魔法科の御伽魔法書   作:薔薇大書館の管理人

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 母の日という事で、手作りの夕食を披露!!

 初めて作るおかずも好調!!


 成功してよかった!!


更なる脅威

 

 

 

 

 

 

戦闘が終結し、戦いの場となったこの場所は、暗く澄んだ森の姿を失くしていた。

 

 

 そして、そこには魔法の衝撃の爪痕がくっきりと残されていた。

 

 所々に、地面が円状にへこみや亀裂が入っていたり、爆風で折れた枝が散乱していた。…倒したブルーム達も同様に。

 

 そんな中、一人だけ、辛うじて意識があった。

 

 

 「はぁ…。 はぁ…。 さすがに…、魔力尽きた…か…。」

 

 

 ひざまづきながらも、呼吸を整えようと数度、深呼吸した。その後、ゆっくりと顔を上げ、辺りを見渡し、現状を把握していった。そして、満面の笑みを浮かべ、

 

 

 「やった!! 私の大勝利だね!! 計画通り!! さすがくろちゃんだわ!」

 

 

 そう、くろちゃん以外は全員、ノックダウンしていたのだ。

 

 くろちゃんは初の実戦、魔法戦闘に勝利し、身体をぴょん、ぴょんと万歳をしながら、大いに喜んだ。しかし、魔力だけでなく、体力も限界だったのか、すぐに疲労を見せ、その場に崩れ落ちた。

 

 

 「ま、まずは、回復しないと全力で喜べないや…。

  えっと、回復…、回復っと。」

 

 

 かなりの疲労困憊で、地面に寝転んだまま、肩にかけていたショルダーバッグに手を突っ込み、魔法アイテムを探し出す。取り出したのが…、

 

 

 

ジャジャジャ~ン!!

 

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 クロチャンハ『安眠導入機(サウンド・スリーパー)』ヲトリダシタ!!

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体力回復魔法アイテムの一つで、安眠できる特殊な超音波を発し、体力を半分回復させてくれる旅での必需品。

※ただし、害がない超音波だが、気分悪いという事で、一部使わない人もいる。

 

 

 くろちゃんはさっそくアイテムを使って、回復した。

 

 

 「これで、しばらくは大丈夫でしょ。 あとは…、」

 

 

 体を起こしたくろちゃんは倒れているブルーム達に駆け寄り、荷物を漁り始めた。

全員の荷物を調べ上げ、手には大量のアイテムをドザッと抱えていた。

 

 

 「ふふん!! いいものばっかり持っているな~。探していたものもあったし、案外いいトコのギルドだったかもね。」

 

 (金銭面の事だよね!!?)

 

 

 敵のアイテムを戦利品として手に入れることは認められているため、後で文句を言うのは筋違い…。関係ないか!

 

 

 大量の戦利品の中から、くろちゃんが取り出したのは、

 

 

 

ジャジャジャ~ン!!

 

 

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 クロチャンは『ショートブレッドMP』ヲテニイレタ!!

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これも魔法アイテムで、見た目はショートブレッドのお菓子だけど、食べると、MP(魔法力)が回復する優れもの。つまり、魔法師には必須アイテムというわけだ。

おいしそうにブレッドを食べ、魔法力を全回復した。

 

 

 「助かった。もう手持ちなかったんだよね~。ははは。」

 

 

 …くろちゃんが言ったとおり、ここまでの道のりで、CADの試しも兼ての魔法特訓、壊れた橋で立ち往生している放牧民と牛を反対側までいけるように、魔法で、土を盛り上げたりする等の人助けで、手持ちのショートブレッドをすべて使っていたのだ。

 

 (せめてこうなると考えていたなら、アイテム確認しておこう?)

 

 

 とまぁ、さておき!

 

 回復も終わり、さて帝都に行こうかと軽く準備運動しながら、倒れているブルーム達を観察していると、ふと思いついたのか、

 

 

「あっ、そうだ面白い事考えちゃった! ふふふ…。」

 

 

 ゆっくり、ゆっくりとした足の動きで、徐々に彼らの方へと歩き始めるくろちゃん。

その顔には悪知恵が働いたいたずらっ子のような妖艶な目つきと舌でちょこっと舐めずって、吊り上げた唇が印象深く張りついており、この後の彼らの末路を少し、垣間見せる気がした…。

 

 

 

 

 

 

 「…よし!!これでいいでしょう!! 満足したし、行きますか!!」

 

 

 こうして、少し離れた場所にある帝都へと続く森の道を見つけ、くろちゃんは再び歩き出した。

 

 

 

 

 

 

 

 ★★★

 

 

 

 

 「…ふぅ。 まさか一人でここまでの実力を発揮して、彼らを撃退するとはな~。

  驚きの連続だったよ♪ まぁ、まだまだ未熟な部分もあるけど、優秀なのは確かだ。」

 

 

 「…あの子の最後の『共振破壊』で吹き飛ばされ、気絶していたのは誰だったかな…?」

 

 

 興奮気味な片方にジト目と呆れ声でもう一人がツッコミを入れた。

 

 

 「あ痛っ!! そこを突きますか!? 油断していたのは、謝るけどさ!

