魔法科の御伽魔法書   作:薔薇大書館の管理人

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土曜日は投稿デーだな…。終わったら屍になってそう…。

達也様~~!!


信じられない実験

 

 

 

 

 昼休み、達也が職員室に自分を尋ねに来たことで、内心嬉しさも感じつつ、いったい何の用かという疑問もあった。

 スミスの机に達也がやってきて、横に立つ。

 

 

 「…それで、私に何の用ですか?司波君。」

 

 

 普段と変わらない表情と声色で問いかけるスミス。そのスミスに特に訝しく思う事なく、達也は申請書を渡す。

 

 

 「実は四月二十五日に、実験をしたいので、その許可を申請しに来ました。…詳細はここに。」

 

 

 課程外での実験を行う場合、クラブ活動としてであれば顧問教師、クラブ活動以外の自主的なものであれば担当教師、担当教師がいない二科生であれば事務室に申請書を提出して学校の許可を得なければならない規則になっている。

 達也は、例の恒星炉デモンストレーションをするために、魔工科の指導教員であるスミスに申請に来たのだ。

 

 

 スミスは達也が待ちに待った実験を持ってきてくれた事に意気揚々となる。しかし、教師であり、彼より大人(年齢上では)である自分がしっかりしなければいけないと、早く申請書を全て読みふけっていたいという欲を抑え、達也に渡された申請書の冒頭を読む。すると、心が躍る気持ちが一気に冷静になった。いきなり眉を顰め、冒頭に書かれた使用魔法のリストを見たからだ。

 

 

 (司波君はもっと魔法師の技術的社会的向上を思い浮かばせる実験や運用を見せてくれていました。ここに赴任してから司波君と何度か話してみましたが、魔法工学や理論における彼の考えている事もそれを裏付けるような印象を感じました。

  ……それなのに、これは。

 

  ”重力制御、クーロン力制御、第四態相転移、ガンマ線フィルター、中性子バリア…”。

 

  司波君は魔法を兵器にした魔法を作りだし、それを実験しようと計画しているのですか?)

 

 

 使用する魔法リストだけで、大出力レーザー砲の実験をする気なのかと心の中で思った事を独り言のような質問として達也に聞いてみた。結果、達也は芸のない常套文を答えた。スミスに指摘されるまでその事に気づかなかった達也は、意表を突かれたのを隠すためにそう答えた。額にはほんの少しだけ汗が浮かぶ。

 しかし、達也にとって幸いにも、スミスの目は申請書に吸い付いていて、それを目敏く認識する事はなかった。申請書を読み進めるうちに達也の使用としている恒星炉実験に撃ちからに燃え上がる好奇心からこれは何としてもやってみるべきだという自分の意思が大きく芽生えた。

 

 

 「随分意欲的な実験内容ですが……」

 

 

 しかし、真剣な表情はそのままに横に立つ達也へ目を向けるスミスは既に技術者として威厳を垣間見せていた。

 

 

 「安全は確保できるのですか?」

 

 

 個人の感想はともかく、実験は成功すれば最高の功績が称えられる。しかし、失敗すれば危険が伴うのは魔法大学での経験からよく知っているスミス。教師から見れば、安全面を考慮して、判断しないといけない。教師は生徒を守る義務があるから。

 

 

 「計算上は確保できています。」

 

 

 スミスの問いかけに達也は無責任とも取れる言い方だった。

 

 しかしスミスはそれを窘めなかった。安全を確保できないからと言って、躊躇しても先には進まない。それも含めて実験するのも役割だからだ。スミスはそのような愚かしさとは無縁の生粋の科学者だった。

 

 

それからは、申請書の内容と去年の論文コンペとのコンセプトの違いを達也に聞きながら、確かめたスミスは、達也の淀みのない答えといい、姿勢といい、生半可な覚悟で取り組むのではないと理解できるほど真剣だと思った。

 腕を組んでしばし黙考する。普通の実験ならここで判断をしても問題はないが、恒星炉実験は『加重系魔法三大難問の一つ』に値する魔法に関わる物なら知らない者はいないと言える難問に挑むもの。安易に学校という領域で行うには、そう簡単に決定を下す物ではない。何より一介の教員である自分がその決定をする事も。

 

 

 「……分かりました。ただ、私の一存では許可できません。申請書は回しておきます。放課後には結論が出るでしょう。」

 

 

 スミスの回答に達也も頷く。放課後実験室と校庭の使用許可が即答で下りるとは達也も考えていなかった。当然だと思い、放課後には結論を出してくれるというスミスに感謝しながら、最後に一言付け加える。

 

 

 「ありがとうございます。なおこの実験の事は対外秘でお願いします。」

 

 

 達也はスミスに一礼した。

 

 

 申請も終わり、達也は食堂で待つ友人たちの元へ向かうために職員室を後にするのを見送ったスミスは、早速足早に申請書が入った電子ペーパーを大事に両手で抱え、校長室に向かった。

 

 その足取りは今にもスキップしそうなほど軽やかなものだった。

 

 

 




遅くなりました!!物凄くギリギリだった!!

でもこれでうまくいけば~~!!

…それにしても『お兄様がアイドルになる件』なのに、今の段階は『お兄様が有名になる件』だね!

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