魔法科の御伽魔法書   作:薔薇大書館の管理人

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実験内容はさら~~と砂のように流していき、周りの反応を見てみましょう!!


興奮する教師達

 

 

 

 

 

 

 

 

 五時限目が始まり、スミスに先導されて準備中の放射線実験室へ向かう道すがら、今回のパフォーマンスに対し、手が回ってこなかった事を考えていた神田は、取り巻きのジャーナリストを不安にさせたまま目的地に到着した。そこで、自分達を見る嫌な眼差しを感じるが、目の前にいる廿楽に意識が向いていたので、気にしない事にした。学校内の取材と聞き、眉を吊り上げ、強い視線を浴びせる。

 

 スミスと廿楽が話しながら、無事に事が運んだことに頷く。

 

 出張中だった百山に、神田たちが乗り込んできた事を伝えたのは、スミスであった。

 

 校長室で八百坂が神田一行を相手にしている隙に、校長に連絡したのだ。百山なら達也の実験に神田を差し向けるであろうと事前に廿楽から聞いていたし、今日の昼休みにこの実験は神田に見せるための一芝居だとも直前になって聞かされていたため、絶好のタイミングで動いた。

 

 こうして、上手く神田たちを誘導した廿楽とスミスは、準備完了の合図を受け、球形水槽が校庭へと運ばれていくのを見送り、余裕を見せる表情で後を続く。

 

 

 スミスの後についてきた記者たちの厭らしい笑みと共に意地の悪すぎる質問に、廿楽は不親切に接し、内心は魔法技術を馬鹿にする態度を見せる記者たちに辟易し、怒りが募っていた。

 

 

 (まったく、この実験の価値を知りたいと思うどころか、兵器を作っているという前提でしか見ていない君達と口を利かないといけないと思うと、情けなくなるよ。

  ここにいる魔法を学ぶ者も、その魔法を教える者も目を見開いて注目するほどの事だというのに…。)

 

 

 世界的価値の高い実験を穢されたくないと思った廿楽は、完全に記者たちを見下しているスミスと同じ気分だと理解した上で、今朝の職員会議の時の事を思い出した。

 

 

 

 始業が始まる前に教師が職員会議を行うが、その際に今回の実験を今日の放課後に執り行う旨を廿楽が話した時……

 

 

 「何!! あの加重系魔法の技術的三大難問の一つに挑戦するのですか!!?」

 

 

 「ここ数日、廿楽先生が生徒会に訪れたり、何やら動いているとは思っていましたがそういう事だったんですね。」

 

 

 「やはり、この実験は司波達也君の提案ですか?」

 

 

 「彼以外、このような実験をしようなど考える者は、生徒も教師もいないだろう!!?」

 

 

 「…確かに。またやってくれたな。」

 

 

 「良いじゃないですか! その実験をこんな間近で拝見できるなんて早々ない事ですよ!!」

 

 

 「…ですね、我々も魔法に関わる者としてこの実験を見過ごす事は出来ない。」

 

 

 「ええ、それに私達だけでないです! 生徒達にもこの実験は将来的にも見させてあげるべきです!!」

 

 

 「そうだ!廿楽先生! 私の担当する生徒達にも見せてやりたいんだ!良いだろうか!!?」

 

 

 「私もだ! 放課後に行えば、部活等で生徒達が見学する時間が無くなる。なんとか授業中にできないだろうか?」

 

 

 一斉に廿楽に問い詰める教師達の興奮した態度を見て、八百坂が今日の時間割を調べていく。

 

 

 「…………では、五時限目はどうでしょう? 五時限目でしたら、どのクラスも実習はありませんし、問題ないです。」

 

 

 「教頭。ですが……」

 

 

 「もちろん、とても深い実験ですから、生徒達が座学にしても身に入らないと思いますので、この時間は全クラス自習という事にしましょう。それならば、生徒達も気軽に実験を見る事も出来ますし、全生徒達が注目するでしょう。校庭での実験許可も取ってありますから、大勢の所為との見学は十分ではありませんか?」

 

 

 「はい!問題ないと思います! ありがとうございます、教頭。」

 

 

 「という訳で、時間は少し前倒しになってしまいましたが、廿楽先生、よろしくお願いします。」

 

 

 「分かりました、司波君たちにはそう伝えておきます。」

 

 

 「大丈夫ですよ、廿楽先生。今、実験をするメンバーに学内メールで実験が前倒しになる事を伝えておきましたから。」

 

 

 「ああ、ありがとう! スミス先生。」

 

 

 「では、他に意見もなければ、次の報告に移ります。」

 

 

 八百坂の言葉で、満足し、綻んだ顔をした教師達は、その後の職員会議も機嫌良さ気に進んでいき、会議が終わり、担当するクラスの授業へと向かう際、皆が急ぎ足で職員室を離れていったのであった。

 

 

 その同僚達の後姿に廿楽とスミスは顔を見合わせ、声を出して笑った。

 

 

 

 

 

 

 

 朝の事を思い出した廿楽はあの時の純粋に喜ぶ教師達の姿を神田達に見せてやりたかったと心の中で呟いたのだった。

 

 

 




世紀の発見のように凄いものには、大人も子供も関係なく夢中になるもの!

本当に見せつけたらよかったのにね!

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