  私らの仕事が半分も片づけてくれたようなもんだし、将来有望でしょ!?

  間違いないって!!」

 

 

 

 森の道を進むくろちゃんを木の上から観察する者が二人、いた。

 

 

 

 この二人は先ほどの一件を全て見ていたのだ。

さすがに危険だと判断すれば、自分達の存在を認識させない程度で介入するつもりだったが、彼らの仕事に差し支える前に無事、蹴りをつけれたため、事なきを得たのだった。

 

 

 「さて、残りの仕事もさっさと片付けて、あの子を追いかけますか!!

  気に入ったし、ぴったりだと思わないか!?」

 

 

 「そうだね。…ただし、また暴走するのだけはやめてくれないかな?

  後の処理をするこっちの身にもなってくれ…。」

 

 

 「わかってる♪ 私に任せておいて大丈夫だ!」

 

 

 「…(本当に大丈夫か?)…だったら、早く仕事を終わらせて、後を追わないと!」

 

 

 「はいは~い! ちょっと考えがあるから、やらせてほしいことがあるんだけど?」

 

 

 

 このような会話の後、疾風の如く、木の上を移動し、彼らの作ったアジトから大量の物品を運び出し、空中に浮かぶマットに積み込んだ。もう一人はルンルン気分で、すでに捕縛されていたブルーム達を……捕縛していた。

 その後、ブルーム達がどうなったかはくろちゃんはまだ知らない。(当たり前だ!)

 

 

ようやく、暗い迷宮めいた森を抜け、新鮮な空気をめいっぱい吸い込んで、外の空気を味わっていた。

 

 

 「う~ん!! うまいな~、頑張ったご褒美としてはいい感じだわ!

  それにこの経験は課題もできたことだし、帝都までには少しでも鍛えとかないと!」

 

 

 と、決心を露わにした。

 

 

くろちゃんは今回のバトルで自分の体力や近接戦闘の技術が乏しいことに身に染みて痛感した。ブルーム達は魔法や戦闘技術を駆使して、自分と一体となっていた。さっきは防戦一方だったから、彼らのような身のこなしや格闘技など、身につけておかないと、次も同じような敵を相手にする場合は、今回と同じ結果になるか、最悪でもそれよりひどい結果になるだろう。そうならないためにも、まずは体力アップや身体を柔軟にしようと考えたのだった。

 

 

 「でも、さっきのでもう疲れたし、帝都までの道のりを考えても、アイテムが持つかわからないし、今日はのんびりと景色を満喫しながら、先に進も…」

 

 

 今日の計画を練りながら歩いていた時、突如、目の前からピュッ!!と何かがこめかみ付近を通り過ぎた。

 後ろの方で、ドズンッと音がしたから、恐る恐る振り向くと、地面にずっぼりと刺さった斧がそこにあった。柄の先端部分には鎖が付いていて、ズズズズズッと引かれ、動き出した。そして、その鎖の方向にまた振り向くと、くろちゃんの身長の3倍はあるんじゃないかって程の巨大な鎧の亡者が数十メートル離れた道のど真ん中に立っていた。

 

 

 そしてくろちゃんは顔を空に向けて、息を吸い込み、鬱憤を晴らす…。

 

 

 「ふぅ~。涼しい風に、心地よい太陽の日差し、鳥の鳴き声。

  冒険の醍醐味ともいえる風景を鑑賞しながらの旅が満喫できる~!

  って思っていたのに、何でこうなるの~!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 ………そして現在に至るわけである。

 

 

 

 

 くろちゃんは鬱憤を晴らした後、再度鎧の亡者を見て、呆然となっていたが、じんわりと痛みが走る左の頬をゆっくりと手で触れると、何かの液体が滴り下りる感覚を感じた。その手を見つめると、赤黒いものが付いていた。ようやく頭が再起動してから、それが自分の血だと分かり、斧が掠めた時に頬を切ったと気づいた。

 

 「なっ…!!」

 

 

 くろちゃんはぶるぶると体を震わせた。顔はうつむいていた。さすがに、ショックだったかと思ったが…、

 

 

 「なっ…!! 何をしてくれたんだ~!!!! 乙女を怒らせた事を後悔出せてやる~!!」

 

 

 うん、怒りが爆発しただけだったみたい。 

 

 

 そうして、くろちゃんは大股で、力強く、亡者へと突進していった。

 

 

 

 

 

 そんな激しい怒りで我を忘れたくろちゃんは頬の傷のほかに、左の横の髪束がバッサリと切られて、半分おかっぱ状態になっていた。






 女にとっては髪が命!!っていう事がわかったわ~。


 これを読む君たちへ!!

 女の髪を甘く見たら、逆鱗が来るよ!!

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