魔法科の御伽魔法書   作:薔薇大書館の管理人

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さてさて、達也と亜夜子の会話…、楽しみますかね!!ファイトよ!亜夜子!
今回も亜夜子が乙女になります!!


嵐の到来の報せ(前編)

 

 

 

 

 世間では魔法師に対する風当たりが日増しに強くなっていたが、学校というものは一種の自治領域だ。世の中からある程度隔離された社会には違いない。一高内も平穏を保っている。だが、達也にはこれが嵐の前の静けさに過ぎない事を、文弥の話を聞いてから確信していた。

 

 

 

 

 

 

 四月十九日、木曜日の夜。

 

 

 

 

 遂に達也の元へ嵐の到来を告げる報せが電話回線を通じてもたらされた。

 

 

 「やぁ、亜夜子ちゃん。…待ってたよ。」

 

 

 『…こんばんは、達也さん。夜分遅くにご連絡してしまい、申し訳ありません。』

 

 

 「いや、そこまで遅いという時間でもないさ。それにそろそろ来ると思っていたしね。」

 

 

 電話回線がつながって直後の第一声に亜夜子は軽く息の飲み、一瞬動きが固まった気がしたが、すぐに形式上の挨拶を返す所はさすがだ。達也も大して不思議には思わなかった。亜夜子が固まった原因は達也の第一声にあるというのに、だ。

 

 達也の言い方は、恋する乙女からの視点から聞けば、「君(亜夜子ちゃん)の連絡を待ってたよ。声が聴きたかったからね。」「そろそろ君(亜夜子ちゃん)から連絡が来ると思っていた。そう考えるほど、君(亜夜子ちゃん)の事を想っていたし、声も…、姿も早く見たかったんだ…。」に見事に変換されるのだ!

 

 亜夜子はその恋する乙女視点で達也の言葉を受け取った。

 

 電話する前の決意など頭から吹き飛んでしまうほどの衝撃を受けた。もう動悸が激しく全身に波打ち、平然としているのが困難になりかけているほどだ。

 

 しかし、亜夜子は自分の為すべき事を弁えている。ここで、大切な仕事を放棄するほどの少女ではなかった。

 

 

 『達也さん、先日は急な訪問にも関わらぬ手厚いおもてなし、ありがとうございました』

 

 

 「どう致しまして。」

 

 

 おもてなしと言っても御茶とお茶菓子を出しただけだ。亜夜子が社交辞令でそう言っている事は達也にも分かっていたが、彼はお世辞と謙遜のエール交換に乗らなかった。

 

 

 『達也さん、少しは世間話に付き合ってくれてもいいのではありませんか?』

 

 

 何とか平然とした振る舞いをしてはいるが、亜夜子は内心、拗ねていた。

 

 意識は仕事に集中していても、初めの衝撃が亜夜子には衝撃的過ぎて、まだその余韻が残っている。もう少し世間話でも、達也の日常の話でも、何でもいいから話したくて、それが叶わず不貞腐れる。

 

 

 (もう…、達也様ったら。 亜夜子は達也様ともっと普通の会話がしたかったのに~!!せめて、もう少し付き合ってくれてもいいではありませんか!!? 

  例えば、「今日の亜夜子ちゃん、いつもと違っているみたいだけど、何かいい事あった?」とか、「綺麗だね、よく似合っているよ。」とか、「今度その格好で遊びに来たらどうだ?歓迎するよ。」とか~~~♥

  せっかく、達也様に見せる為だけにお洒落しましたので、褒めてほしいですわ!!)

 

 

 内なる亜夜子がメルヘンチックな達也とのシチュエーションを夢見て、返事を待っていた。しかし…、

 

 

 

 

 

 

 

 「また今度ね。」

 

 

 

 亜夜子の期待は、たった一言で崩れ去り、笑顔が引きつる。

 

 いくつも考えていた返事とかとかけ離れた言葉に胸がチクリと痛んだ気がした。達也に感情を理解しろと言っても無駄なのは分かっていても、そう言いたくなる。

 

 しかし、冷静な自分もそこにいて、乙女な自分と葛藤する。

 

 そして怒っていいのか(…目を潤ませて文句を言う感じで)、呆れるべきか、二つの感情の間で揺れ動いた亜夜子は、結局諦める事を選択した。

 

 

 『まぁ……今日の所はそれで良いです。確かに大切な御用がありますから』

 

 

 達也を少しは困らせてあげようかしらと思って、口を開きかけた瞬間、達也が望む言葉ではないと達也の真剣な表情に我を思い出し、寸手で押さえる事に成功した。

 

 

 (達也様ともっと話したのはあるけど、今はそれよりも大切な事がある。それを達也様が待っているわ。

  残念だけど、またの機会に…。 それに達也様が「また今度ね」と言ってくれたのよ!! また電話してきてもいいと言ってくれているの!! ならその時に存分に話に付き合ってもらえばいいだけよ!!

  達也様~~!! やっぱりあなたのそう言う所も、好きです♥)

 

 

 「聞かせてくれ。」

 

 

 (はい♥ よかったわ!! 危うく達也様に印象悪く持たれずに済みましたわ。亜夜子は仕事の出来る女だと思ってもらわなければ、達也様が任務に就かれた時、サポートする事もできません! 達也様から嫌われるような事は慎まなければ!!

 

 

  ……それにしても、達也様…。そんなに見つめられると…、恥ずかしいですわ。

  すべてを見透かされているみたいで…。でも、達也様になら私の全てを…。)

 

 

 達也は既に話す前から「大切な用事」に意識を集中している。画面越しとはいえ穴が開くほどの強い眼差しで見つめられて、亜夜子は恥ずかしげに(実際に恥ずかしく思っている)目を逸らしたのであった。

 

 

 

 

 

 




達也にドキドキしっぱなしの亜夜子だったね!!
可愛いな~~~!! 

後編も可愛く亜夜子の恋する気持ちを代弁してあげましょう~~!!

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