爆笑になるかは皆さん次第。
楽しんでくれたらいいナ。
くろちゃん達がROSEに到着し、歓迎会が催された翌日の朝、帝都中に一大事件が新聞の一面にピックアップされて広まった。そして、モニターでも今日の一大メインニュースとして取り上げられていた。それは…、
『”ROSE~薔薇の妖精~”、またまた事件を珍解決!
”ブルーム(花弁)”の悪事を暴く笑劇!!』
という見出しが大きくはっきりと書かれていた。
この記事を見た者はまたやらかしたなと呆れ返る者や、その記事内容と写真に爆笑したりする者などで朝からにぎわっていた。…当の本人たちは飲み過ぎ、食べ過ぎ、はしゃぎ過ぎで、今も寝ているが。
ギルドに関する記事や依頼後の詳細記事は帝都の『ギルド依頼管理局』で管理される。そこで、公開許可が下りたものが記事や話のタネに流れることができるのだ。
さて、どんな内容の記事かというと…、
依頼したのは、全帝国魔法商売連合会(略して、帝魔商連)。
依頼内容は、魔法アイテムの奪還、森の身辺調査。
魔法アイテムの地方商売のため、出張に出掛けた者がなかなか連絡を残さない。調べてみると、皆、”迷宮の森”という場所で消息を絶っていた。”迷宮の森”の噂を聞き、当初は森に迷って出られずに彷徨っているのだろうと気にもせず、追加の捜索兼商人達の出張を再度行ったが、結果は同じ。このままでは、商売に差し支えてしまうとのことで、ギルドに依頼をした。そしてその依頼を受けたのが、”ROSE~薔薇の妖精~”だったわけである。
依頼を受け、二人のROSE魔法師が独自の手法で調査した結果、そこでは、森に入り込む商人や旅人をターゲットに魔法アイテムや物品を強奪する集団がいたという。さらに詳細に調査した結果、その集団は手首に八枚花弁の紋章が入ったバンドをしていたことから、ギルド”ブルーム(花弁)”のルーキークラスの集団であることが判明した。
巧みな方法で、ターゲットを森で迷わせ、アイテムを強奪する彼ら。
ROSE魔法師達は依頼内容に記載されていたように、『魔法アイテムの奪還』に踏み切る。そして、”ブルーム”のルーキー達の一斉捕縛を成功させる。強奪方法の証拠も事前に用意していたため、依頼終了後に事件を通報したROSE魔法師の連絡により、事件現場へ急行した帝国警察魔法隊(ケイマ)は無事、ルーキーたちの検挙を成し遂げた。
ここで、終われば、ROSEは大手柄を上げたといえる。しかし、ここで終わらないのが、ROSEである。
実行犯であるルーキー達の顔には、誰だか判別できないくらいにたくさんの落書きがされており、髪形まで変わっていた。長髪は綺麗に整えて切られている。髪が短いものにはリボンやカチューシャでデコレーションしていた。一番ひどかったのは、リーダーのション。(だからシュンだっ!!)
髪を小さな女の子みたいにツインテールにされた上、顔には厚化粧の上から、「俺はション!!」(だ・か・ら、俺はシュンだって~!!)
と書かれていた。
この仕業は思いつきでいたずらしたくろちゃんである。
だが、まだここで終わりではない。
さらに、彼らは身ぐるみをベリベリと剥がされて、(服の破れた残骸がそこらじゅうに落ちていたから)パンツ一丁にされ、体中に落書きされていた。落書きの中には、落書きされたものの心の淵が書かれたような文章もあり、目を覚ました実行犯の一人がそれを読まれると、顔を赤らめ、縛られている状態でケンケンっとしながら、逃亡を図ろうとした。無論、ケイマが逃亡を許すわけないが。
ケイマは到着後、現状を目のあたりにし、沈黙したという。若干は爆笑する者もいたらしい。
ルーキー達の捕縛は様々で、完全に縛られている者もいれば、四つん這いにされてる者、なぜか組体操のピラミッドをしている者、そして極めつけは、集団の中で、一番太った者を両手足を縛って豚の丸焼き体勢にさせられた上、その周りを囲んで踊る者達がおり、その後ろでは、なぜか拝む者達までいて、一番目立っていた。
これらはすべてマサユキの仕業である。くろちゃんのいたずらを観察していたマサユキの悪戯心に火が付き、さらに追加した結果がこれである。縛っていない者には、マリ一族秘伝の錯乱効果をもたらす香水を使った。
そういう事で、”ブルーム”の悪事がこういった形で露呈してしまい、ギルドにはケイマが家宅捜索し、更なる証拠を上げ、ギルドを徹底的に取り締まった。
…という内容の記事が新聞やモニターに掲載されていた。
その記事を昼過ぎにようやく見たROSEメンバーは拡声器並みの大爆笑がギルド内に鳴り響いた。
「ぶはっ!! ハハハハハ、何これ!!? ハハハハ!! さすが、まさやん!
