オドリーがROSEの看板娘になってから、ROSEも更に活気があふれる賑やかな魔法師ギルドになった。
…というのも、オドリーのセラピーの一環でもある。
もっと強くなると決めて、ROSEに入ったオドリーだが、そうすぐには自分を変えられずにいたのだ……。
ずっとカバルレの元で女性らしく生きる事がなかったオドリーにくろちゃん達乙女が率先して、街へと連れて行き、女子トークやショッピングをするようになった。
表情も少しずつ戻ってきたが、まだ気持ち的に整理がついていないようで、魔法が失敗したり、オーバーアタックしてしまう事があった。
オドリー自身は、何とか克服してみせると、夜中でもギルドの特訓場で、魔法の制御を回復するために取り組んでいるが、なかなか思い通りにはいかない。
やはり婚約者であり、最愛のセイヤがカバルレに殺され、それが自分が原因だったという事がショックだったんだろう。
カバルレとの戦いでは、真実を知り、感情がプラスに働いた結果、上手くできた。でも、事件が解決し、改めて考えると、どうしても悲しみに暮れ、それが魔法発動を妨げるらしい。
”魔法は、己の意志によって引き出されるものですが、時には、己の感情が更に高める事も、逆に働いてしまう事もあるのです。”
隣人となったリテラに相談すると、さっきの指摘をうけた。だから、「しっかりと気持ちを整理する事が大切。でも今は、ちゃんとした休養を取って、向き合ってあげるのがいいでしょう。」とアドバイスをもらい、看板娘としてギルドの補佐といった任務をする事で、まずは魔法は使わずに、じっくりとギルドに慣れていってもらおうと考えたのだ。
それがうまく機能し、今みたいにオドリーのお陰で、忙しいギルドハウスの中も明るくなる。
しかし、あれから変わったこともある。
オドリーがROSEに入ったと同時に、ショウリンが抜けていったのだ。
抜けたといっても、ずっとROSEの仲間であることには変わりない。
しかし、ショウリンの両親…、ドレーナもあの時に亡くなったことで、身寄りがなくなったショウリンは、タツヤ族が収める領地に住んでいる遠縁に身を置くことになった。
この話が持ち上がった際、ROSEのみんなは「ショウリンは自分たちの仲間であり、家族だ!!」「俺たちがいるから、大丈夫だ!!」…と反論したが、ショウリンたっての希望で承諾された。
ショウリンは自分がまだまだ未熟すぎると感じていた。
そして、オドリーの決意を聞いて、自分も大事な人を守れるようになりたいと思った。だから、ドレーナが生まれて、育ったタツヤ族の身内に身を置き、強くなる道を選んだ。
それを、ショウリンがギルドを発つ際に聞いたROSEのみんなは、ショウリンの強い意志を受け止め、笑顔で見送ったのだった。
こうして、ROSEは出会いと別れをし、今日も前へと歩み出していく。
★★★
回想に入ってしまったが、オドリーの整理してくれた依頼内容をモニターから見て審査していたホームズ達のところに、慌ててレストレードが飛び込んできた。
「ホ、ホームズ様!! お、お助けください!!」
「ど、どうしたのですか!? レストレード様!」
「あ、オドリーちゃん…。 元気にやっているようで何より…。ああ~~、それよりホームズ様!! ぜひお力を貸していただきたいことが!!」
「…ああ、いいぜ。 今、ちょうど面白い事件を探していたところだったんだ!!」
「あ、ありがとうございます!! どうぞ、こちらです!!」
「?」
ホームズとレストレードが何やら話を盛り上げているのを、離れて見ていたオドリーに、御神が背中を押し、二人に近づく。
「なら、今日は私が助手として、同席するよ。あと、オドリーもいいかな?」
「え?……うん、いいぜ!! オドリーよろしくな!!」
「え、は、はい! こちらこそよろしくお願いします?」
まだ状況が読み込めていないオドリーだが、依頼をこなすために何か役に立てるのではと思い、レストレードが案内する後姿を追って、ホームズ、御神と共に走る。
それは、新たにホームズの扱ってきた事件を記す一ページに、刻まれる始まりだった。
いよいよホームズが事件と接触するぞ!!
御神っちを助手にしてみたけど、ボケをかますホームズに、御神が突っ込みができるか…。