憎々しげに睨んでくる千秋に半ばあきれつつも無視すれば更に面倒になると思った達也は、振り返って話しかける。
「平河、何の用だ?もうすぐ授業も始まるし、早く終わらせてくれ。」
達也の言い分から、「お前に構う時間はないから、さっさとしろ」と言われたと感じた千秋は更に唇を噛み締め、怒りを募らせる。
「ふん!あんたが何をしようかなんて興味ないけど、そうやって私達を見下すような言動は止めてほしいわね! あんたじゃなくても、世の中では立派な研究成果を発表する人たちだっているんだから!自分が特別だって思いあがらない方が身のためよ!
あんたを倒すのはこの私なんだから!!」
言いたい事を言いきって、千秋は息を切らしている。そんな千秋を見て、クラスメイトは呆然となる。達也に真っ向からライバル宣言した千秋に驚いたという事もある。しかし、あの達也に宣戦布告すること自体が馬鹿らしく感じるのに、敵愾心が強い千秋にクラスメイト達は同情と危険性を感じるのだった。
「……それで?」
しかし、達也はクラスメイト達との考えとは違って、千秋のライバル宣言を受け入れた上で、一言いい返す。意外な一言に千秋は目を大きく瞠って言葉を失う。
「え?」
「それで、具体的に俺をどうしたいんだ?」
達也は千秋から挑戦状を突きつけられても、うるさい虫が飛んできた…程度の感覚しかなく、痛くもかゆくもない。しかし、そこまで言うなら、何か考えて言ってきたのかと思い、その続きを聞いてみたいという興味に駆られて問いかけた。
しかし、実際に千秋は何も考えてなかった。
ただ、悔しかったのだ。
まだ新学年が始まったばかりだが、さっきの課題の解説を聞かされ、そんなのは言い訳にしかならないと思った。自分でも悩んだ課題を躊躇することなく、解説した達也が腹が立った。しかもその解説が驚くほど分かりやすく、もう理解できて頭にしっかり書き込めたほどだった。それが更に悔しさへと繋がり、今朝の美月と十三束達とのやり取りも思い出して、先に進み過ぎている達也を負かしてやりたい、ぎゃふんと言わせたいと思って、感情が爆発し、気付けば宣戦布告していたのであった。
「そ、それは…」
「……まさか何も考えずに喧嘩を売ってきたのか?」
「!!」
図星を突かれ、顔を真っ赤にする千秋を見て、達也は一瞬にして興味が尽きる。千秋に向けていた視線も逸らす。それが千秋には馬鹿にされていると思い、憎らしさが募る。千秋の放つ黒いオーラを感じ取ったのか、美月はオロオロと、達也と千秋を交互に見つめる。
しかし、張りつめられた緊張感から救ってくれたのは、十三束だった。
「平河さん、大丈夫だよ。僕がお願いしてあげるから。」
「「「………え?」」」
「司波君、平河さんも今回の実験に協力させてあげてもいいかな?」
「………なぜ?」
突然の十三束の言葉に耳を疑う達也。
自分の聞き間違いなのか?
いや、十三束の顔は何かを企んでいるような表情ではない。一体どういう事だ?
達也の当然の疑問の答えは、本人から伝えられる。
「え?だって、平河さん、今朝の話を聞いてて、手伝いたくて話しかけたんだよね?だから、そのアシストをしたんだけど…?」
首を傾げて、話す十三束に、達也も、美月も、千秋もどう言葉を返したらいいか分からず、固まるのだった…。
天然十三束のお蔭で場の空気が~~!!いい感じのようで、悪い感じじゃない!!?
原作での「無知の善意から千秋を引き込んだ」ってフレーズがぴったり!!妄想がここまで激しくなってしまったけど!!