では、本題へ~~!!
四月二十四日、火曜日。
達也たちが最終リハーサルを終え、深雪と水波との誕生日パーティーで祝ってもらい、深雪と二人だけのお祝いもした。そして、深雪からの誕生日プレゼントで渡された月と星と太陽のモチーフが施された精緻な彫金のやや大ぶりな円形ロケットペンダントについて、達也が一時間ほど悩み続けていた時間と同じ頃…。
共に「新秩序」を目指す同盟者、小和村真紀との密談を終えた七宝琢磨が帰宅し、父親に呼び出しを喰らっていた。
そして書斎に入るなり前振りから反射的に苛立ちを募らせ、反抗する琢磨に琢磨の父親であり、七宝家当主、七宝拓巳が徒労感を所々で滲みだす。
自棄に七草に妄執を持つ息子に、何度も諭している台詞で応対する。琢磨も反撃に出るが、頭のどこかでは拓巳がいう事も正論だと分かるので、言い合いでは拓巳の方に風向きが向く。
口では言い負かす事が出来ず、悔しがる息子にこれ以上言っても納得しないという事を改めて思い、溜息を吐いた拓巳はこの過去何十回も繰り返された琢磨の「糾弾」と拓巳の「説得」を、今日はこれで終え、本題に入る。
「琢磨、明日は学校を休め。」
「親父? いきなり何を言い出すんだ?」
「明日、野党の神田議員が第一高校へ視察に訪れる。」
「野党の神田って、人権主義者で反魔法主義者の神田か?」
「そうだ。取り巻きのマスコミを連れてな。」
「何のために」
琢磨としても神田の言動を考えれば、何をするつもりなのかは分かる。あくまで確認以上の意味を持たなかった。
「魔法を強制されている少年たちの人権を守るパフォーマンスがしたいのだろう。」
「人権!?」
「お前の言いたい事も分かるが、相手は国会議員だ。問題を起こすのはまずい。」
父親の言葉に、琢磨は先程と別の意味でムッとした顔になった。
自分が議員相手に喧嘩を売り、魔法師としての印象を悪く持たれる事態になると考えている父親に、琢磨は腹が立ったのだ。
そして琢磨の想像は当たっていた。
「いくら気に食わない相手だからといって、後先考えずに喧嘩を売ったりはしない。俺はそこまでガキじゃない。」
だから、自分を信用していない拓巳に言い返す。
「相手の方から喧嘩を売ってきても、か?」
しかし、次の言葉で自分の意思がぐらつく。こっちから売らずにしてやっても、向こうが調子に乗って喧嘩売ってきたとして、それで自分の理性を保てるかと言われれば、自身が持てない。拓巳もそこに焦点を持っていた。
「………っ、当たり前だ。そう易々と挑発に乗るものか。」
「ならば良い。そこまで言い切ったのだ。自分の言葉に責任を持てよ。」
「分かっている! 話はそれだけか。」
念を押す言葉にいちいち反発する様子を見ていると、琢磨が本当に「挑発に乗らない」かどうか巧みでなくても疑わしくなってくるのは当たり前だ。
息子の頑固でキレやすい所を見て、またため息を吐きたくなるのを堪え、次の台詞を口にする。タイミングを計って。
「琢磨、この件は七草殿が対処する。くれぐれも余計な手出しをするなよ。」
「七草が!?」
案の定、激しい反発を示す琢磨に、やはり自分の対処は正しかったと再確認する。
「余計な事はするな。自分の言葉に責任を持て。」
既に現地を取られた後であるため、琢磨は歯軋りして、唾を呑み込む。
「七宝家はこの一件に介入しない。良いな、琢磨。これは決定だ。」
今更前言撤回できるはずもなく、
「………分かったよ!」
琢磨にはほかに応えようがなかった。
書斎を足早に出ていき、自室に戻った琢磨は、枕を掴み上げ、思い切り壁に投げて、怒りをぶつけるのだった。
……反抗期かな?色々な親子の関係あるけどね。