魔法科の御伽魔法書   作:薔薇大書館の管理人

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動画で魔法科イベントを見ていたら、達也の弱点が作者と同じ考えだったことに気づいた!!
イベントとかはあまり見ないけど、佐藤先生とシンクロして、怖さが…。
 でも、弱点の原因は答えていないし、大丈夫!!

パクリではないです~~~~~~!!!


憂いを払う時間

 

 

 

 

 

 

 真夜の呼び出しから帰ってきた達也は、自宅まで100M程の距離で立ち尽くしていた。

 

 なぜ、そのまま歩いて、中に入らないのか…。

 

 

 …入れる状態ではない事が気配だけで分かったからだ。

 

 

 (またやっているのか…。)

 

 

 ここからでも家の中で何か起きているのかわかる達也も凄いが、それよりも事態が深刻なのは、家の中だ。

 溜息をつきたい気持ちを振り払い、毅然として歩き、門に手を置く。すると、事態が静まり、達也にとって一番大事な人物が玄関に向かっていることを察した。

 

 そのまま、玄関の扉を開け、屋内に入る。

 

 

 「おかえりなさいませ、お兄様!」

 

 

 「……おかえりなさいませ、達也様。」

 

 

 「ただいま。」

 

 

 迎え入れてくれた深雪と水波に達也も言葉を返す。

 

 一方で、深雪と水波の表情は対照的だ。

 

 待ちに待った兄の帰りを一番先に迎えられ、嬉々とする深雪。

 

 主に先を越され、悔しがっている水波。

 ただし、水波の顔には、疲労も見て取れる。

 

 

 その表情からでも、自分がいなかった時の二人のやり取りが想像するのに難しくない。

 それは、リビングに入ってすぐにも実感した。

 

 深雪に腕を引っ張られて、連れて行かれるままにリビングに入ると、そこには、肌が痛くなるほどの冷気が一気に身体に襲いかかってきた。

 体を鍛えている達也には、この冷気は別に何ともないが、見過ごせるレベルのものではないのは確かだ。

 現に、達也と深雪の後についてリビングに入ってきた水波が無表情を装いながらも血の気が顔から消えていて、白い息まで出している。

 

 達也は人差し指を突き上げると、リビングに立ち込めていた冷気が一気に消え去り、常温に戻る。

 

 達也の魔法によってこの場の異常は取り除かれた。

 

 

 「も、申し訳ありません!お兄様…。」

 

 

 自分が事象干渉力が強すぎる上に兄に余計な事をさせてしまったと嘆く。しかし深雪は達也が冷気を取り除くまで自分がさっきまでこの場を凍らせる勢いだったことに気付いていなかった。

 そのことも相まって、余計に落ち込む。

 

 しかし、達也は深雪の頭を優しくなでて、慰める。

 

 

 「気にする必要はない。 反省しているのだし、これ以上嫌悪感を持たなくていい…。」

 

 

 「…はい、お兄様!」

 

 

 大好きなお兄様からお許しをもらって、しかも頭撫で撫でしてもらっている展開にむしろ喜びを感じて、二人を取り巻く空間がピンク色に変わる。

 

 その二人を少し離れた場所から礼儀正しく控えていた水波はいまだに慣れない主の所業に頭を悩ませていた。

 司波家に来てからというもの、家事をやろうにも、自分の主である深雪と競うように行っている。暗黙のルールもできつつあるが、隙あれば家事をやってしまおうとする二人の関係が早くも出来上がり、水波は明度としての責務を全うできていない自分に不甲斐なさを感じていたのだった。

 

 そんなことを改めて考えていると、不意に達也から声をかけられた。

 

 

 「水波。」

 

 

 「はい、達也様。」

 

 

 「俺が留守にしている間、深雪の護衛をしてくれてありがとう。

  この後は俺が引き継ぐから、水波は夕食まで休んでいい。」

 

 

 「……あ、あの、私はまだ…」

 

 

 突然の申し上げに水波は若干戸惑った。

 

 戦闘訓練とは違った緊張が走る。

 

 

 「何もそこまで力を入れなくていい。

  ここに来てまだ日が浅いし、慣れない環境で働いてくれているのは分かる。だが、今の水波には、休憩が必要だ。

  ……休んで来い。」

 

 

 先ほどよりも少し強めに命令する達也に、水波は自分がかなりの疲労を積み重ねていることを実感した。

 そう思うと、達也の命令をここは聞き入れ、夕食後に明度の責務を全うし、挽回することを決め、達也たちに一礼すると、自分が与えられた部屋へと向かっていった。

 

 

 

 

 水波の背中を見送った達也と深雪は、その背中をすでに他界している穂波と比べていた。

 しかし、比べるといっても、それほどの時間ではなく、水波がリビングから出て行ったあとは、深雪はキッチンへと行き、コーヒーを淹れに行く。

 

 達也はソファに座り、電子書籍を読む。

 

 

 コーヒーを淹れて戻ってきた深雪が達也の隣に隙間なく座り、一緒にコーヒーを飲む。

 

 

 「ん、うまい…。」

 

 

 達也の一言で、満面の笑みを浮かべる深雪。

 

 

 しばらくティータイムを味わった後、深雪が達也の腕を掴み、下から達也を覗き込む姿勢で話しかけてきた。

 達也は深雪に視線を向けると同時に、露出度が高い部屋着から見える深雪の白い鎖骨を見ないように深雪の顔に視線を固定させる。

 

 

 「お兄様はお優しいのですね…?」

 

 

 「さっきの事か? あれは当然ではないのか? あのままだと間違いなく水波は倒れていたぞ。」

 

 

 「確かに、水波ちゃんがああなったのは、私が原因です…。でも、やはりお兄様のお世話は深雪には誰にも譲れないことなのです! 妥協はできません。」

 

 

 「深雪の言いたいことは分かっている。しかし程々な。

  俺にとっては、深雪がそばにいてくれることが一番だからな…。」

 

 

 「お兄様ったら!」

 

 

 笑いをこぼす深雪とその深雪を横目で見て、同じく笑う達也。

 再び二人となった空間がずいぶん昔のように感じる…。

 

 

 「お兄様…、今だけはお兄様のお時間を深雪にください。 数日ぶりに二人で一緒にいてください。」

 

 

 「もちろん。」

 

 

 互いに微笑みあい、兄妹らしからぬ雰囲気を纏い、二人の時間を満喫するのだった。

 

 

 

 

 

 達也も真夜からの任務の先行きが見えない状況に憂いを感じていたが、妹といる時間が安らぎを与え、今だけは憂いを払ってくれる。

 

 

 

 その居心地の良さを胸の内で感じた達也は、この”日常”を守らないと…と改めて刻み込んだのだった。

 

 

 

 

 

 

 




いや~…、達也がやけに女性に優しかった…。

これは、女たらしの予感!!

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