魔法科の御伽魔法書   作:薔薇大書館の管理人

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気付いたら、いつの間にか200話過ぎていた事に驚くうち。よく頑張ったなって褒めている自分自身を!

そして恋する乙女よ! 想い人にはアタックするべし!


女の勘

 

 

 

 

 

 

 達也たちの家を出て、都心のホテルに戻ってきた亜夜子と文弥。

 

 スイートルームを用意してくれていた父親の好意を受け、それぞれの寝室に入る前に今日の雑談をする事にした二人。昔から達也と会った時は、その日の夜に二人で達也について語らうのが習慣になっているからだ。

 今日も三か月ぶりに再会した達也の事で、盛り上がっていた。…文弥が興奮気味に語らうのを亜夜子が戒めつつも内容には相槌をするという流れで。

 

 

 「また一層、達也兄さんは大人びていたね、姉さん! もうカッコ良くて、僕、ますます達也兄さんのように頼られる存在になりたいって思ったよ!」

 

 

 「そうね~、達也さんは昔から素敵な方ですが、文弥の言うとおり、確かに磨きがかかっていましたわ。

  それにしても…」

 

 

 文弥の話に相槌していた亜夜子がふと物思いに耽ったのを見て、文弥は心当たりを口にした。

 

 

 「姉さん…、もしかしてあの使用人の事を考えてる?」

 

 

 「な! 何を言っているの!? 文弥! 私はあの桜井水波の事を少しも考えていませんわ!」

 

 

 「………ちゃんとフルネームが出ていたよ、姉さん。」

 

 

 「はぅ!」

 

 

 自分の失態で疑いを肯定してしまった形になってしまった亜夜子は今度は正直に話す事にした。ここでしらを切れるほど隠し通せる弟ではない事は今まで一緒に過ごしてきただけあって、知っているからだ。

 

 

 「……そうよ、最初はあのメイドの事を考えていたわ。でも、もうどうでもいいのよ、その事は。」

 

 

 ”メイド”の所だけやけに強調して話す亜夜子はにんまりとして、文弥に答えた。その笑みに危機感を感じた文弥は、スイッチが入った!と自分が余計な油を差した事に今更ながら後悔する。

 

 文弥は既に高校生になったが、見た目が少女と思われても納得するような中性の顔立ちをした可愛い男の子だ。(本人は達也のようになりたいと思っているため、自分の外見を気にしている。)そして外見の印象と変わりなく、色恋沙汰等は可愛らしい反応をする。

 以前、街を歩いていると、目の前で女性が恋人の腕に抱きつきながら歩いていた時も頬を赤く染めて、視線をきょろきょろとして戸惑っていたほどだ。

 だから、文弥が水波の事を”使用人”と言ったのも、”メイド”と言えば、男子が飛びつくと思っている女子が多くいるためであり、亜夜子にからかわれないようにするためだったのだ。しかし、揚げ足を取られた亜夜子が初心な文弥に些細な仕返しのつもりで言った”メイド”という言葉に早くも頬を染めていた。

 

 

 (ふふふ…、文弥のこういう所はいつも可愛いわね~!!)

 

 

 そう思う亜夜子は、文弥のからかいと同時に、本心も言っていた。

 

 水波の事は、単なるメイドにしか過ぎないと…。

 

 

 達也に水波の事を紹介された時は、恋敵になるのではないかと疑わずにはいられなかったが、文弥と達也の話をしていて、改めて整理してみた。

 

 今まで、深雪の護衛は達也一人で幼少時から続いてきたのに、今年になって、水波が深雪のガーディアンとして、派遣された事実に何か裏があるような気がしてならない。

 でも、あれから達也と深雪と話をしている傍ら、ただずっと立ち尽くしていた水波の振る舞いを見る限り、四葉本家のメイドの動きと同じ感じを受けた。

 だから、亜夜子は今の段階で水波はガーディアンというよりメイドのような存在だと位置づけた。そしてそれはこの先も変わらないとも思った。

 そしてそう思う事で、心にゆとりが生まれ、自尊心が復活した。だって、同じガーディアンの位置にあるとはいえ、達也は紛れもなく四葉の直系の血を引いているからだ。本来なら、深雪や文弥と同じく、次期当主候補に名をあげられていてもおかしくない。優秀な魔法を備えていたら…。

 今では、使用人たちから冷遇された扱いを受けているが、当主は達也を一目置いている節がある。達也を使用人と結婚させることは決してない!なら、例え水波が達也に恋心を抱く事があっても、結ばれる心配はない。自分が今は優位にある。何も心配はいらない!

 

 頭の中で自分が達也と肩を並べて歩いている構図を思い浮かべながら、夢見心地でいた所に、文弥から声を掛けられた……。

 

 

 

 

 という訳だ。

 

 

 

 

 しかし、亜夜子にはまだ引っかかる事がある。

 

 

 それは、達也たちと別れる際に封筒を渡す時の事だ。

 

 当主様からの伝言と同時に封筒を渡した時、達也の眉がほんの一瞬だけ吊り上り、封筒を睨んだのを亜夜子は見逃さなかった。それは、全神経を注いでいないと分からないくらいのたった一瞬の出来事。恐らく真正面にいた亜夜子だけが見れた変化。

 任務に置いては、諦めたような興味ないような反応を示すのが達也の見せる反応だったが、あの時だけは自棄に嫌悪感や不快感が混じった視線を封筒に向けていた。

 

 亜夜子は達也が見せた反応と封筒、伝言に水波の派遣…から何かを感じ取っていた。

 

 

 

 (任務に置いてあんな達也さんは見た事がありませんわ。もしかして……

 

  達也さんにとって、あまり気乗りしない任務が当主様から命じられ、そのためにあのメイドを派遣したのでしょうか?)

 

 

 

 あらかじ間違っていない推測を立てている亜夜子が現実に復帰した際、文弥は青白い顔をして、涙目になりかけていた。

 

 

 「ふふふ…、文弥の負けね。姉であるこの私に意見するなんてまだまだ甘いわよ?」

 

 

 「うう…だ、だからってこんな事はないだろ!? 姉さん!」

 

 

 「あら、そんな事はないわよ? 文弥は何を着ても似合っているんだし、この際だから新しい物を取り繕ってあげるわ!」

 

 

 「い、嫌だ~~~~~~~~!!!」

 

 

 

 いきなり目が輝きを増した亜夜子に文弥が悲鳴を上げながら、逆らえない窮地に立たされ、それから真夜中まで姉に遊ばれるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 …………女装のファッションショーで。

 

 

 

 

 下着まで女性用を穿かせる徹底した女装に文弥が力尽きるまで続いた結果だ。そして逆に亜夜子の血色がよくなり、力尽きた文弥を女装させたままベッドに寝かせ、自分の寝室のベッドへ向かい、すっきりした寝顔で眠るのだった。

 

 

 

 

 ……今日も達也への恋心を綴った日記を書いてから。

 

 

 

 

 『………………だから、達也さんの次なる任務で、私がお役にたつ時が来ると思うの!!

  これは、女の勘だけど、私の勘は当たるのよ!!

  達也さんに必要とされるなら、なんだってするわ!』

 

 

 

 

 …と最後に書きつづられていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




わざわざ伝言を頼むのだから、亜夜子にも何かさせるつもりなんだよ、真夜は。
そしてそれを感じ取った亜夜子もテンション上げてますな♪

文弥……ドンマイ。

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