やることがいつも凄すぎる!!」
「これは、今までの中で、最高傑作じゃない!!?」
「俺ならここまではしない。」
「ここまでは…って、少しは悪戯するんだ?」
「お腹痛いって!! ちょっと…、誰か、病院に連れて行ってくれ…。」
そんな受けのいい人が集まったROSE。この後、ケイマがやってきて、マサユキが連行される事はギルドメンバーにとっては常識だという事は横に置いといて…。
「あの~、ルーキー達の顔を弄ったのは、私なんですけど?」
記事を見たくろちゃんは責任を全てROSEとマサユキに被せたみたいで、気が重くなり、自白をギルドのみんなにしたが、一蹴してしまう。
「ああ、それ? 大丈夫。 こういうのはこのROSEの専売特許みたいなものだし。」
「そうそう、それに連れていかれた奴らも、口は割らないと思うよ?」
「仮にもギルドに入っていた奴らが、初心者魔法師にコテンパンにやられたなんて、プライドの高い魔法師が集まったギルド”ブルーム”が自らの恥を晒すような真似はしないよ。」
口々にくろちゃんを励まし、連帯責任だと言ってくれるROSEメンバーに心を打たれ、ついにあのセリフを口にするくろちゃん。
「私!! このROSEに入って、みんなと仲間になりたいです!!」
続いて、ちゃにゃんも、
「私も!! こんなに楽しいギルド、入れずにはいられません!!」
その言葉を聞いたROSEメンバーは待ってましたと言わんばかりに盛大に二人を迎えた。そして、くろちゃんとちゃにゃんにマサユキが手を伸ばす。
「これから、ROSEの一員として、共に楽しんでいこう!!」
「「はい!!」」
二人はマサユキの手と握手を交わす。
こうして、二人は正式にギルド”ROSE~薔薇の妖精~”に入会した。
<補足>
「よし、二人とも正式に入ったことだし。あれ、言っちゃうか。」
マサユキは笑顔を張り付けて、にやにや笑う。何か不自然だと思うくろちゃんとちゃにゃんだったが、すぐに驚愕の表情へと変わる。
「じゃ、みんな! たった今から、ギルドリーダーはくろちゃんに決まり!!空枠だった後衛隊長はちゃにゃんに決まり!! 私は相談役となるんで、後はよろしく!!」
ウィンクと舌を出して、決めポーズをするマサユキ。あまりの決定で、目をぱちくりするくろちゃんとちゃにゃん。
「これは二人に会った時から人選は決めてたんだよね~。 前から、リーダー交代しようって思ってたし。」
「まさやんの後継者か…。いいんじゃない! うちは賛成。 なんか…、おんなじ匂いがするし。」
と、ミナホが賛成の意を示すと次々に賛成の声が上がる。
この状況に流されまいと、くろちゃんは反論する。
「えっ! 何でリーダー!? もっと経験者が…。ほら、ホームズさんとか、RDCさんとか、御神さんとか!!」
「いや、私たちはリーダーはしたくないや。補佐とかの方が気楽だし。性に合ってるし。」
名を上げられた他のメンバーも云々と頷き、これまた一蹴される。
もはや反論はできないとがっくり肩を落とすくろちゃんとちゃにゃん。
そんな二人を早速訓練するため、御神はギルドの訓練場へと連れてく。
そして、マサユキはケイマに引きずられながら連行される。
その両者をほかのメンバーが手を振って見送る。
いまさらになって、ROSEの自由奔放さを身に染みたくろちゃんとちゃにゃんだった。
(でもまぁ、後悔はない、かな。)
なんと、豪快な連中なんだ!!