…達也様~~~!!
今日はうちの記念すべき日なんです!! 頭なでなでしてください!!(煩悩に塗れているわ~~!!)
亜夜子からの報告を受け、早速達也は行動を起こす。
明くる四月二十日、金曜日。
始業前の生徒会室にあずさと五十里を呼び出した。神田議員の一高視察の件を伝えるため、そしてその視察の目論見を利用し、あれを披露するために二人を朝から呼び出したのだ。
しかし、当然のように五十里にくっ付いてきた花音の事はとりあえず横に置き、話を進める。達也からもたらされた話の内容に、あずさは椅子を蹴って立ち上がり動転した声を上げた。五十里も口を開けて、驚きを隠しきれていない。
二人の反応に花音が「大袈裟ではないの?」と疑問視してきたので、婚約者である五十里はいつも優しく花音を諭す言い方ではなく、その楽観論を真っ向からたしなめ、毒舌した。
いつもの中性的な顔立ちに似合った話口調の五十里とは態度も口調も変わった事に花音は若干鼻白んだくらいの反応を見せ、ようやく五十里の抱く懸念を察し、緊張感が身体に伝わってきた。
それを傍から自分から持ちかけた話なのに、他人のように傍観していた達也はというと、いつもとのギャップで意外感を覚える。顔は何を考えているのが分からせないほどの鉄壁のポーカーフェイスが継続していたが。
「…………それで、司波君はどう対処するつもりなの?」
自分でも熱くなり過ぎたと感じた五十里は、いつも通りの口調で、花音にこれまでの説明の結論を述べた後、今までのやり取りを見られていたという気まずさを感じながら、花音から達也へと顔ごと向き直り、愛想笑いを浮かべて、話題転換を図った。
五十里と花音の夫婦的な話し合い?を見守っていた達也は、もうそろそろ話を本題にしたいと思っていたので、話題転換には喜んで乗った。
「何かアイデアがあるから僕たちを呼んだんでしょう?」
「ええ。」
短く回答した達也は、後ろにずっと控えていた深雪に目配せし、それを嬉々として待ち望んでいた深雪が手に抱えていた電子黒板をあずさと五十里に手渡す。
二人が電子黒板に視線を落とすのを確認して、説明を始める。
と言っても、始業前という事もあり、詳しくは説明する時間は残されていない。
”魔法科高校が軍事教育の場となっていると非難したいなら、逆に軍事目的以外にも魔法教育の成果が出ている事を示せばいい。”
ざっくばらんな口調で結論を先取りする。達也の単刀直入な言葉に相槌も反論も質問の声も上がらなかった。
いや、上げられなかった。
電子黒板に記載されている内容を見て、衝撃を受け、それが一時思考を妨げていた。五十里の肩越しから電子黒板を覗き込む花音は、なぜ五十里が固まっているのかは理解できたが、電子黒板の内容は理解できずにいた。
あずさと五十里がその内容に我ここに非ずの状態で電子黒板を穴が開くほど見つめ、無言で読み進めていく。
そんな二人の状態からこの計画の内容説明は省けそうだと、達也は心の中でほくそ笑み、話を続ける。
「そこで神田議員の来校に合わせて少し派手なデモンストレーションを行いたいと思います。」
「………少し?」
「………これが?」
ようやくあずさと五十里の二人が反応を示す。
この電子黒板に記載されている今回のデモンストレーションの内容は、そんな簡単に言葉を纏められるような甘い物ではないのだ。
それなのに、少しも動じたり、緊張したり、もっと言えば武者震いもせずに言い切った達也に呆れ顔の間接的な意義表明を見せた。しかし受けた衝撃が強すぎてまだ本調子ではないのか、声色は呆れているニュアンスを表現しようと上手くいかず、上滑りしている感がある。
・・
二人の反応を間近で受けた達也は、二人の異議の言葉を無視した。
この時の達也の言葉の”少し”という意味は、この場の話と関係ない事を考えた上でのものだからだ。
(…叔母上の極秘任務(アイドル計画と言わないのは、プライドのためか…。)をする事を考えれば、このデモンストレーションは嫌でもないし、少し派手に演出するだけで済む。)
……なんて考えていたとは言えない。
誰にも。
達也は、このデモンストレーションの後に控えているもう一つの任務の事を速攻で棚上げし、二人を参加させるため、交渉を打ち出していくのであった。
達也のアイドル計画は忘れていませんよ~~!!達也にとっては、アイドルは派手すぎるもんね。