魔法科の御伽魔法書   作:薔薇大書館の管理人

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さてさて、蛇に睨まれたカエルにならないように頑張れ~…。神田~。(投げやり)


百山VS神田

 

 

 

 

 

 

 

 

 「校長!?会議はよろしいのですか?」

 

 

 ホテルの通信可能の部屋を借りた百山は強制的に受信状態へと切り替えるギミックを使って、校長室のディスプレイを起動させる。そこに登場したのは、鳩に豆鉄砲といった顔をして頭を下げる八百坂の姿が一番に目が入った。そして、その傍らには見覚えのある神田議員がおり、その後ろにはカメラやメモを持ったジャーナリストたちが付き従っていた。

 

 百山は、八百坂が驚きを見せる中、安堵した表情も見えた。一所懸命に追い返そうとしていたのだろう。額には物凄い汗を掻いている。

 校長不在の中で教頭として対応してくれた八百坂に、百山は労いの言葉を掛けるのではなく…、

 

 

 『少し時間を作ってもらった』

 

 

 と先程の八百坂の疑問に一言で答えるだけだった。しかし、これが選手交代の合図となって、百山はディスプレイの先にいる神田議員へジロリと目を向けた。

 

 

 『それで、神田先生。本日はどのような御用件ですかな?』

 

 

 表情からは細かな判別ができないほど老いている印象がある百山だが、それでも窪んだ眼窩の奥から放たれる刺すような眼光が非礼な訪問に対する怒りを誤解しようもなく表していた。

 

 

 「ああ、いや、御予定も確認せず御邪魔した事は申し訳なく思っております。」

 

 

 八百坂の時と違って神田の返答は腰が引けたものだった。それに対し、八百坂は自分の時との出方と違う神田に一瞬だけ不満の視線を向けた。それを画面の端から見ていた百山は、「やはり外面だけを見繕ったただの小童」と己の中の神田の印象を下げた。

 

 

 『それがお分かりなら日を改めていただけませんか』

 

 

 『出直せ』

 

 

 「本来ならば校長先生の仰る通りにすべきなのでしょうが、私にも少々思う所がありまして」

 

 

 『ほう?』

 

 

 百山が厳しい視線を向けたまま続きを促す。

 神田はカメラ越しにも拘らず気圧されていたが、舌だけはしたたかに回り続け、魔法科高校と軍のの癒着をうかがわせるような噂がある、と告げ、魔法科高校に神田自身の描くイメージ通りの喧伝をしたいという下心な会話をする。

 

 

 『困りますな。魔法の実技授業は繊細なものだ。いきなり押し掛けられては生徒が動揺します。』

 

 

 「ご迷惑はかけません。」

 

 

 不快感を丸出しにして神田の言い分を聞いていた百山は、高圧的な態度になってきた神田が開き直ってきている事も見通す。そして欲しい言葉を相手が言った事で、頃合いと見た百山は、少し考える素振りを見せた。もちろん、わざとだ。

 

 

 (ふむ、なら彼の実験を神田に見せつけるとしよう。そうなれば、神田の言うイメージ戦略どころではなくなるだろう。それに彼の実験は全世界に広めるべきものだからな。)

 

 

 電話する前に「確か今日は司波達也君の恒星炉実験の日だったな」と思い出し、これを利用できないかと考えていた百山は、達也の実験をエサにする事を始めから考慮していた。そして、引く気がない、いや、引きたくない神田へ急な申し出に考える素振りを見せ、受け入れたのだった。

 

 

 『………そこまで仰るなら見学を許可しましょう。』

 

 

 驚きと訝しさの入り混じった表情を浮かべる八百坂は、議員を追い返ずに見学を認めた百山に理由を尋ねようとして、寸手で口を閉ざす。ここで理由なんて聞けるはずがないと気づいたからだ。

 

 百山は有無言わせぬ口調で言葉を続ける。

 

 

 『ただし見学は五時限目だけとさせていただく。』

 

 

 「そっ……いえ、それで結構です。」

 

 

 『教頭、五時限目に予定されている実習はどのクラスとどのクラスだ?』

 

 

 「五時限目に実習が予定されているクラスはありません。」

 

 

 訝しさMAXの状態が八百坂の精神を覆い尽くすが、校長に聞かれた事に応える。それは既に反射神経とも言える素早い対応だった。

 

 

 「ただ正規のカリキュラムではありませんが、二年E組の生徒から申請のあった課外実験が校庭で行われる予定になっています。」

 

 

 『お聞きの通りだ。神田先生、やはり日を改められた方がよろしいのではないか?』

 

 

 「そんな! それではせめて、四時限目の途中からでも」

 

 

 日を改めては校長不在というメリットが消えて、もう押し掛け視察もできなくなってしまう。食い下がった神田だったが、この後百山から「急な視察をされれば、生徒の魔法師としての未来も奪われる結果に繋げてしまうからやめろ…。」という言い分を気化されれば返す言葉はない。神田は魔法については素人と同然なのだから。

 

 

 「………分かりました。それではその課外実験だけでも見学させてもらえませんか。」

 

 

 『そうですか。教頭、スミス先生を呼んで、神田先生を案内させなさい。』

 

 

 悔しげに言う神田に対して特に勝ち誇った様子も見せず、八百坂に命じると、百山は通信を切った。

 

 

 

 

 

 

 通信を切った百山は、上手く誘導できた事に薄い笑みを浮かべるのではなく、通信が切れ、真っ黒になった画面を直視しながら、物思いに耽る。

 

 

 (もしかしたら神田が視察に来ることが分かっていたのではないのか?司波達也…君。

 

  神田が訪れるのを狙ったかのようなタイミング…。そして彼らの目的を逆手にとっての恒星炉実験…。

  日付も事前に伝えていたとも言う。本来ならこの実験はもう少し準備に取り組んだら更なる成果が得られるかもしれないものだ。あの短い期限で準備していたのもこの為ではないか?)

 

 

 ここにきて、ようやく達也の実験が突如として申請されてきたその背景が見えた気がした百山は、一層目を鋭くする。

 

 

 (司波達也…。彼はいったい何者なのだ? 神田のスケジュールまで把握するとは、かなりの力がいる…。

  彼には大きな何かの力がバックにいるのかもしれないな。)

 

 

 達也に対して底知れない裏があるのを感じた百山は、一旦この考えを棚に上げる事にし、次に違う所へ電話する。

 

 

 

 ……民権党の上層部に。

 

 

 




やはり百山には敵わず。神田撃沈した~~!!


ところで、クリスマスイブは短編をやろうかなと思っています!!どんな内容にしようかな?

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