魔法科の御伽魔法書   作:薔薇大書館の管理人

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あの会話からいかに亜夜子を乙女にさせようか…。

ONEPIECEのボア・ハンコックからの助言…
「”恋はいつでもハリケーン”なのじゃ!!」

「素晴らしいですわ!! まさにその通りでございます!!達也様への想いはそれほど大きくて激しいモノなのですわ!!」

…案外気が合いそうだな、この二人。

*まえがきだけの付き合いですよ~~!!実際に話に登場はしませんよ!!…いずれクロスオーバーしたいなとは思っているけど!!


嵐の到来の報せ(後編)

 

 

 

 

 達也の強い眼差しを向けられ、恋する感情が高ぶり、恥ずかしくて目を逸らす亜夜子。だが、恥じらいながらも亜夜子はしっかり自分の役目を果たす。

 

 

 『先日文弥がお耳に入れた件の、具体的なスケジュールが決まりました。』

 

 

 本題を口にした事で、意識を完全に役目に置く事が出来た亜夜子は、任務の時に見せる冷静でそれでいて、魅力的な笑みと隙のない雰囲気を醸し出し、達也に強い眼差しを返す。この辺り、彼女は見かけ通りのミーハーな少女ではなかった。

 

 

 『四月二十五日、来週の水曜日に第一高校へ国会議員が視察に訪れます。』

 

 

 亜夜子の脳裏には、達也の誕生日がその前日だという事がふと思い起こしたが、すぐに意識を話しに戻す。

 

 

 「民権党の神田議員かい?」

 

 

 『そうです。良くお分かりですね。』

 

 

 「むしろ意外性が無さ過ぎるんじゃないか?」

 

 

 神田議員は野党の若手政治家で、最近はよくマスコミにも出ている。メディアでは一見、魔法師の見方を装っているが、魔法師を国防軍から排除しようとしているのは、少し注意深い人間なら誰でも分かる事だ。

 彼が、国防軍に対して極端に批判的な人権派だと知られているから、七草家当主はそれを利用するため、策略したのだ。…四葉の力を削ぐ目論見で、達也と国防軍との繋がりを世に広めるために。

 文弥から話を聞かされた時、七草家当主と九島閣下の共謀がまさにそれだったという事を達也は薄々ながら気付いていた。だからか、亜夜子からもたらされた計画の冒頭を聞いただけで、すぐに計画が見えたのであった。

 

 亜夜子は達也を尊敬しているため、思考が少し達也に似ている部分がある。達也に影響されたというべきか。すぐに神田議員の人柄を思い出し、達也の言い分や考えが当たり前だったと先程の自分の発言が可笑しく思えた。

 

 

 『そうですね』

 

 

 達也の言い分が最もだと思い、口元にそっと手を当てて、異性ならときめく様な仕草でクスクスと笑いを溢した。

 達也は、「楽しそうだな…。」と亜夜子の笑いに少し唇が吊り上る。無意識に微笑んだ達也の表情に、それを引き出したのが自分だと実感して嬉しく感じ、亜夜子は、そのまま話を進める。

 

 

 『その神田議員が、いつもの取り巻き記者を連れて一高に押し掛けるようですよ。』

 

 

 「押し掛けて、どうする?」

 

 

 『さぁ、そこまでは…』

 

 

 口元にあった手を今度は頬に当てて、少し首を傾げる。その際、日焼けしていない白い肌をした首筋が露わになる。

 

 

 「それほど大きな仕掛けは用意していないという事か。」

 

 

 しかし、達也はそれには触れず、亜夜子の答えと仕草に考える素振りも見せず、達也は納得顔で頷いた。

 

 

 『何処をどう捻ったらそういう解釈になるんです……?』

 

 

 神田議員が突撃で一高を訪問するという計画だけを耳に入れていたので、その先を知らない亜夜子は、達也の納得した顔での返し方に今度は達也の描く思考を読み取れなかった。押し掛けてからの事は調べても出てこなかったのだ。だから、言葉を濁す代わりに可愛らしい仕草で気を逸らそうとした。しかし、逆に全て理解した達也にどうやってその答えが出てきたのか、不思議で仕方なかった。

 そのためか、亜夜子の表情は年相応の幼さを見せ、ポカンと、目を見張っていた。

 

 この会話は、直接達也に掛けているため、達也と亜夜子の二人だけで行われている。達也の傍に深雪はおらず亜夜子の隣には文弥はいない。互いに私室で話している。達也以外の誰にも見られていないという気安さと恋敵(深雪)がいない中での二人だけの会話を楽しめる優越感もあって、気が一時抜けたのだった。

 

 

 「大掛かりな舞台を用意しているなら亜夜子に分からないはずはないだろう?」

 

 

 『………お褒めの言葉と受け取っておきます。』

 

 

 「褒めているんだからそれで良い。」

 

 

 達也が自分の事を認めて、更に信頼してくれての言い様に、亜夜子は感激した。胸が熱くなるほど達也への愛が溢れてくる。例えそれが、「仕事」の信頼でも。それも間違いなく亜夜子のアイデンティティの一部であり、そのアイデンティティを確立する事が出来たのも、達也のお蔭だ。

 

 言葉に詰まりながら、その気持ちを押さえて、クールな答えを返した亜夜子だったが、すかさず達也からのもっと真面目くさった追撃を受けて、本格的に絶句してしまう。

 

 

 (た、た、達也様っ!!? そ、そ、そんな事を真面目に言わないでください…!

