迷宮入りはさせないぜ!!
犯人は鞭で縛って、快楽を目覚めさせてあ・げ・る・ぜ!!
ホームズのドSきた~~。
衝撃の展開へとなった事件現場に、緊張した空気が張りつめる。
「どういうことなの?ホームズ。だって、被害者は書斎机で研究している時に後ろから殴られたんでしょ?
なら、あのメッセージを打って、送信したのも被害者じゃないの?」
「そうですよ、ホームズ…さん。
被害者が犯人の痕跡を残そうと、力を振り絞り、メッセージを誰かに送ったのでは?
現に、そのメッセージには、三人の名前を数字化して指したものでしたわ。
確かに、オーキイさんが犯人だったとは意外でしたが、ちゃんと被害者が残して…」
「本当に被害者が残したと思っているのかよ。」
「「………え?」」
ホームズは頭を掻いて、書斎机に近づく。
「レスちゃん、被害者の死因をもう一度言って。」
「はい、被害者は後ろから聖女の像で殴られた事によって起きた脳内出血が死因であります。」
「そうだ、そして被害者は即死ではないよな?」
「はい、後頭部に受けた傷が元になって、脳内出血が起き、一命を落としたのですから、殴られてからしばらくは生きていたと思いますよ。
それでも痛みが激しかったはずですが。」
「はい、このレスちゃん情報はとても重要だぜ!!
これで何が分かる?」
試すような口ぶりで話すホームズに全員が首を傾げる。
「即死ではなかったのなら、メッセージも送れるのでは?」
「ダイイングメッセージだって、ミチビ先生らしい残し方ですよ?」
「………どう思う、オドリー?」
みんなはあの暗号を残したのは被害者だと考えている。
しかし、ずっと黙っているオドリーに御神がそっと話しかけてみる。すると、オドリーは怒気を含んでいる口調で自分なりの推理を披露する。
「これは……犯人によるミスリードだったのね。
脳にダメージを受けたことで、脳に血が溜まっていく中、被害者がまともに普段通りの天才を発揮できるでしょうか?
わざわざキーボードでメッセージを打てるほどに。
私は、色んな死を見てきました。
被害者のように撲殺で、即死ではない場合は、その場から逃げようとするだけでも足が覚束ない人が多くいましたわ。
今回も同様に、脳にダメージを受けたのなら、思考能力は著しく低下していたはずです。
キーボードで犯人の名を記すなら、もっと簡潔に決死の想いで残すはず。
命が尽きかけているという時に、被害者がこのような凝ったメッセージを残すなんてあり得ないですわ。」
真剣な顔で推理を告げたオドリーに、レスちゃん椅子に座っていたホームズが拍手する。
「さすが、オドリー~~!!
経験を駆使して、見事、おいらの課題についてきたぜ!!
これは、本格的に助手として…、いや、相棒として検討しようか…?」
「そ、そんな~!!
ホームズ様のお役にたてるのは、この私だっけ!!ああああ~~~~っん!!」
「誰が、反論していいと言った?
お前はおいらの何だ?」
「はい!!ホームズ様の奴隷です!! 豚です!!」
「そうだよな? なら豚は豚らしくしておかないとな~? おいらの許可なく話すな。」
「あ…♥ ああああ~~~ん!!! わ、分かりました!! 申し訳ありませんでした!! ご主人様~~~!!」
「…たく、勘が鋭いのに、まともに頭が回らないお前のために、着てやっているってのによ~~!!」
レスちゃんの尻をかかとでぐりぐりと刺激を与えているホームズはドS丸出しに調教していた。一方で、レスちゃんはもっとしてくださいと尻を突き上げ、嬌声を上げる。
なんだか見てはいけないような気がして、当事者の二人以外は全員天井を見上げていた。
「で、話どこまでだっけ?」
話が大分外れてしまったため、ホームズがそう切り出してくる。
「被害者があのメッセージを打ち込むのは不可能だったのではないか?…からですわ。」
「そうそう…、それ。
オドリーが指摘した通り、被害者にそこまで頭が回るほど、意識はなかったのではないかということだ。もしあったら、それこそレスちゃん程の石頭じゃなかったら、まず無理だね。」
「って事は、犯人は被害者が打ったように見せかけた?」
「そう考えた方が筋が通る。」
「だったら、あのメッセージを打ったのが犯人なら、オーキイさんがわざわざ自分が犯人だと名乗るようなことをするはずがないよね?」
「たまに、そうやっておいて、逆にアリバイを作り無罪になる奴もいるけどな。
…まぁ、今回はそれはない。 …というよりは、失策だな。」
「どういう事ですか? ホームズ…さん」
「犯人はオーキイさんを犯人としてでっち上げたかったらしいけど、逆にそれが自分が犯人だと告げる証拠になった訳だ。」
「このメッセージが?」
「ああ。
被害者を殺害した後、犯人はメッセージを打とうとした。しかし、コーヒーがキーボードに零れたために使えなくなってしまったんだ。
犯人は戸惑っただろうな。せっかくオーキイさんに罪を着せようとしていたのに、これでは自分の疑いがかけられてしまう。
そこで、犯人はこの殺人を計画した時にでも、準備していたメッセージをパソコンにリンクさせ、コピーして貼り付けたんだろう。
それなら、接続する機械とマウスだけで済むからな。
そして犯人は、痕跡が残っていないか確認し、去っていった。
しかし、犯人は気付かなかったみたいだな。」
「何を? …ちょっと待って、え? オーキイさんが犯人ではないなら、一体誰が犯人なの?」
「犯人は……… あなただっ!!
