魔法科の御伽魔法書   作:薔薇大書館の管理人

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またまた独自解釈な面が入ります!!




一高からのSOS

 

 

 

 

 

 

 

 

 神田議員が一高に押し掛けてきた時刻と同じ時間、百山は京都出張で、魔法協会本部にて会議を行っていた。

 その会議には、全国で九つしかない魔法科高校で校長を務める九人が円卓上の机を囲むようにして座り、議論していた。

 その内容とは、今年の論文コンペについてだ。

 

 

 「今年の論文コンペだが、今年の開催場所はこの京都となる。それにちなんでいくつか改善点が必要だとあたしは思う。去年のようなテロが起きるとはまだ断定できないが、それも考慮して準備は行っておくべきだ。」

 

 

 「それは、私も同感です。

  いくら高校生の研究発表を行う行事と言えど、有数な研究者やマスコミ、財政界の方々まで観賞に来る九校戦と同じく注目を受けている。日本の未来を担う魔法師の卵たちが作り上げた研究成果だけでなく、命も守らなければならない。私も前田校長の意見に賛成する。」

 

 

 「私も異論はないです。」

 

 

 「去年の事を考えれば、ここで問題が浮上しないこと自体、子供達を預かる私共にとって、大きな失態になるでしょう。」

 

 

 「ふん、前田殿に言われなくても、俺もそう言おうとしていた所だ。」

 

 

 「では、具体的にどうしましょうか?」

 

 

 「我々としてももちろん、警備を強化するに越したことはないが、すぐに警察や国防軍と連携できるように情報網を構築しておくべきだろう。いざって時に状況を把握できなければ対処もままならんからな。」

 

 

 「それはそれは、良いご意見だと思うのですが、それだと魔法科高校は国防軍と秘密裏な関係にあると勘ぐりされるのではないでしょうかね?

  ここ最近、反魔法師運動が増えてきてますから。」

 

 

 「生徒達の安全を守るためにはやむを得ないだろう。それにそんな考えを持つ事自体がくだらん! 魔法が世界を救う可能性だって秘めている。それを可能に近づけて魅せてくれるのは、他でもない我々の生徒達だ!その生徒達が去年のようにまたひどい目に遭う恐れがあるかもしれないというのに、『軍との癒着』という有り得ない言い分に恐れ、我々が手を尽くさないのは可笑しいとは思わないか?

  なら、ここは警察や国防軍と協力して対策を練った方がいい。」

 

 

 ………といった感じで、第三高校校長・前田千鶴による問題提起で、論文コンペに対する話し合いが繰り広げられていた。

 

 まだ今年度が始まったばかりで、今年の九校戦も終わっていない段階から去年の論文コンペの話になったのは、今回の会議でこれが本題となるからだった。

 あと数か月も経てば、九校戦が始まる。そうなると去年の論文コンペのように国外や国内でのテロ組織やスパイが狙ってくるかもしれない。それを事前に食い止めるために、全国の中心とも言えるこの京都で集まって、話し合っていたのだ。

 

 テロ対策を各校の校長が議論し、そのための経費や準備期間、連携を繋げるための交渉……等々が語られていく中、第一高校校長・百山東も教育者として校長たちの中心となって、話に加わっていた。

 

 そんな会議中に扉が開き、貸し会議室を使わせてもらっているホテルの従業員が入ってきて、一礼する。

 

 一斉に校長たちの視線が従業員に向けられ、さっきまで話し合っていた声は静まり、無言の威圧が降り注ぐ。しかし、その従業員はこの状況に慣れているのか、顔色を一切変えず百山の元へと歩み寄る。臆する事もない従業員は、こういった状況下での伝言を告げるために訓練されているのだ。だから、このホテルを選んだわけだが。

 

 そうして、百山のすぐ隣に着くと、腰をかがめて耳打ちをする。

 

 従業員の耳打ちを聞き、百山の眉が吊り上るのを見た各校の校長たち。

 

 

 従業員が伝言を伝え終わると、一気に口を堅く結び不愉快を隠さずにいる百山を見て、前田が問いかける。

 

 

 「いかがした、百山殿。」

 

 

 「今しがた、我が一高の教員からの伝言で、大変面倒な状況である事を聞かされましてな。」

 

 

 「面倒? 何が面倒というのだ?」

 

 

 「それがどうやら一高に国会議員が事前の許可もなしに視察に訪れてきたようだ。」

 

 

 「「「「「「「!!」」」」」」」

 

 

 「………本当に面倒な事だな。もしや百山殿がいないのを知っての上の行動か?」

 

 

 「恐らくそうでしょうな。私が居ないと告げているにも拘らず、未だに視察させよといっているらしい。更に取り巻きも一緒だ。」

 

 

 百山の言った『取り巻き』からジャーナリストが議員と一緒にやってきた事を理解した各校の校長たち。そしてそれは、先程の議論でも言っていたように反魔法師主義の議員が乗り込んできたとも理解した。

 

 

 「会議中に申し訳ないが、少し席を外しても構わないか?」

 

 

 「もちろんだ、この機にあたし共も少し休憩をするとしよう。百山殿の用が終わり次第、会議は再開する…。それで決定で良いだろうか?」

 

 

 前田が他の校長たちが次々に頷きを見せるのを確認してから、百山に顔を向け、力強く頷く。

 

 

 「助かる。では、席を外させていただく。」

 

 

 会議の席を立った百山は従業員に案内され、会議室を後にし、電話回線が使える部屋へと向かったのだった。

 

 

 




百山が校長室へと電話をする事になったいきさつですね。どんな会議しているんだろうって思ったら、こうなってしまいました!てへっ!www

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