魔法科の御伽魔法書   作:薔薇大書館の管理人

245 / 453
そして本番がやってきた~~!!
「神田め! お前の隙にはさせないぞ!!百山様のためにこの八百坂、捨て身の覚悟で挑みまする!!」

 ……なんだか百山と八百坂って時代劇で言う所の殿と家来って関係の方がしっくりくるな~…。


迷惑な押し掛け

 

 

 

 

 

 

 

 

 四月二十五日、水曜日。

 

 

 四時限目、午後最初の授業の最中に、いきなり校長へ面会を求めてきたのは、神田議員と彼の秘書、議員の取り巻きジャーナリスト及びボディガードの面々である。

 ほとんどの一高生にとって、予期せぬ客人であり、恐らくすべての第一高校関係者にとって招かれざる客だ。

 

 印象自体でもよく思われていないというのに、物々しい黒塗りの乗用車で押し掛けてきた十人の男女。その中心には神田議員だ。はっきり言って、迷惑だ。

 何の予約もなしにやってきた彼らを追い出してやりたいくらいだ。

 

 しかし、普通なら丁重にお断りしてお引き取り願う所だが、国会議員のバッジをつけていれば(わざわざ胸に付けたバッジを指差し、取り巻き達に「国民によって選ばれた議員を門前払いする気か?」と横から嫌味を言って神田議員を援護する様にも辟易するが。)こんな無理も押し通る。

 マナーを完全に無視して面会を強要してくる神田議員を、第一高校教頭の八百坂は苦い顔で迎えた。

 

 

 「神田先生、既に申し上げました通り、本日、校長の百山は京都出張で留守にしております。校長の居ります時に改めてお越しいただけないでしょうか?」

 

 

 「ほう。この神田に、子供の使いよろしく出直せと言われるのか。」

 

 

 「子供の使いなど滅相もありません。」

 

 

 「では教頭先生でも結構です。御校の授業を見学させていただきたいのだが。」

 

 

 「私の一存では承諾しかねます。それはやはり。校長に直接仰っていただかなければ。」

 

 

 相変わらず引くつもりがない神田が嫌味を言ってくるのを、耐え忍ぶ八百坂。内心は「早く帰ってしまえ!」と思っているが、相手の方が世間の立場から見れば自分より影響力があるのは、言うまでもない。………同じ年代というのに。

 まぁ、それは置いておいても、神田議員が連れてきた取り巻きの方が厄介。少しでも不適切な言動をすれば、それをネタに一高を叩いてくるのは疑いようがない。たとえ相手がマナーを守っていなくても、それを公にしなければ被害者にもなれる。八百坂は百山に留守を任されている身として、この窮地を脱するべく、闘う姿勢を崩さない。

 

 

 校長が不在という理由でマスコミの取材を阻止したい八百坂の粘りある言動に神田も焦りを覚える。せっかく百山がいない事を知った上で押し掛けてきたのに、ここで追い返されたら、対策を掛けられ視察がなくなってしまう。せめぎ合いは仕事柄で神田優勢のまま続くが、時間だけが流れていく。それを狙っている八百坂の意図も分かっている。「勝負に勝って試合に負ける」展開になるのは、見えている神田は、自分が結局敗北を与えられるのは、政治家として認められない。

 遂に押し切ろうとしたまさにその時、カリヨンの音色を模した呼び鈴が校長室に鳴り響いた。

 

 突然鳴り響いた音色に神田率いる取り巻き達が訝しく思い、校長室を見渡す。神田はこれが電話の呼び鈴だと理解していたが、この校長室の主である校長がいないのだ。出ても教頭では用件を捌ききれないと踏んで、黙認する。

 ただし、八百坂はこの呼び鈴を聞いて、ギョッと首根っこを掴まれたような顔になり、さっきとは違って動揺を少し露わにするのであった。

 

 八百坂がなぜそんなに驚き、動揺しているのか。

 

 神田がその理由を知るのは、遅くはなかった。

 

 

 唐突な鐘の音と同時に、有名な印象派の風景画を映し出していた壁掛けディスプレイがブラックアウトした。画面はすぐさま、クリアなリアルタイム映像に切り替わる。

 

 

 そこに映りこんだ人物を見て、八百坂は一礼してから、疑問を呈する。

 

 

 「校長!? 会議はよろしいのですか?」

 

 

 神田の取り巻きジャーナリストは、突然現れた百山に驚く。そして神田の後ろへと身を隠し、陰から覗き見る。

 神田は背中に嫌な汗が流れるのを感じながら、意外な百山の登場に唾を呑み込んで対峙するのだった。

 

 

 




この状況を別の世界観で表現するならば、突然現れたラスボスと出くわしてしまった場の悪いドンキホーテ…みたいな?
…あれ?百山がラスボスになると、神田が勇者になるのか?
それはダメだ!!逆の立場にしないと!!

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。