………ロキ・タセヤっ!!」
「なっ!!」
「「「「「「ええええ~~~~~~~~!!!!」」」」」」
「ちょっと待ってくださいよ!! 私はミチビ先生を心から尊敬しているのですよ!!? 私がミチビ先生を殺すなんて…!!」
「でも、実際にあんたしかこの殺人は出来ないんだよ。
だって、二人はこの研究室に入る事は出来ないんだから。」
「え? 何をバカな事を!! 二人はミチビ先生とは長い付き合いなんですよ!! 二人が一度もこの部屋には言った事がないなんてありえないじゃないか!!?」
「それが有り得るんだよ。
パソコンには埃がついている。それも経った半日で溜まる量ではない…。ここに来るまで色んな部屋や廊下を通ってきて、見取り図も見たけど、この部屋だけ掃除が行き届いていなかった。
もしかしたら、オーキイさん、ここだけ掃除はするなと固く言われていたんじゃ。」
「え、ええ…、そうですわ。
ここはミチビ様の頭脳そのものが格納された、いわば”脳の部屋”。私如きでは扱えない物もありますので、ミチビ様からはここの掃除はしなくてもよいと命じられ、ずっとそのようにしていました。」
「お、俺も…、この部屋の前まではきた事があるが、入った事はないな。『お前は警備としてここにいてもらっているから、私の研究を見る必要はない』と言われた事があるぜ。 それに、ミッチーはこの部屋の前のロックの解除コードを俺達に教えていないしな。」
「そ、そんな…!!」
「あれ? ロキさんは知らなかったんですね。
それも仕方ないが、あなたはまだここにきて数年…、被害者と長い付き合いだからと、何でも知っていると錯覚したんだな。
…これでわかっただろ?
この部屋にロックを開けて、被害者を殺す事が出来たのは、日頃から被害者とこの部屋で研究をしていたロキ!! お前しかいないんだ!!」
「俺はそんな事は!! だ、大体証拠でもあるのかよ!!」
「あんた…、何で被害者が送ったメッセージが”ダイイングメッセージ”だとわかっていたんだ?」
「え?」
「おいら達が”ダイイング”なんて一言も言っていないぜ?
あんた達がこの部屋に来た時から。」
「あ!? だから、ダイイングメッセージの事を、メッセージって言えって…!!」
「犯人しか知らない秘密を吐露させる目的でしたか…。お見事ですわ。」
「それに、あんたがメッセージをコピーする際に使ったデータが僅かにこのパソコンに入っているはずだ。
分析すれば、そのデータが誰から送られてきたのか、分かるだろ?」
「くっ…………くそ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~!!!!!!!!!!!!!!」
ロキは、持っていた本のページを全て引き裂き、羊みたいに口に入れて食べていき、喉に詰まって、気絶するのだった。
★★★
「……いつから気づいていたんだ?ホームズさん。」
「あんたが入ってきた時からかな。」
「…ふっ、その時に既に僕は負けていたというのか…。」
「あんたが被害者を本当に好いていたのは分かっている。
だから、被害者らしくしようとして、ミスったのさ。
……あんたはミチビを殺してはいけなかった。それはあんたが更に苦しむことになるからな。
運命ってものは残酷だなぁ。
おいらはこうなってほしくはないと思ってたんだぜ?」
ぐたりとへたり込んだロキが動機を話していく。
そろそろ論文発表でついに一人前になると言った矢先に告げられたあの言葉から始まった。
『今回の学会での発表が終わったら、私は引退しようと思う。
そして、私の研究やこの家…、私の全ての財産をある人物に渡そうと思っている。』
突然のミチビ先生の告白に、ロキは絶句した。
今まで、学会を退いてまで、研究してこられたのに、その研究が…、ミチビ先生の全てが誰かに渡ってしまうのが恐ろしかったし、許せないと思った。
もし渡れば、きっと悪用されるに違いない。
それを防ぐためには、思いとどまってもらわないと。
それからは、毎日のように説得した。
しかし、頑なに口を縦に振らずにとうとう遺書まで書いて、誰かに正式に決めたらしかった。
そしてそれをオーキイに話す所を見てしまった。
ああ…、あの家政婦に、ミチビ先生の素晴らしさを理解できないあの人に全て持っていかれると思ったら……。
だから、実行するまで物凄く悩んだ。
だけど、先生の研究と愛したこの家を守るためにこの手で……。
そして、暗号も用意して、オーキイに罪を着せようとしました。
そうすれば、遺産分与の権限はなくなると思ったから…。
切実に話すロキに、皆が黙り込む。
しかし、オドリーがロキのすぐ目の前に座り込むと、いきなりロキの頬を叩いた。
その行動を呆気にとられてみていると、オドリーがいつもより感情的になりながら、怒るのだった。
「何が先生の研究を守りたいよ…!!
