魔法科の御伽魔法書   作:薔薇大書館の管理人

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相当喜んだだろうな~!! 年長者たちは。




願ってもない好機!!

 

 

 

 

 

 

 達也とコンタクトを取ろうと決定し、早速口が達者な大学関係者を向かわせようとし、教授の一人が今気づいたと言わんばかりに叫びだす。

 

 

 「どうしたというんだね? まだ話していない事でも?」

 

 

 「ああ!! 今思い出したんだがね! 司波達也君は『インデックス』の開発者登録をしていない!! 」

 

 

 「何だって!? なぜそれを話してくれなかったんだ!!」

 

 

 「すまない…。儂としたことが、彼の華々しい功績に熱が入り、その事をすっかり勘違いしてしまった…。彼が開発者として登録されているのは当然であり、そうだと思い込みたかったのが、いつの間にかそうなっていた…。」

 

 

 九校戦の新人戦「スピード・シューティング」で雫が披露した『能動空中機雷』は、達也が一から作りだしたオリジナル魔法。それをインデックスで正式に起用してみたのはいいが、四葉との関わりを知られる事を懸念した達也が開発者名に雫の名前にしたのだ。

 開発者は徹底的に身元を調べる。しかし、ちゃんとした理由の元、達也の事を調べる事が出来ないし、インデックスに載せる魔法について話を聞きたいという名目上の面会も憚れる。

 ここに来て万事急須かと嘆き出した大学側に願ってもない好機が舞い込んできた。

 

 なんと一高から来年度より「魔法工学科」を創設し、そのための教師として是非とも赴任してほしいという打診が来た。

 

 

 「これはなんという好機だ! 天は我々に望みをくれたぞ!」

 

 

 「一高も彼の頭脳を高く評価した。これは当然の対応だな!」

 

 

 「なら、この儂にその教師をさせてくれ。必ず司波達也君を世界に通じる天才魔法技術者に育てて見せるわ!」

 

 

 「何を言いますか!この前、物忘れで実験が大変な事になったでしょう!? もうお年なんですし、ここは私が教授の代わりに行かせてもらいます!」

 

 

 「いや、俺だ!年の近い俺なら気楽に話しかけてくれるだろうし、すぐに信頼も勝ち取れますよ!俺がやります!」

 

 

 「何を~!お主はまだ若い!それこそ学ぶべき事がたくさんあるわ!経験も浅いお主に務まるものではないわっ!」

 

 

 「何だと! 老けた爺いに今時の若者の気持ちがわかるとは思えないけどな!」

 

 

 「……では、この隙に私がこの任を受けさせて………」

 

 

 「「「そうはさせるかっ!!」」」

 

 

 …と、「魔法工学科」の指導教員の座をかけて、教授たちが熾烈な争いを繰り広げた。何か月も続き、年を超え、なかなか決着がつかなかった。自分が選ばれるようにアピールする教授たちの静かな戦いを目の当たりにし、学生が巻き込まれないように距離を置く。

 その結果、一高への赴任を了承する期日を延期させてもらっていた大学側も、このままでは魔法大学の風紀が乱れる(すでに乱れ捲くっているんじゃ?)のを恐れ、ついに決定した。

 

 

 「……では、スミス講師…。一高の指導教員をお願いします。」

 

 

 「…私に、ですか?」

 

 

 教授たちが争っている中、唯一といってもいいほど中立を務め、争いに参加しなかったスミスが選ばれた。スミス本人もまさか自分が選ばれるとは思わなかったため、目を瞠る。眼中になかったスミスが選ばれた事で、教授たちは驚きを隠せない。

 

 

 「これは理事長の判断です。既に一高にも連絡済みです。もう覆せる段階ではありません。」

 

 

 教授たちを集めて、理事長の伝言を伝える秘書の言葉に、落胆の表情を思い切り見せる教授たち。

 

 

 「ですが、私は一高への赴任をお願いした覚えはありません。なぜ私なのでしょう?」

 

 

 スミスは既に決まった事をとやかく言うつもりはない。この決定に口を挟む余地は既にない。なら、この決定を素直に聞き入れるだけだ。

 スミスの問いかけに深く頷いた秘書は、理事長の伝言を伝える。

 

 

 「”スミス講師は教授達の緊迫した環境に置かれた学生たちを気遣い、相談に乗ってあげていましたね? 教師とは、ただ教えるだけではない。学生達がのびのびと学び、成長するのを見守り、支える人間なんですよ。その教師像をしっかりと務めたスミス講師に白羽の矢を向けたのです。…一高に赴任しても、その精神を大切にお願いします。”」

 

 

 理事長の伝言を聞き、この場に集められた教授たちは自分達が我を忘れて、大事な事を見失っていた事に気づき、スミスの赴任に異議を唱える事はしなかった。

 

 

 

 こうして、ジェニファー・スミスの一高への赴任は、決定したのであった。

 

 

 その決定が一高に通知され、受理されたのは、新年度の授業が始まる一週間前だった…。

 

 




まさか、新設された魔工科の指導教員がギリギリまで決まらなかった理由がこれだとは!!?
(うちが独自に考えた理由ですから。)


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