魔法科の御伽魔法書   作:薔薇大書館の管理人

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終わりだと見せかけて、まだ続きます!だってまだ残ってますからね~。


有志の協力者集め その伍

 

 

 

 

 

 最初の授業が終わり、一斉に開放感を出して、友人と話し出すクラスメイトの声が聞こえだした中、達也に一番に声を掛けてきたのは、十三束だった。

 

 

 「司波君、どうだった?さっきの小問題、解けた?」

 

 

 「ああ。課題としては悪くない問いだったな。スミス先生が来たからか、内容もレベルアップしている。これなら魔工師を目指す者にとってはプラスになるだろうな…。」

 

 

 達也は先程の授業で課題として出された問いを出して、感想を述べる。しかし、十三束は苦笑する。

 

 

 「…さすが司波君だね。僕は、どの説を当てはめたらいいか分からなくて、悩んだんだよ?でもどの説もいまいちじっくり来なくて、結局上手く説明できなかったよ。これじゃ、まだまだだな…。」

 

 

 「そんな事はないと思うぞ?この問いは様々な説が論じられているが、元を辿れば、本質は一つになるんだ。十三束は様々な説にある違和感を感じたのであれば、この問いにもすぐに理解できるさ。」

 

 

 「…どういう事かな?」

 

 

 それから、達也の先程の課題の解説が行われる。その瞬間、今まで教室中に響いていた話し声が一斉に静まり、クラスメイト達は興味がないという態度を装いながら、達也の解説に耳を澄ませた。十三束だけでなく、達也以外のクラスメイト全員が先程の課題が理解できなかったからだ。…その中には、達也たちの方へ身体を向け、電子ペーパーでメモを取ったり、達也の解説を裏付けるようにして調べたり、熱心に耳を傾ける美月の姿もあった。

 

 

 「…………つまり、この問題の趣旨は、これまで唱えられてきた様々な説に対し、それぞれどのようなアプローチをして、そこから新たなる問題を導き出せるかというものだ。何も”説明しろ”と言われても、答えを求めている訳ではない。そこまでの考えをどう導き出したか…、それが聞きたかった”答え”という訳だ。」

 

 

 「…なるほど。僕たちは答えを導かなければいけないという思考で見ていたから、どの説が正しいという考えで課題に目を通した時点で間違っていたんだね…。」

 

 

 「無理もない。まだこの課題にとっては、まだ研究されているものだからな。一介の高校生に解けるものでもないさ。恐らくだが、スミス先生はこの課題で俺達の実力を計るためにこの課題にしたんだろう。だから気にするな。」

 

 

 「ありがとう。司波君。」

 

 

 「さすが、達也さんです。これほどの難易度の高い課題を授業時間内に考え、解いてしまうなんて…。何でも達也さんは知っているんですね。もしかしたらこの課題の”答え”も理解していたりして。」

 

 

 解説を終え、十三束との会話も終了した。そこに今まで達也の解説に耳を傾けていた美月が尊敬のまなざしで達也を見て、話しかける。

 しかし、美月の言い様に、達也は警戒心が高ぶった。

 美月がなにかを意図して言ったわけではないのは分かっている。純粋に話しただけだ。しかし、そうとは分かっていても、思いもよらない奇襲を受け、達也の内心は一気に冷え切った。

 

 美月が言ったとおり、達也はこの課題の”答え”を既に導き出し、理解しているからだ。しかし、これを発表すれば、長年研究され、多くの仮説を作られてきているが故にもしこの事を知られれば、注目される事は必須。だから、隠しているのだ。……基本コードと同じく。

 

 

 「……………いや、俺もそこまではたどり着いていないよ。この課題を解決するためには、まだ解き明かされていない部分も多く存在する。それがある限り、理解する事は出来ないだろうな。

  これはあくまで、一般的に魔法を研究する人間の考えを読み解くのに、使われるものだから、そこまで求めていないよ。」

 

 

 「そうですか…。達也さんなら、答えを分かっていると思っていました。」

 

 

 「俺は一介の高校生だぞ? 俺にできるのは、仮説に隠された疑問を見つけ出す事だけで精一杯さ。」

 

 

 お手上げといったふうにため息を吐く達也を見て、美月はそんな事はないと思いつつも、達也の言葉から嘘を見つける事も出来ないし、まだ課題に対して理解できていない部分もあるのは事実。美月は頷いて、なぜだか励ます。

 

 

 「大丈夫ですよ、達也さん! 達也さんならきっとこの課題を解決できますから!!」

 

 

 「…有難う。」

 

 

 純粋に励ましてくれる美月に申し訳ないと思いつつも、真実を言う気もない達也は、一言礼を言うだけに留めた。

 

 

 ここで終わっていれば、すっきりしたいい感じの友情秘話として、一つの些細な思い出になったかもしれないが、そう簡単には終わらなかった。

 ……斜め後ろから聞こえてきた憎らしさたっぷりの言葉で、事態が悪化した。

 

 

 

 「何よ、それ…。嫌味なの? まるでそいつがこの課題を全て解決する事が出来るみたいな言い方ね!」

 

 

 達也と美月、十三束はその声が聞こえた斜め後ろ…、憎々しげな視線を投げてくる平川千秋へ振り向く…。

 

 

 そして、達也と千秋の視線がぶつかる。

 

 

 

 

 

 

 




…うわっ、ついに千秋が喧嘩を売ったか? これから一体どうやって千秋が協力するって言うんだよ!!?

更なる火花しか散ってないよ!!

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