが、既に人目がある中を歩いているため、詳しくは家に帰ってからにしようと諦めの領地でそう思う文弥だった。

 

 一方、亜夜子は一通のメールのお蔭ですっかりと気分がリラックスでき、嬉しさと楽しみで胸がいっぱいになるのだった。

 

 

 (ふふふ!! まさかそういう事だったなんて、思いもしませんでしたわ!

  でもこれは好機!! 今回は深雪お姉さまに達也様を取られてしまいましたが、次は私が達也様の御役に立つ番ですわよ!!誰にも譲りませんわ!!

  それに達也様の意外な素面を知るのは、私の専売特許でもありますし。

 

  俄然燃えてきましたわ~~!!

 

  私が必要となるその時まで、私も腕を磨いておきますので、達也様!!お待ちくださいませ!!)

 

 

 …と達也萌えを胸に秘めた亜夜子は周囲に笑顔を無意識に振りまき、通り過ぎる異性に注目され、そのまま声を掛けるために囲まれ、遅刻ギリギリになるまで捕まってしまうという現象を招いてしまうのだった……。

 

 

 

 (もう~~~~~~!!!! どうせなら達也様に囲まれて、甘い言葉をささやいてほしかったですわ~~~~~!!!)

 

 

 

 

 




残り今年も後一日になりましたね!! みんな!!最後の日を楽しんでください!!

そして私は………年末を仕事で忙しく過ごす事にします………。

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