魔法科の御伽魔法書   作:薔薇大書館の管理人

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水波は深雪を果たして守れるのか~~!?


初めての護衛

 

 

 

 

 私、桜井水波です。

 

 今日は、私の主であられる司波深雪様の初の護衛をさせていただくことになりました。深雪様があまりにも落ち込み様だったので、気分転換も兼て外出する事になったのですが、あの時の自分の提案した言葉を取り消したいと今になってそう思いました。

 

 というのも………

 

 

 

 

 

 「水波ちゃん、凄く似合っているわよ。そうね~…、じゃ、次はこれを着てみて頂戴?」

 

 

 「はい…。かしこ………、分かりました、深雪姉さま。」

 

 

 帰りたいと思っていしまったからか、家の中での口調と呼び方になりそうになったのを寸前で止め、外での”達也と深雪の従兄妹の桜井水波”として、接することに成功する。

 しかし、己の仕事には、プライドを持って行う水波が、外出して早々にダウンしかかっている理由というのはなんだろうか。それは、今のこの状況にある。

 

 水波は今、深雪に引っ張られるまま、ショッピングをしていて、なぜか着せ替え人形のように、深雪が選ぶ服を次々と試着するという状況に陥っていた。

 資料では、深雪は達也と出掛けた時、必ずと言ってもいいほど一日中ショッピングし、服を試着するという休日を送る生活をすると報告されていた。水波は、深雪と初めて対面した時にその意味を直感で理解した。

 

 

 (確かに、これはショッピングに赴くのも頷けます。)

 

 

 写真で見るよりもはるかに容姿端麗すぎる深雪の美貌に、深雪の美貌を一切見劣りさせない服があるかどうかと頭の過ったほど、深雪との初対面は、よく覚えているからだ。だから、深雪に見合う服を見に来ているんだと思っていたため、まさか逆の立場になるとは思っていなかったのだった。

 深雪は、達也に着飾った自分を見てもらいたいからショッピングしたり、試着したりしているので、別に服に関心を持って歩いている訳ではない。その認識の違いで、この状況に陥っている訳だが。

 水波は既に20着ほどは着替えているため、気疲れは溜まっている。おまけに深雪の美貌を見て、遠目で眺めていたり、女性だけだから、声を掛けようと志す者達がいるものの、自分達の装いや深雪に向けられる大衆の好奇の目の中に入っていく勇気が持てず、一定の距離を保っていた。混乱にもなっていないこの状況が水波の唯一の救いだった。

 深雪は、自分に降り注がれる好奇の視線は慣れているため、声を掛けて来れない者は、有象無象にしか思っていない。完全に水波の服を選ぶのに集中している。

 

 しかし、護衛の訓練を受けているとはいえ、これまでの経験上、深雪のような護衛対象の護り方など通用せず、それも相まって、気分は更にヒートダウンだ。

 

 今更ながら、達也の護衛の苦労とその敏腕さに感銘する水波。

 

 達也にしたら、「これくらいは当たり前じゃないのか?」と言いそうだが。

 

 

 なんにしても、居た堪れない気持ちになったので、水波が着替え終わってから、深雪の方へと足を運ぶ。

 

 

 「あの…、深雪姉さま? 水波はもう十分堪能しましたので、これ以上は…。それに私は深雪姉さまの付添という感じですので、服は今持っているだけで大丈夫です。」

 

 「あら、何を言っているの?水波ちゃんは私の付添なんて思っていないわよ?家族同然なのだから、こういう時くらいは遠慮はしては駄目よ?」

 

 

 「ですが…」

 

 

 「ふふふ、水波ちゃんも女の子だもの。御洒落はして当然でしょ?」

 

 

 深雪の言い分が正当なだけに、水波は何も言えない。かなりの視線の中で、深雪を守る事も踏まえて神経を使って疲れてはいるが、水波も女の子だ。深雪が選ぶ服も自分に好みが入っているし、動きやすいショーパンで、可愛らしさもある。やはり嬉しいとも思ってしまうのだ。

 それを見透かしているかのような笑みを浮かべ、最終的に水波の服を3点買った。最期に来た服は着て歩く事にして、買った服と一緒に後で送ってもらう手筈をつけて二人は店を後にした。

 その二人を見送る店員の顔はほくほくしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「それにしても、本当によろしかったのですか? あそこは深雪様のような方が好まれる店でしたが…。」

 

 

 水波が言っているのは、金額だ。リーズナブルとは言えない金額を提示しているが、それに見合ったいい生地の服が揃えられており、素晴らしい服が置かれていた。水波もそれなりに持っっているが、会社員と同等の給料分しか持っていない。(それだけでも凄い事だが。)

 そんな服を3点も買ったのだ。しかもそれは達也のクレジットカードで。

 

 やはり躊躇するのは、当然の反応だ。

 

 

 「ええ、問題ないわよ。お兄様から『水波の入学祝に服でも買ってやってくれ。』って昨日の夜、渡されたものだから。」

 

 

 「え!? そうなのですか!」

 

 

 思わず声が裏返り、驚く水波。その水波の顔を見て、悪戯が成功したような笑みを浮かべる深雪。昨日の夜、亜夜子と文弥を見送った後、達也から「明日は出掛けなければいけなくなった。」と申し訳なさそうな表情で部屋を訪ねてきて、その際にクレジットカードを渡されたのであった。

 

 

 「だから遠慮しなくてもいいの。まだ水波ちゃんにはお祝いできてなかったから。」

 

 

 優しく微笑みかける深雪に姿勢を正して、少し頭を下げる。本当はもっと頭を下げて、手も添えて、感謝の意を示したいが、ここが外だということを認識しているので、おかしくないギリギリに抑えた。

 

 

 「ありがとうございます、深雪様。大事に使わせていただきます。」

 

 

 「お礼なら、お兄様に言ってあげて頂戴。お兄様がご提案成されたんですもの。」

 

 

 「もちろんです。達也兄さまにもお礼を言います。」

 

 

 「ええ、そうだわ。では、今日はお兄様のために料理を振るいましょう!」

 

 

 「そうですね、私もご協力させていただきます。」

 

 

 こうして、二人の買い物がスムーズに廻る中、次に食材の買い出しへと歩く深雪の前に一人の青少年が現れた。

 現れたというほど、距離は近くないが、有象無象の中で、一際気になるその青少年に深雪が目を向けたのだった。

 

 そして青少年も深雪の視線に気づき、こちらに視線を向ける。いや、顔を向けたのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 




まぁ、深雪の護衛ってSPの仕事と違うっていうか、まるで『アイドルの出待ちするファンから身を挺して守る』に近いかな?
それよりも、達也がいないのに、達也の太っ腹が垣間見えたよ!!さすが、達也様~~~!!!

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