魔法科の御伽魔法書   作:薔薇大書館の管理人

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自分にタイトルをつけるセンスがない事に激しく嫉妬しております…。
章のタイトルは本格的に話が進んだら、○の所を公開しようと思うけど、くろちゃんがそこに「ヘムタイ」って入れてくるものだから、思わず突っ込んだよ!

達也様が「ヘムタイ」になったら、キャラ崩壊どころか、地球崩壊するわ~~!!


真夜からの呼び出し

 

 

 

 

 

 『さすが達也さんね。』

 

 

 察しのいい反応をした達也に満足そうに微笑み、褒める真夜。 達也としたら、褒められたとしても嬉しくないが。

 

 

 「それで、御用というのは?」

 

 

 『そうね…、達也さんにある任務をお願いしたいので、それをご連絡した次第よ。それほど難しくないんだけど。』

 

 

 「なら、わざわざ叔母上がご連絡する必要はありませんよね?それくらいなら、いつもは葉山さんが連絡してくるか、極秘メールで知らせてくるはずです。

  その任務というのは、叔母上にとって何か重要な事が絡んでいるから直にご連絡されたのでは?」

 

 

 『………何もかもお見通しのようね。そうですわよ、これは私個人が達也さんにしてもらいたい任務です。』

 

 

 「………任務の内容は、どのようなものなんですか?」

 

 

 『あら、それは明日、詳細をお話ししますわ。言ったでしょう?これは私個人が達也さんにしてもらいたい任務なのです。なるべく極秘にしておきたいのですよ。』

 

 

 達也は真夜を冷めた視線で見つめ、真夜の思惑が何かを脳裏に巡らせる。

 しかし、そんな達也を真夜は本当に楽しそうに微笑む。

 

 この二人の沈黙が周りに緊張を走らせる。そしていつの間にか蚊帳の外のようになっていた深雪は、達也の事を気に掛けながらも、その任務について妙に心がモヤモヤするのであった。

 

 

 「………畏まりました。それでは、明日、本家の方へお尋ねさせていただきます。」

 

 

 『いえ、それは結構です。場所は魔法教会関東支部に来て頂戴。明日はそっちに用があるから。

  達也さんも明日は予定開いているでしょう? FLTに行く用事もないですし。』

 

 

 真夜は、四葉家当主と言っても、ただ本家で魔法研究を取組んでいるだけではない。師族会議に参加したり、御得意先との会合で、外出する事はある。

 それ自体はたいして、気にはしていない。寧ろ興味を持っても、あの真夜が素直に教えてくれるとは思っていない。

 しかし、こちら側の予定をすんなりと話すあたり、達也が珍しく予定がない事を把握しているという事だ。…深雪との外出も込みで。

 どうやって知ったかは別にしても、手の内を見せずに達也の事を把握しているのは、なぜか気に障る気がしたのだ。

 一定の感情の表現ができない達也でも、リードを取られている感じで、居心地が悪い。

 ここは嘘でも、「先程、深雪とショッピングに行こうと話していた所です。」と言おうかと一瞬考えを張り巡らせたが、すぐに大人げないと思い、ここは従うかと言葉を呑み込む。

 

 

 「畏まりました。では明日、魔法教会関東支部にて、叔母上に面会させていただきます。」

 

 

 『そうして頂戴な。 ああ…、それから達也さん…。

  来るのは一人で結構よ。』

 

 

 真夜の言葉は、深雪と水波を連れてくるなという意味だ。

 

 その意味は達也だけでなく、深雪も水波も理解できた。しかし、自分もお兄様と共にお伺いすると思っていたので、真夜の言葉に若干ショックを受けるのだった。

 せめて、面会の時間までお兄様とショッピングしようと思っておりましたのに…と一瞬だけ名残惜しそうに達也の背中を見つめた。

 

 それを真夜はモニターを通して、達也は一瞬の深雪の視線で気づいた。

 

 それを二人は安易に口を挟まず、明日の段取りを確認した後、電話を切った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 完全に電話がきれた事を確認すると、達也は振り返り、深雪に微笑みかけながら、頭を優しく撫でる。

 

 

