魔法科の御伽魔法書   作:薔薇大書館の管理人

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いよいよ女王が動き出す~~~!!そしてキャラ崩壊で亀裂が入る!?


配信、スタート!!?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 四月二十三日、月曜日の夜。

 

 

 

 

 

 もう日付が変わるのも近くなった時刻、四葉本家の書斎室で眠げ覚ましにハーブティーを飲んでいる真夜の姿があった。

 

 

 「奥様。本日すべき仕事は終わりました。そろそろお休みになられた方がよろしいと思いますが。」

 

 

 その真夜の隣に控える葉山さんは、口ではそう言いつつも、空になったティーカップに紅茶を注ぐ。

 

 

 「あら、何を言っているの?葉山さん。これからが本番ですわよ?それで、できたのですわよね?」

 

 

 葉山さんの言い分に軽く驚いた表情を作って見せた真夜に、葉山さんは質問に答える。

 

 

 「はい、先程ようやく編集された映像が届きました。内容も奥様の注文なされたこと全てが導入されています。直ちに予定通りの手筈でいけるかと思います。」

 

 

 「……葉山さん、私より先にその映像を見たの?」

 

 

 葉山さんは詳細を告げたが、それが真夜の機嫌を損ねてしまった。

 

 

 「申し訳ありません、奥様。何分、映像編集を頼んだ者が確認して、問題ないかを教えてくれと執拗に繰り返し連絡を取りついてきたので、仕方なく…。」

 

 

 頭を下げて、深々と一礼し、謝る葉山さんに真夜は、毒気を抜かれたようで、小さくため息を吐くと、冷たい視線で見下ろしていた目を手に持っているカップの中の紅茶へと向け、口を開いた。

 

 

 「まぁ、いいわ。それなら仕方ないわね。葉山さんが気に病む必要は無いわ。…と言っても、葉山さんが気に病むなんてことはないかしら?当然、私に報告する前に、対策はしておいたのでしょう?」

 

 

 真夜は、唇を吊り上げて、妖艶な笑みを浮かべて問う。そして、顔をあげて同じく、微笑む葉山さん。

 

 

 「はい、既にその者に対しては、津久葉様に依頼しておきました。今後の事も考え、まだ使い道はあるかと。」

 

 

 「あら、仕事が早いこと。そう、津久葉家の方々に精神干渉で言いなりにさせたのね。…良い判断じゃないかしら?いきなり死んでもらうっていうのも周りに不審に思われるし、処理が面倒ですものね。」

 

 

 「恐れ入ります。あの者は、達也殿と一緒に奥様がスタジオに行かれた際、奥様へ好意を抱いたようで、何とかお近づきになりたいという理由で連絡してきたと言っておりましたからな。」

 

 

 「………本当に迷惑ね。やっぱりそのまま処分してもらってもよかったわ。」

 

 

 「ですが、それだと今回の事が明るみになり、事態が変化する恐れも。」

 

 

 顔も知らない男に好意を持たれても全く嬉しくない真夜は、無表情でグロイことを言ったが、葉山さんがやんわりと極秘任務が遂行できなくなると告げた事で、自分の気持ちはとりあえず保留しておくことにした。

 

 

 「それで、津久葉さんには、ばれていないのかしら?もし知られたら、次期当主候補について、何か言ってくるかもしれないわよ?」

 

 

 津久葉を動かしたと知った真夜は、それが気になった。もし極秘任務について知られてしまえば、これをネタに何か要求を言う隙を与えてしまうからだ。もちろん、津久葉家が次期当主候補に夕歌を指名しているが、実状は当主候補の返還を望んでおり、それをまだ行っていないのは、当主候補に選ばれている今の状況を守る事で、他の分家との権力に差をつけないためである。その事は、真夜も十分理解していた。だから、葉山さんに言った事は、あくまで脅迫するする時の条件の一例を示しただけに過ぎなかった。

 

 真夜の意図も葉山さんには理解できていた。なにしろ、真夜に分家の詳細を伝えているのは、他でもない葉山さん自身なのだから。

 

 

 「その心配はいりません。津久葉様の若い配下の者を数名お借りし、精神干渉させただけですから。その者の言い分を聞く際は、密室で私個人で直接聞きましたので。津久葉様とその配下には、『四葉の事を探ろうとしているジャーナリストとつながりがあるため、情報を得たいので生かしつつ、常に我々の監視下に置けるようにしてもらいたい。これは奥様の命令で御座います。』…と申し上げておきましたので、なにも問題はございません。」

 

 

 「葉山さんって口が達者だったのね。それで、納得してもらえたのかしら?」

 

 

