魔法科の御伽魔法書   作:薔薇大書館の管理人

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今度はエリカ視点からの乙女モード…突入!!させてやるぞ!!


有志の協力者集め その肆

 

 

 

 

 美月が達也と握手しているのを、羨ましがるエリカ。友人が嬉しそうなのはいいが、先程から傍観一方のエリカはなんとなく面白くない。そして、エリカの目には、美月の手に達也が握って、笑いかけているという錯覚を映し出していたのが更に拗ねる原因になっていた。

 

 …もちろん達也はそんな事はしてはいない。美月に握手させたまま、ブンブンと上下に振り回されているだけだ。手を離す事は容易だが、それだと美月の手が勢いありすぎて脱臼…まではいかなくてもそうなるのではないかと思わせる振り方をしている。なら、美月の身に降りかかりそうな危険を回避するには、大人しく振り回されている方がいいだけだ。実験で重力制御魔法を担当するより、美月が腕を勢いよく上げ過ぎないように制御した方が何倍もいいと瞬時に計算した結果だと言えば、これくらいは造作もない。

 

 だけどエリカには、二人がいい感じに見えてくる。

 

 徐々に拗ねてきたエリカは、つい本音を漏らす。

 

 

 「いいな~…、あたしも達也君と手を繋ぎたい…。」

 

 

 (だって、さっきは達也君にあっさりと避けられてしまったし、全然あたしの顔を見ないし、もっと構ってくれてもいいのに…! あたしだって、窓から身を乗り出すなんてことはしないわよ…!せっかく達也君をあたしに振り向かせたかったのに…!)

 

 

 達也に自分の胸を当てようとしていた事が実は故意だったと心の内で暴露したエリカだったが、もちろん達也がそれを知る訳はなく、ただ不完全燃焼のヤキモチを焼くだけで始業のチャイムが鳴るのを待つだけになるはずだった。

 しかし、訓練で物音や人の声を聞き分けられる達也は、エリカが漏らした本音を聞き取った事で、事態はそうならずに済んだ。

 

 

 「ん?エリカも握手するのか?美月、エリカもしたいらしいから、もういいか?」

 

 

 「え?は、はい。ありがとうございました、達也さん。エリカちゃん、次良いよ。」

 

 

 「はひ? あ、あたしは別にそんなのは…」

 

 

 「遠慮するな。エリカに助けてもらったのに、まだちゃんとお礼できていなかったからな。…今日の放課後にでも、ケーキを奢ってやるからとりあえず今はこれで勘弁してくれないか?」

 

 

 そう言って、達也が手を差し伸べてくる。突然の展開に目を逸らし、若干頬が赤く染まる。

 

 

 (何!?この状況!! 達也君、あたしの声が聞こえてたって事!!?そんな~~!!

  でもなんだろう…。今は真正面から見られていて嬉しいと同時に恥ずかしい…!!あたしが何で拗ねていたかなんて達也君は気にもしないだろうし、分からないと思うけど。

  だけど、一瞬でもあたしに意識が向いてくれたんだから!! もうヤキモチなんて吹き飛んでいったかも♥

  …まぁ、今回の「達也君にさりげなく胸を当てて、動揺させよう作戦!」は失敗しちゃったけど、これを教訓に次は必ず達也君を驚かせて、あたしに意識を振り向かせてあげるんだから!!待ってなさい!達也君っ!!)

 

 

 吹っ切れたエリカは、達也に向き直った時には、挑戦的な笑みをしていた。それに達也は突っ込む事はせず、エリカは乗り出していた身体を元に戻し、達也と握手するために腕を伸ばす…。

 

 

 「ふぅ~、仕方ないわね~。別にあたしには理由なんてないんだけど、してあげてもいいわよ?」

 

 

 「お前、なんでそう上から目線なんだ?それにしたくないなら、断ればいいだけじゃねぇ~か?」

 

 

 「あんたは黙っておきなさいよ、馬鹿っ!!」

 

 

 「痛ってぇ~~~!!!」

 

 

 エリカの横にいたレオに正論を言われ、危うく達也との正々堂々としたスキンシップを壊されそうになり、エリカはレオの顎に見事な蹴りを喰らわせ、数メートル飛ばせた。そして、レオが悶絶している中、今の出来事がまるでなかったかのように笑顔で改めて向き直るエリカは、今度こそ達也と握手するために腕を伸ばす。

 

 

 「あれ?レオ?どうしたんだい、朝から廊下で倒れて…。あ、エリカも来てたんだね。おはよう。………エリカ?」

 

 

 「……何で”今”ここに来るのよ。せっかくいいところだったのに…。」

 

 

 「エリカ…?なんか顔が逝ってる…! 僕が一体何をしたって言うんだ…!」

 

 

 「そうやって、呑気にしているから美月が心変わりするんでしょうがっ!!」

 

 

 「え!?私ですか!? 私は別に…!!」

 

 

 「朝から賑やかだな…。」

 

 

 

 廊下の奥から現れたのは、一科生となり、教室も離れていた幹比古だった。そしてタイミング悪い登場で、エリカからバッシングを受ける事になるのだった。

 

 そんな賑やかな騒ぎのお蔭か、達也の有志の協力者を募るのは一旦終結する。

 

 

 …始業のチャイムが鳴り響き、未だ悶絶したレオの首を掴んで、クラスに戻るエリカと意味も分からずに弄られた幹比古が達也たちから離れていく。

 

 美月はエリカに連れて行かれるレオを心配していたが、達也は気にした素振りもなく、授業に集中する。

 

 

 そして、幹比古は授業を受けながら、エリカが言ってた”美月の心変わり”という言葉に、今日一日悩み続けるという過ごし方をする事になる。

 

 

 




…幹比古、ドンマイ。
まさかあそこで出てくるとは…。間が悪いとしかいう事はないような?

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