魔法科の御伽魔法書   作:薔薇大書館の管理人

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今度はこの子で!!


ざわつく心 Side香澄

 

 

 

 

 

 

 

 (……何でボクがアイツの後ろを歩かないといけないんだろう?)

 

 

 最終リハーサルも終わり、生徒会室へと移動する達也の後ろをくっ付く形で歩いている事に、香澄は心の中で自問していた。

 

 正確に言えば、達也の後ろには深雪とほのかが、深雪の後ろには泉美と水波が、そして泉美の後ろに香澄が、連鎖になって歩いている。だから、『達也の後ろを歩いている』ではなく、『双子の妹である泉美について歩いている』と言った方がしっくりくるはずなのだ。しかし、香澄は特に生徒会室に向かう理由も呼び出しを受けたわけでもないのに付いていっているのは自分でも分からないのに、まるで達也の取り巻きの一人でもあるみたいなこの歩き方が気に食わなかった。

 

 

 (何で、ボクがあんな男の取り巻きみたいな真似をしないといけないの!それに、あいつの実験になぜかボクも参加する事になってるし!!まったく、泉美もボクの意見も聞いてほしかったよ!…でも、無理かな~。

  泉美はあの司波会長にゾッコンだし。会長が実験に参加するから名乗り出たんだろうな~。)

 

 

 不意に泉美が目を輝かせて、深雪を崇め奉って感銘を受けている様子が想像できる。エキサイトしてしまっている泉美を押さえるのは困難だし、最近は引いてしまう時もある。それを思うと、もう文句も出てこなかった。

 

 きっかけはどうであれ、確かに二人で魔法を行使した方が成功率が上がるのは身に沁みてわかっている事だし、泉美一人でやらせるようなことはしない。

 それに達也が持ちかけた実験という事で、協力するのに最初は渋ったが、達也の功績は入学式でも泉美に教えられて知っていたし、実際に実験の準備をするために今回の実験のアプローチを説明された時は、驚愕すると共にやってみたいとも思った。

 

 

 (よし! ボクだって一度受けた事を途中で投げ出すのは嫌だし、最後までやるか!)

 

 

 嫌々ながらも始めた実験も本番が明日を控えて実感が沸いてきた。泉美とならできると今なら自信持って言える。

 

 

 達也と歩いている事に自問し、ムスッとしていた事はすっかりどうでもよくなった香澄は、そのまま生徒会室へと付いていくのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 そして、生徒会室について、入室した時。

 

 

 (あれ?北山先輩?何でここにいるんだろう?風紀委員会本部はこの下だけど?)

 

 

 同じ風紀委員の先輩でもある雫の姿を見て、疑問に思ったのもつかの間。雫とほのかが何やら話をしていて、ほのかがやけにそわそわし出す。

 その反応に恋する乙女感を感じ取った香澄は、雫の事よりほのかの方に意識を向けた。

 

 

 「あの、達也さん!」

 

 

 「今日、達也さんの御誕生日ですよね!」

 

 

 「つまらないものですが一所懸命選びました!どうか受け取ってください!」

 

 

 ほのかが眼を強く瞑って、両手を伸ばしてプレゼントを差し出した。

 

 

 何があるとは思っていたが、まさかほのかが達也に恋しているとは思わなかった香澄は思わず無意識に口走る。

 

 

 「光井先輩と司波先輩ってそういう関係だったの?」

 

 

 驚きが感じられる声音でいった香澄の声は間違いなく達也の耳には届いたが、緊張のあまり、ほのかは聞こえていない。

 

 まさかの展開に香澄はもやっとする。

 

 目が丸くなるほど驚いたが、それよりもほのかと達也の関係を知って心がざわつく。

 

 香澄もなぜ自分がこんなにもムカムカするのかは分からない。でも、目の前の二人の光景に何とも言えない感情を感じたのは事実だった。

 

 

 それからは雫まで達也の誕生日パーティーを開きたいと申し出をし、受け入れた達也の対応にもなぜかドクッと胸が脈打った。

 

 

 香澄は大好きな姉の真由美が達也と親しげにしており、今までの異性との交流でも見せなかった好意を、達也には見せている事にもしかしたら姉はこの男に気があるのではないかと考えていた。だから、姉を幸せにできる人なのか、釣り合いが取れるのか、そのために数々の男子を泣かせるほどの特訓?を真由美には内緒で行ってきた。

 

 そして今回も達也を姉に相応しいか観察するつもりだったが、ほのかだけでなく雫にも好かれている達也を見て、つい値踏みするような目で達也を見る。

 あまり関わりを持っていないが、その数少ない印象から、達也の事を、およそ女性に好まれるタイプではないと思っていたのだが、その評価が香澄の中でぐらついていた。

 

 そしてその一方、雫に返答する際に見せた優しげな微笑みを見て、ときめいてしまった自分を認められずにもいた。

 

 

 (どうしてボクはアイツにときめいてしまったんだ!

  アイツは気に入らないし、何を考えているか分からないし、お姉ちゃんを陥れようとしているんだ!!

  それなのに、何で……アイツに一瞬でも、『ボクにも笑ってくれないかな?』って思ったんだろう…?)

 

 

 まだ整理できない感情を持て余し、複雑な気持ちを持ったまま、達也たちと一緒に最寄駅まで帰る香澄だった。

 

 

 




お姉ちゃんっ子の香澄と泉美。色んな男子を姑の如く判定していたんだよ。例えば服部とか。
そんな中、一筋縄ではいけなさそうな達也が現れて、少し乙女が目覚めた!!…っというまだ”恋”までには発展していないけど、突っかかってしまうほど気になる男子という香澄の中の位置づけを書いてみたかったのだ!!


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