ここから本領発揮できたらいいな~。
「「うわぁ~!! 凄~い!!」」
帝都の城下町の検問を抜け、城下町の中心広場に来たくろちゃん達一行は初めての帝都入りを果たしたくろちゃんとちゃにゃんの魔法アイテムの調達を兼ねて観光していた。ちなみに暁彰は仕事で回収した荷物を依頼主に届けるため、一旦一行から離れる事になった。しかし、
・・・・
「いいですか、マサユキさん。絶対に、余計な事はしないでください。
分かってますよね? 私が戻るまで、何事もなく観光していてください。」
マサユキに顔をググッと近づけながら、忠告する。こうしておかないと、何をするかわからない、トラブルメーカーだからだ。…言っても聞くかわからないけど。
「わかってるよ。ちゃんと二人の魔法アイテムを調達した後、軽~くこの辺りを案内しているから! 私に任せれば、万事うまくいく!」
そういうと、親指をぐっと突き立って、ウィング込みで笑みを向ける。
(…それが余計に心配になるんだけどな。)
まだ納得しきれていないが、この荷物がある限り、動きが制限されるため、早く終わらせるしかないと回れ右をして、離れていった。暁彰が去るのを、手を振って見送ったマサユキは御守り役がいなくなったのをいい事に目いっぱい遊ぼうとした。
「さて、二人とも、ちゃちゃっとアイテム調達したら、遊びに行こう!
とっておきの場所を教えてあげるよ!」
「本当ですか!? 楽しみです!!」
「うんうん!! 見渡す限りでも、いろんな露店が出展されていて、賑やかだし、見ているこっちも楽しくなるっ!!」
「楽しそうだね~。でも、分かるな~。私も帝都に来たときは君達みたいにはしゃいだな~。」
「じゃ、あの露店街に行きましょう! あそこなら魔法アイテムもそろってますよね!?」
くろちゃんは勢いよく駈け出そうとしたが、マサユキに止められた。
「…あそこの露店街もいいけど、私の行きつけの魔法アイテム店の方がきちんとしたもの売っているし、気のいい人だから、割引してくれるよ!
そっちに行こう! これからの事も考えたら、そっちの方が付き合いが良くていいと思うよ!」
なんだか捲し上げられた感があったが、ここでは先輩のマサユキさんのいう事を聞いた方がいいかなと思い、二人ともこくんと頷く。それを確認して、申し訳ないと謝りながら、その魔法アイテム店に行くことになった。
チリーン~~…
「おばちゃ~ん!! ありがとう!! また、よろしく頼むね~!!」
マサユキが店主にあいさつしながら、店を出る。一方、くろちゃんとちゃにゃんは大量の魔法アイテムを抱えながら、驚きとうれしさを織り交ぜた表情で、店を出た。
「ね? こっちに来てよかったでしょ?」
「はい! 親切な店主さんで、見た事ない魔法アイテムの事も詳しく教えてくれた上に、割得で買わせてくれたんで、嬉しいです!」
「でも、こんなにたくさんのアイテムをあんなに安くしてくれて、売上とか大丈夫かな?」
「ああ。それなら大丈夫。 あのおばちゃんはやり手だし。」
「「えっ?」」
慌てて何でもないと言葉を濁すマサユキだったが、次の面白い場所に連れて行ってあげるといわれ、そっちに二人の意識を変えた。
そして着いたのは、帝都の娯楽施設の中でも、最高級のエンターテイメントが詰まったカジノ”ノジーカゴールド”
ここでは、帝国が運営するイベントや魔法試合で手に入れたガチャキューブや金銭で遊ぶ施設だ。特にスロットはそれらを使うと、魔法式やコスチュームももらえ、運が良ければ、なかなか手に入らない最高級の魔法式がゲットできる場合もある。そうすると、普通に買うよりもずっとお得な場合もあるから、このキューブスロットは魔法師達には大人気なのだ。
「よし、二人とも! これからのためにパワーアップするなら、これをするのは必須!!! 最高級魔法式を当てるぞ~!!」
「「「おおおお~~!!」」」
こうして三人はスロットに夢中になり…
★★★
「で、スロットで金品全てつぎ込んでしまって、手持ちがなく、追い出されてしまったという事ですか?」
三人はカジノの前で正座していた。そしてその三人の前には、仁王立ちする暁彰が不機嫌ですと言わんばかりのオーラを放って、見下ろしていた。三人は居たたまれない思いをしていたが、マサユキは暁彰に身体をロープでしっかり縛られていて、少し行き苦しい思いもしていた。内心はこれもいいかもっと思っていたりして。
「わたしは、なんて言いました? 余計な事はするなって言ってませんでしたか?
これは、余計な事だと思うのですが?
あなたにはそれさえもわからないという事ですか?」
言葉の矢がマサユキに次々と突き刺さる。
「はぁ…。まったく、依頼を早く終わらせてきましたが、遅かったというわけですね。仕方がないです。これは目を離した私にも責任はありますし。三人とも、ここで待っていなさい。…、ちゃにゃん、この二人をしっかり見張っていてください。」
そういうと、暁彰はカジノの中に入っていった。
暁彰に言われたとおり、ちゃにゃんは二人を監視していた。
「ちゃにゃん、これ、外してくれないかな?」
「くろちゃんのも、お願い?」
そう、マサユキとくろちゃんは互いにロープを交互に縛られていて、片方が動けば、もう片方は余計縛るという、どう縛ったらこうなるというレベルの捕縛をされていた。それを、見つめるちゃにゃんは縛られてない。
こうなった結果は、くろちゃんとマサユキが手持ちがなくなり、ちゃにゃんの分まで、使い切ってしまったためである。止められなかった連帯責任でちゃにゃんも叱られたが、二人よりまともなため、縛られなかったのだ。
「申し訳ありませんが、それは、できません~。」
「くっ! 暁彰もここまでしなくても! 帰ったらぎゃふんと…」
「帰ったらぎゃふんと…? で、何をするつもりですか?」
急にマサユキの背後に現れた暁彰にマサユキは冷や汗をかいて、言い訳をしていた。
そして、暁彰は三人に袋を渡した。その中身を確認するくろちゃんとちゃにゃんは驚いた。自分達のカジノにつぎ込む前の金品に戻っていたのだ。
「さすが~。暁彰にはいつもお世話になりますね~。」
「いつもあなたの尻拭いはごめんです。これで、大丈夫だと思いますが?」
マサユキは無視して、二人に確認する。そこへちゃにゃんが遠慮気味に問う。
「あの、私の分だけ少し多いようですが? これは一体?」
「…ああ、それですか。 それは依頼料ですよ。私、あなたに依頼しましたよね?”この二人をしっかり見張っていてください”と。
その依頼のお礼ですよ。」
それを聞いて、ちゃにゃんは袋を見ながら、絶句した。
「では、ギルドに帰りますよ? …それとその私が工面した金品は借りですからね。後でしっかり返してもらいますよ?」
言い終わると、マサユキとくろちゃんを抱え、歩き出す。ちゃにゃんはその後をひょこひょこと続く。そして、マサユキとくろちゃんは縛りがきつくなり、ぐったりとなる。
くろちゃんとちゃにゃんは思い知った。暁彰さんには逆らってはいけないと!!
一方、暁彰はもしかして、悩みの種が増えたのでは…?と屍化とした二人を抱え、先を考え、苦笑した。
暁彰はギルドの母ちゃん的存在だからな~。
逆らってはいけませんよ~。
ギルド思いの方ですから!!(笑)