はい…、申し訳ありません!!『お兄様がアイドルになる件!!』のスピンオフストーリーの『お兄様が有名になる件!!』だと思ってください!!シュタ~~!!
あ!!逃げた~~~!!
校長から申請許可をもらい、生徒会室でこの実験の監督をしてくれる廿楽先生がミーティングに参加する。そして実験に使用する魔法の役割分担を終え、今日の所は来れてお開きとなった。
恒星炉実験の実質的な準備期間は四月二十一日から四月二十四日までの四日間。論文コンペと比べると準備期間としても人員も限られているため絶望的だ。しかし、今回は構造物としてのエネルギー炉を作る訳ではない。その仕組みを見せるだけだ。今回の実験は基本的に魔法の実演なのであって、論文コンペのように実際に作動する実験装置を組み立てようというのではない。
故に、まったく神田議員とジャーナリストたちの視察に間に合わない訳ではないのだ。生徒会役員とあと数人の協力者がいれば…。
四月二十一日、土曜日。始業前の教室で作戦を実行する。
今日は土曜日だが、授業は午前中まで行われるのだ。普段通り登校し、始業前のクラスメイトとの雑談が教室中に広がり、賑やかになっている。
達也は学校の雰囲気が漂う教室に入るなり、早速声を掛けられた。
「あ、達也さん、おはようございます。」
「ああ、おはよう、美月。」
「あ!達也く~~ん!!おっはよう!!」
「オッス!達也!!おはよう!!」
既に登校し、席についていた美月から挨拶され、同じく挨拶を返し、隣の席に座る。すると、達也が来たのを待っていたかのようなタイミングで、窓を開けてエリカとレオが声を掛けてきた。
「ああ、おはよう、エリカ、レオ。」
「ねぇねぇ!!達也君、何か面白い事しようってしてない?」
挨拶を返した直後に、何の前触れもなくエリカが顔をニヤつかせて聞いてきた。しかし、達也は動じる事はなく、寧ろ切り出すのにいいアシストをしてくれたとエリカに感謝していた。今回の実験で有志の協力者を何人か集めたかったところだ。まずは、友人を引き込むとしよう。
「いきなりだな。なぜそう思うんだ?」
「ええ~~、だって達也君、昨日はずっとそわそわしているようだったし?今は嬉しそうだし? これはなんかあるって思うわよ!」
「………なんだ、その言い方は。」
「ちょっ、ちょっと、達也君?そんな目で見ないで!!ごめんなさいッ!!過剰表現しすぎました!!」
エリカが聞いてきたので、その理由を矯味で聞いてみた達也だったが、乙女の反応のような言い回しをされたため、一気に興味が尽き、ジト目をエリカに向けた。その視線にやり過ぎたと悟ったエリカは慌てて謝る。しかし、エリカの言葉を裏付けるように美月も話しに加わる。
「そうですね、エリカちゃんがそう言いたいのも分かります。今日の達也さんはなんだかいい事でもあったような雰囲気をしてますから。」
「そうだな~、昨日からどこか落ち着きがないような気はしてたけど、今日はなんだか楽しそうな感じだもんな! なにかあったのか?」
美月に続いてレオまでも、達也の微妙な変化を感じ取っていた。達也は普段と変わらないと思っていたが、友人たちにそこまで言われれば、認めざる得ない。
(…やはり自分の事はまだまだ分かっていないみたいだな。)
…と心の中で呟くしかなかった。
そんな訳で、脱線しかかっていた話を戻し、達也は本題に入る。
「実は、来週の水曜日、四月二十五日に実験をする事になったんだ。その許可が昨日の放課後に降りて、今日から準備に取り掛かる事になっている。」
「実験ですか?いったいどのような実験をするんですか?達也さん?」
同じ魔工科に属する美月は自分の席から身を乗り出して興味津々で近づいてくる。その反応に若干どうするべきか迷ったが、美月にこそ協力してもらいたい人員なので、そこには突っ込まない。……幸いにもここにまだ幹比古は来ていないから。
「ああ、これが実験内容だ。」
そう言って、いつの間に出したのか、電子ペーパーを取りだして、美月に渡す。すると、目をくぎ付けにして読んでいた美月の全身がわなわなと震えだし、上手く言葉が出てこない。美月の態度からエリカもレオも一般的な実験とは違うと認識するしかない。そして何より達也が持ち出した実験だ。美月の様子から実験への興味が膨れ上がっていた。
「た、た、た、た、達也さん!!? こ、こ、こ、これはとても素晴らしい実験に!!なります!! わ、わ、わ、わ、私、お、お、お、お、お手伝いさせていただきます!!必要なら!何でもしますから!!」
「美月?」
「興奮して、思い切りどもってたわね…。」
そしていきなり顔を勢いよく上げたかと思ったら、達也に突進にも近い勢いで迫り、達也の手を両手で握って、目をキラキラさせ、一生懸命に協力すると訴えてきた。
その光景は傍から見れば、ずっと想っていた人に一生懸命に告白したような雰囲気だった。突然声を上げた美月に雑談していたクラスメイト達が視線を向け、達也たちに注目している。そして、今度は視線をずらして頬を赤らめたり、友人とひそひそと話しだしたりした。特に女子生徒は驚きの表情をして、
「え?柴田さんって吉田君の事が好きだったんじゃないの?」
「司波君に乗り換えちゃったのかしら?」
「ああ、それなら納得かも。吉田君より司波君の方が頼りになりそうだしね。」
「やっぱり達也様の魅力は素晴らしいわ~!!」
「達也様?」
「あ、いえ、ちが…」
「そうだよね!!達也様って呼ばないとあの才能を持つ達也様を表現できませんもの!!」
「「「「「「キャ~~~~~~!!!」」」」」」
女子らしい恋愛話を膨らませるのであった。
そうとはまだ気づかないで、自分がエキサイトしている事にも自覚がない美月はただ、達也からの返事を目を瞑って、達也の手を握る手にも力が入り、祈っていた。
その姿にエリカとレオは目を丸くして、罰が悪そうに苦笑いをして固まっていた。そしてもう片方の当事者である達也は、この状況にどうすればいいのか悩み、苦笑いをしようとして、失敗したような顔になって、美月の顔を見ていた。
いや~~~!!
この状況!!やばいよ!!もしこんな状況を知られたら~~!!吹雪じゃなくて、氷柱が落ちてくる~~!!