本当は先生の研究を自分以外の誰にも渡したくなかっただけでしょ!?
結局は自分の欲望で人を殺めただけじゃない!!
そんなの、私は認めないわ!!
いい!!? どんな理由があろうと殺人はその人の命だけでなく、これからの人生も、そしてその人の想いまで奪ってしまう、残忍な罪よ!!
それは、例え罪を自覚し、反省しても、その過去だけは決して自分自身からは消えないわ! どんなに被害者家族が許してくれたとしても、その事実は永遠に自分に付きまとってくる…。
……それを踏まえて、しっかりと自分がしたことから逃げずに、ちゃんと向き合って。
大丈夫…、あなたには助けてくれる人がそばにいるから。」
苦笑して、ロキから後ろへと視線を向ける。
それにつられて、ロキも後ろを見ると、オーキイとボズが微笑みかけていた。ロキは目を丸くする。
危うく冤罪をかけられるところだったというのに、優しく接してくれるオーキイに戸惑いの表情を見せる。
「……ごめんなさい。」
「はい、許しますよ。 大丈夫です。 私たちがいますから。」
「そうだ、俺もいる。…なんだしっかりと顔を上げろ!!」
「うん…、ありがとう…。」
優しい微笑みを向ける二人に涙を流して、謝罪とお礼を言ったロキは警魔隊に連行されていった。
それに続き、二人も詳しい事情聴取をするために、部屋を後にしていく。
レストレードは敬礼してから、依頼料は後日お送りしますと言い残して、部下とともに去っていった。
部屋に残されたホームズと御神とオドリー…。
「オ、オドリー……、あのさ…」
「私…、良かったと思ってます。」
しんと静まった空間で、どう切り出そうかと悩みながらも、意を決してオドリーに話しかけようとした御神の言葉に重なる形で、窓の方を見ながら、オドリーが自分と向き合いながら話しているかのように語る。
「私、ずっとあの人の事を考えてました。そして、今まで殺めてきてしまった人たちの事も。
罪を償うと決めていても、どうやって償っていけばいいのか悩んでました。
そして毎晩のように、夢に殺めた人たちの悲惨な姿が私に恨み言を言ってきました。
そしてあの人も…。
それが苦しくて、魔法を使うたびに、あの人たちのようにしてしまうのではないかと怖くなって…。
自分が自分でなくなるみたいになりそうで…。
だから、私は一度決めた心を背を向けて、皆さんの厚意に甘えてしまっていました。
でも、今回の事件に触れて、自分が楽になりたい、このまま忘れてしまいたいと、彼に言ったとおりに犯した罪から逃げていただけだって気づいたんです。
彼らに償うことができるのは、私しかいないし、逃げてしまえば、その人たちが生きていた事から目をそらしてしまうってことだから…。
だから、私は、どんなに苦しくても、ちゃんと向き合って生きていくって決めました。
そう、決心させてくれたホームズさんと御神さんには感謝してます。ありがとうございます。」
涙を流し、笑顔でお礼を言うオドリーは、ずっと溜まっていた何かを吐き出しているみたいに二人は見えた。
そして、二人はオドリーを包み込んで、頭を撫でてあげる。
「大丈夫…。 おいらたちがいるよ。」
「一緒にいるよ。私たちは家族だからね…。」
二人の優しさに触れ、涙を流し続けるオドリーは、泣き止んだ時には、心に引っかかっていた不安は消えていた。
「さぁ…、帰ろうか!!
おいらたちの家へ!!」
ホームズの掛け声に、御神とオドリーが頷き、三人はギルドへと変えるために岐路へ着くのだった。
それから数日後の違う事件では、オドリーは見事に魔法で逃げる犯人を確保し、すっかりと立ち直って見せたのだった。
長い、ホームズの事件簿が終わりましたね。
オドリーも胸の内がすっきりしてよかったね。
…ところで、今回の事件の裏には、まだ解決していないことがあるんだけど、それは明日の投稿で。
次の冒険へとつながる…、といっても最終章だけど。
その前に、11月から原作キャラを起用したサイドストーリーを投稿していきます!!