  おかげで心の準備のないまま、もろにときめきましたわ!!心臓に悪い…。

  我ながら、ここで悶えて腰が抜けて、床に崩れ落ちずに立っている今の私を褒めてあげたいくらい…! いえ、達也様に褒めてもらいたいくらいです!!

  まだ心臓がパクパク跳ねてます…。達也様に鼓動が聞かれているのではと思うと、もう………♥)

 

 

 内なる亜夜子は既に達也にメロメロで、ノックダウン喰らっていた。だからか、本格的に絶句し、つい無意識で達也に聞いてしまった。

 

 

 『達也さん……もしかして、分かっていてやってるんですか?』

 

 

 「何を?」

 

 

 『貴方という人は……いえ、良いです。』

 

 

 もし、達也が企みや計算の上で今のやり取りをしたのなら、とんだ女たらしだと思った事だろう。しかし、本人にはその気がまったくなく、異性を誘惑…恋心を燻らせるテクの披露をしたという実感が備わっていない事をたった一言と眉を吊り上げて不思議がる顔で察した。

 

 亜夜子は、「女性を誑かす言動はお止め下さい」「もっと分かりやすく褒めてくれてもいいではありませんか」「他の女性の方でもそのような話し方をされるのですか」等、追及しようと構えを見せた。しかし、達也が理解するとはとても思えなかったし、追及すると、次回からは不意打ちの”恋のバキューン”がないかもしれない。驚いて絶句もしたが、嬉しかったのは事実だから。それに、こんな事のために電話をかけたのではないと寸前で思い出したから。

 いろいろ言いたい事は喉元まで出かかっていたが、まるで感情を窺い見られない鉄壁のポーカーフェイスで言い掛けた言葉を呑み込んだ。

 

 

 『達也さんの仰る通り、あまり大掛かりなことは考えていないようですね。多分、いつものパフォーマンスでしょう。ですが彼の取り巻きジャーナリストは、それを何十倍にも水増しして騒ぎ立てるつもりなのではないでしょうか。』

 

 

 「なるほど、それはありそうだ。」

 

 

 ここでようやく達也が亜夜子の前でこの夜初めて、考え込む素振りを見せた。ただそれも五秒程度の事。

 達也は視線を亜夜子に戻し、小さく労いの笑みを浮かべた。

 

 

 「連絡してくれてありがとう。参考になったよ。」

 

 

 『達也さんのお手並み、楽しみに拝見させていただきますわ。』

 

 

 達也の笑みに亜夜子は気取った笑顔を返し、一礼した後、亜夜子の方から電話を切った。

 

 

 

 

 

 電話が終わり、完全に切れた事を確認した達也は、画面越しから見た先程の亜夜子の事を思い出す。

 

 

 「亜夜子、いつもより少し雰囲気が違っていたような…。メイクもしていたみたいだし、服も気合が入っていたな。

  ……どこか夕食に出も招かれていたのか? なら、その後の俺への報せもよく掛けてきてくれた。早いに越したことはないが、亜夜子にはもう少し労いを見せてあげればよかった。

  …今度、何かするか。」

 

 

 亜夜子のいつもと違うアプローチに気づいていたが、意識を報告に集中していたため、褒める事もしなかった。最初に世間話は今度と自分から言った手前、今更服装を褒めるのも憚れたという理由もある。

 今度は、亜夜子にお礼をしようと決め、達也は今日も地下の研究室に向かうため、私室を後にする。

 

 ………亜夜子がわざわざ達也との電話のためにお洒落しただけだとも知らずに(当たり前だが)。

 

 

 

 

 

 ★★★

 

 

 

 

 

 「キャ~~~♥♥

  何あの達也様の表情は~~♥

  考える仕草も表情もドキッてしたけど、その後の労いを込めてくださった微笑みも素敵でしたわ!!もっと拝見させていただきたかった!! でもあれ以上は、私の達也様への愛が溢れすぎて、止められそうにありませんっ! 危うく告白しそうになりました!!

  何とか、深雪お姉さまよりお役にたてたので気取った笑顔で返して、そのまま電話を切ってしまいましたが、もう限界です~~!!」

 

 

 電話を切った直後、一気に身体の力が抜け、頬だけでなく耳まで真っ赤にして、床に崩れ、腰を抜かしながら、独り言をつぶやく亜夜子。胸に手を当てて、まだ落ち着かない心臓の鼓動を感じ取る。

 昔よりはるかに大きくなったこの想い…。そしてまだまだ好きになっていくこの想い…。達也を知る度にどんどん膨らむこの恋に亜夜子はいま、全力で浸っているのであった。

 

 

 「今日も最高な一日になりました。あ、そうでした。あれを確認しなければ!!」

 

 

 ふと思い出して、抜けた腰を奮起し、机に掴まりながら、椅子に座り、画面を操作する。すると、画面には先ほどの達也が映し出され、電話した始めから再生される。

 

 

 「よかった~~!!ちゃんと麗しい達也様の御顔とお声が録画されています!!

  これで、次の再会まで亜夜子は生きていけます!!ありがとうございます、達也様~~!!」

 

 

 再生された達也が映る画面に抱きつき、頬を寄せる亜夜子は、幸せ絶頂のオーラを放ち、恋心を育んだ。

 

 

 

 

 

 

 




亜夜子、よかったね。

それにしても、まさか電話の内容を録画していたとは…。さすが…。
真夜もそうだし、遺伝的なものがあるのだろうか…。

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