 「はい、相手の尻尾を掴むのに罠を張って待つのはいかがなものかと言われましたが、それだと津久葉様に依頼した意味がなくなりますし、それを言うなら、初めから黒羽様に仕事を回すことになりますからな。それを遠回しに伝えると、快く引き受けてくださいました。やはり、分家同士とはいえ、せっかくの仕事を他家に譲渡されそうになれば阻止し、受けようというものではないでしょうか?」

 

 

 目論見が成功した時の事を思い出したのか、人の悪い笑みを浮かべる葉山さんに真夜もつられて、笑みを浮かべる。

 

 

 「ふふふ、葉山さんも人が悪いわね。そうなる事を分かっての事だったのでしょう?」

 

 

 「いえ、私めはまだまだです、奥様。こういう事には達也様の方が優れておりますゆえ。」

 

 

 「それはそうね。あの子、変なところで、ねじ曲がっているんですもの。どう生活したらあそこまで捻くれるのかしらね。」

 

 

 二人で達也の方が人が悪いと認めながら、小さく笑い声を漏らす。(達也から言えば、「”人が悪い”でえはなく、”悪い人”なので性格が曲っているかどうかは分からない」って言うかもしれないけどね)

 

 

 「ふふふふふ♥ わかりました。葉山さん、ご苦労様。

  では、早くその映像を見せてくださいな♥

  達也さんのMV!!配信する前にちゃんと見ておかないと!!」

 

 

 暗躍するような笑みを浮かべていた真夜が一瞬にして、頬を赤らめ乙女の笑みを見せて、モニター画面の前に向かい、一人掛けのソファになぜか正座になって座り、今か今かと待ちわびる。

 葉山さんは、すっかりとファンモードに入った真夜を孫でも見るように見つめ、先程届いた映像をモニターに再生する。

 

 すると、この前の休日に達也を連れ出して撮った達也のMVが流れ始めた。

 

 

 「キャ~~~~~~~~♥♥♥

  さすが、達也さんだわ! 綺麗に撮れているし、達也さんの見事なダンスも痺れるわ~~~!!

  歌も……うん!!しっかりと感情も入っているし、涙が溢れてくる…。

 

  もう達也さんの歌声しか聞きたくなくなるわ!!

 

  これなら、絶対に売れるし、人気も絶好調!!でも…、達也さんが他の女達の注目も集めると思うと、悲しいわ~~!! だって、達也さんのファン一号は私ですもの!!悔しい!!……だけどファンだからこそ!!達也さんの素晴らしさをもっと知ってほしいのよね~~♥」

 

 

 達也のMVが披露されている間、真夜は身も心も悶えさせ、達也のアイドル姿に萌えていたのであった。

 

 

 そして、MVが終わり、しばらくすると、葉山さんに気落ちした様子で振り向き、またしばらく俯くと、勢いよく顔を上げ、葉山さんに命令する。その顔には一大決心した乙女の潤んだ瞳が滲んでいた。

 

 

 「葉山さん、この映像でいいわ。これを、日付が変わると同時に動画サイトやVOD(ビデオ・オン・デマンド)にこのMVを流してちょうだい。それから、明日からテレビ局に行って、CMや音楽番組にも流してもらえるように交渉してちょうだい!

  絶対に時間は厳守よ!」

 

 

 「畏まりました、奥様。そのようにしてまいります。………本当によろしいのですね?」

 

 

 真夜に一礼し、書斎室を後にしようとした葉山さんだったが、背中に異様なほどのプレッシャーをかけられているのを察した葉山さんは振り返り、そのプレッシャーをかけてくる真夜に対し、最終確認を行う。

 

 

 「……いいわ。やってちょうだい。明日は達也さんの誕生日ですもの。記念日にアイドルデビューを飾るのは素敵な事でしょう?…私も覚悟を決めて、達也さんのファンとしてこの機会を温かく迎えるわ。」

 

 

 自分だけの達也が旅立ってしまう事にまだ捨てきれない想いを持っていた真夜は、締めつけられる胸の痛みを感じながらも素晴らしい事だと自分に言い聞かせて、葉山さんを見送るのであった。

 

 

 そしてその瞬間、物凄い速さでソファでの姿勢を正し、ペンライトを掲げ、いつ作っておいたのか、達也の写真をピックアップしたうちわを振って、先程のMVをループ状態にし、何度も鑑賞する真夜であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ★★★

 

 

 

 

 

 

 

 そうして、真夜の指示通り、時刻が四月二十四日になった瞬間、一斉に達也のMVが動画サイトやVODに配信されていき、達也は人知れず、アイドルデビューを飾ったのだった。

 

 

 

 




達也は知らない間にアイドルデビューしたな~。でも、誕生日の時にデビューというのは、良いではないか!!
まぁ、今は恒星炉実験の事で頭はいっぱいか。…知った時の達也の反応が少しだけ怖いかも。www

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