廿楽とスミスの後をついて来て意地の悪すぎる質問をしてきた取り巻き記者達と神田は校庭に出て、思わず息をのんだ。
校庭に出てみて初めて気づいたが、校舎から大勢の一高生達が窓から身を乗り出して校庭で最終確認をしている様子を心待ちし、見守っていた。
更に窓から生徒達の姿が溢れてくるのを見て、神田達はこれから始まる実験とやらの内容に少し興味を持った。神田は何があっても自分のイメージ戦略を作り上げるためにはこの実験での生徒達の反応を観察し、利用すればいいと思いながら、実験が始まるまで、生徒達を盗み見ていた。
記者達も神田が動き出しても後押しできるように校舎と実験準備にカメラを回す。
そんな中、校舎内から興奮しているような、それでいてときめいているような騒ぎ声が聞こえてきた。
「いよいよ始まるな。まさか実験する内容が三大難問だとはな~。」
「各国の魔法研究者達も苦難しているというのに、それに挑戦しようとするなんて…。」
「ああ…、やっぱりあいつは天才かもしれないな。……司波達也。」
「ふん!あいつを天才などと言うな! 実験と言っても実際に核融合炉を動かす訳じゃないんだ! エネルギーも取れない段階で成功ともいえない!」
窓から校庭で実験装置を準備する達也たちを見下ろしながら感心していた生徒達の隣で森崎が憤慨を露わにして、反論する。しかし、森崎のように腹を立てているのは少数と言える。一科生の多くは、達也が実験するという事で妬みを抱えるよりも、誰も成功していない核融合炉の実験を行う…、世界でも初かもしれない魔法が世界で活躍する可能性を見いだせる貴重なこの実験を目の前で見学する事が出来て興奮しているのだった。だから、森崎の言葉を聞き、訝しく思うのは当然である。
「森崎、今はそんな事を言う時ではないぞ? 」
「そうよ、それに核融合炉をいきなり動かすなんて真似をするのは、愚か者のする事よ。その前段階でやるのだから、森崎君の言い分は認められない。」
森崎の言葉を耳にした生徒達はジトっとした目で異議を唱える。そんな視線を集中的に受けた森崎は居心地が悪くなり、開き直る事にした。
「ふ、ふん!俺は何があってもあいつを認めないからな! ただ実験内容があれだから、仕方なく拝んでやるっ!」
「はいはい…。」
素直じゃないと思いつつ、再び窓の外へと目を向ける一科生達だった。
一方で、目を輝かせて友人と手を繋いで祈っている生徒達もいる。その多くは初々しい雰囲気も兼ね備えた一年生たち。
「いよいよ司波先輩の実験が始まるわね…!」
「はぁ~…、まさか一高に来てまだ数週間しか経っていないのに司波先輩の素晴らしい実験をこの目で拝む事が出来るなんて…。」
「うん、まだ信じられない…。」
「僕なんか見てよ! 鳥肌が止まらないんだ!」
「さすが司波先輩…。お近づきになりたいな~。」
「いいよな~。ケントは司波達也先輩と一緒にあそこにいるしよ。…いったいどこで知り合ったんだ?」
「あ、私知ってる! 入学式の時、迷っていたら偶然司波先輩に会って、助けてもらったって言ってたわよ!その時にGPSをインストールしてもらったって嬉しそうに話しかけてきて、大事そうに抱きしめてたわ。」
「そうそう。そしておまけにその端末をお父さんに頼み込んでもらったらしくて、宝物にしたって幸せオーラ全開で話してた。犬の尻尾が見えた気もしたわね…。」
「俺は、その端末をわざわざ神棚まで作って、御供えして毎朝登校する前に拝んでいるって聞いたぜ?」
「……もうどこを突っ込んだらいいか分からないな、そこまでくると。」
「うん、でもその純粋すぎる好意がよかったか分からないけど、実験の手伝いをしたいって申し出しして許可してくれたとも言っていたから、あれくらいじゃないといけないかもね。」
「それはハードル高いって~~~!!」
……そんな声が一年生たちから聞こえてくる。
今年一高に入学してきた一年生の中には、九校戦で披露された達也のスーパーテクニックやCAD調整、思いつかない作戦に心惹かれ、ケントと同じ理由で入学してきた生徒も少ないのだ。更にモノリス・コードに出場した選手としての達也も鑑賞し、その強さの片鱗だけでも近くで見たい、教わりたいと思って入学した生徒もいた。
達也は自分がそこまで一年生達に注目されていたとは知らない。
ただ、窓から注がれてくる好意的な視線の数々を浴びて若干心落ち着かない気分になったのはここだけの話。
モブ崎をからかうメンツは皆、実験準備にいっているしな~。本名は語りたくなかったが仕方がない。それよりも可愛いケントの同級生とどんな会話をしてたのか、ほんの少し知れたね!
そして萌えたね!!
明日は、クリスマスイブ!なので短編にすると思います!