 「そういう事だ、深雪。明日は、一緒に過ごす事が出来なくなってしまった。

  悪いが、水波と留守番していてくれ。」

 

 

 「……はい、畏まりました。…でもお兄様…!!」

 

 

 「何だ?深雪。」

 

 

 「叔母様と面会した後、もし差し支えなければ……その、今回の任務について……

  いえ、申し訳ございません。何でもないです…。」

 

 

 深雪は何か言おうとして、止めた。

 

 出も達也には、深雪が言わんとしていた事が分かっていた。

 

 

 ”もし差し支えなければ、今回の任務について、後で教えてくださいますか?”

 

 

 

 そう言おうとして、深雪は言葉を切った。

 

 深雪がそうした理由も達也には分かる。

 

 この任務には、四葉家内でも厳重に規制を張っているほどの極秘任務だ。その任務について明日達也にだけ話すという事は、深雪が極秘任務について知る権利はないという事。

 

 いくら達也が自分に嘘をつかないとも、お願いしても断らないとも知っていても、それを使って、知る事が許されない任務の内容を知れば、四葉家当主直々にどんな罰が待っているかはわからない。

 

 

 達也はそう、深雪が思ったから、途中で言葉を切ったのだと思った。

 

 

 

 しかし、達也は半分は間違っていた。

 

 深雪は罰を恐れて、言葉を切った訳ではない。

 

 安易に極秘任務の事を知れば、それが秘密を吐露した達也へと罰が届き、それがお兄様と引き離されるきっかけになるのではないかと恐れたからだ。

 深雪と達也は、ミストレスとガーディアン…。いわば主従関係の中で、兄妹として生きる事が出来ている。数年前までは兄妹として過ごすなんて考えていなかったけど、あの日からすべてが変わった。

 達也を尊敬し、愛する事が当たり前に息をするようになった…。

 

 

 それが今の深雪の生き甲斐だ。

 

 

 その生き甲斐を自分の失態で失うと思うと、血の気が引いて、呼吸がままならない。

 

 

 ”お兄様が深雪から離れていくのは嫌!!”

 

 

 深雪はそんな執着を持っていたため、言葉を切ったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 俯く深雪の頬を撫で、ゆっくりと顔をあげさせる達也。

 

 

 「…深雪、大丈夫だ。俺は決して深雪を一人にはさせない。」

 

 

 瞳を覗き込まれた状態で、達也が深雪にだけ見せる微笑みを向けて、深雪を慰める。すると、深雪は先程の考えが吹き飛ぶように消え、逆に頬を赤く染め、目を輝かせる。

 

 

 「そ、そんな~~!! 『一人にはさせない』なんて!うふっ」

 

 

 達也から距離を取り、背中を向けて、達也の言葉に酔いしれる。

 

 深雪の後姿を見ながら、達也は眉を上げ、訝しがる。

 

 

 (? なんだ、妙にニュアンスがずれているような気がするが・・・。)

 

 

 深雪の言い方に疑問を覚えるものの、深雪の機嫌を解決するのか先だと思う事で、頭から追い出す。

 

 

 「深雪…、もしお前がいいなら、明日の夕飯はステーキが食べたい。深雪の手料理で。」

 

 

 「!! はい!! 大丈夫です! ぜひお兄様に最高のステーキを用意させていただきます!! 

  ですので、明日はお気をつけていってらっしゃいませ。」

 

 

 

 

 満面の笑顔で、目を輝かせる深雪は、帰宅後のコーヒーがまだ準備していなかった事に気づき、急いでコーヒーを淹れる。

 

 その際に、水波と一戦のやり取りがキッチンで聞こえるのを達也はBGMとして聞きながら、気になっていた書籍を読む。

 

 それからは深雪と一緒に深雪が淹れたコーヒーを飲んで、達也とのんびりティータイムを過ごし、この日は和やかに終わったのであった。

 

 

 

 

 




達也って、本当にすごいな。

深雪の憂いをすぐに塗り替えちゃった…。

逆にコロッと嬉しがる深雪もまた、ブラコンだなと実感が…。


それにしても、真夜の用事ってなんだろうね?

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