窓から身を乗り出している生徒達が溢れ返っていたが、窓から見るだけでは満足できない生徒が校庭に下りてきた。
その中にはひときわ目立つ赤い髪の美少女が今時珍しい眼鏡をかけた巨乳のこれまた美少女と実験に注目していた。
それをカメラに撮っている中年男性記者は超アングルにして、女子高生を密かに撮りまくる。他の記者も同じように写真を撮ったりする。これでは完全にわいせつ行為になり、警察に連行されるところだが、神田の後ろに控えているためか、『何をしても神田が守ってくれる。』と思い込んでいた。
記者達を冷たい視線で非難するスミス先生は、こちらもこっそりと盗撮する記者達の姿を記録する。
そんな取材じゃなくて、完全に公然わいせつ罪を犯している記者達の厭らしい視線を盗撮されている本人であるエリカは、当然気づいていた。
「……まったくこれだからマスコミって嫌いなのよ。神田議員の腰巾着のくせに…。」
「エリカちゃん…、今は達也さんの実験だけに集中しよう? 後で話ししようよ。」
美月は今にも斬りかからんばかりのエリカの鋭い視線で、慌てる。でも、すぐに毒気が抜けたような顔でエリカが振り向く。
美月の言葉の裏を読み取ったからだ。
後で話ししようって事は、視察が終わった後思い切り愚痴を溢そう!と言っていると理解したからだ。美月も厭らしい視線を受けて、不快感を持っていた。その証拠に蔑む視線をちらりと流している。
「そうね、放課後にでもケーキを食べながら発散しないと!」
「うん、美味しいデザートを食べたら気分も変わるからいいと思う。」
「……なぁ、さっきから気になっていたんだけどよ~?
美月はあそこに行かなくていいのか? 」
エリカと美月の会話に差し込んできたのは、さっきからずっとエリカの隣で見物しに来たレオだった。指差す先には、実験装置の設置や最終確認している達也や生徒会役員、後は有志の協力者が真剣な眼差しで準備を整えていく。美月もこの実験に参加していたはずなのに、あそこにいないのはどうしてだろうと直球に聞いてきた。
「何であんたがここにいるのよ。私は美月と一緒に見学するんですけど~?」
「俺がここにいたらいけねぇ~のかよ! 達也の応援に来たんだ!」
「まぁ、二人とも落ち着いてください。 西城君、私は実験装置を作り上げたりしただけだから、手伝える事はないんです。だから、せめて一番の特等席で実験の成功を願いながら、見学したくてここにいるんですよ。」
「そういう事か~。なら達也のために応援するか!応援団結成だぜ!」
「何を意義込んでいるのか…。大体応援団って、達也君を応援する人なんて私たち以外にはいないんじゃない?」
「そんな事はねぇ~だろ?だって、ここに集まっているみんなは、達也に好意的な奴らばかりだからな。」
レオが後ろへ視線を投げるので、レオの身体を通して、後ろを見てみると、次々と校舎からこちらに向かってくる生徒達の群れを目撃するエリカと美月。
「結構な人数だね~…。」
「どこかで見た事がある人たちばかりですね。」
エリカと美月がそれぞれ感想を述べる。そこにスバルとエイミーもやってきた。
他にも去年の一年E組のメンバーと去年の九校戦・新人戦女子代表メンバーは全員が顔をそろえていた。更に二年E組(魔工科)は、実験に参加していない生徒も含めて全員がこの場に立ち会っていた。生徒達だけでなく、教師の姿も少なくない。
その全員が共通しているのは、目を輝かせて達也を見ている事だ。
「達也~~!!頑張れよ~~!! 必ず成功しようぜ~~!!」
レオがそう切り出すと、校庭へ下りてきた生徒達が口々に激励を送る。終いには、体育系の掛け声までするものだから、最初はわざわざ見に来てくれた友人達に感謝していた達也は、すっかり見物人たちのテンションについていけずにいた。
しかし、達也にとっては幸いにちょうど五十里から実験開始してもいいというゴーサインが来た事で、早速始める事にした。
「実験を開始します。」
達也が放った一言で、熱く応援していたレオ達の声が一気に収まり、校庭だけでなく校舎内でも静まりかえった。
照れ隠しでさっさとはじまりました。実験が。
……睡魔に襲われながら何とかやりきったぜ・・・。(もしかしたら改稿しないといけないかもだけど)
いよいよアイドル~~!!達也がアイドル~~!!