くろちゃん達が楽しんでくれているなら嬉しいけどね♪
ただマスターの凄さはここで終わらないさ!!
あの男性3人組が逃げていったのを見送った店内は、先程までの静まりがえり、恐怖を感じるだけだった空気が嘘のように一変し、笑いに包まれる。
ちゃにゃんやマスターだけでなく、他の客達も一緒になって、盛大に笑い転げる。
さっきまで逃げていった3人組と同様に顔を真っ青にして、ドン引きしていたのに、愉快そうに笑っている。
「皆さん、御芝居に付き合っていただき、誠にありがとうございます。
これで彼らは二度とこの店には来ない事でしょう。」
「大丈夫!! 寧ろ楽しめたし、あいつらの鼻水垂らしながら逃げていく様は結構面白かったから!!」
「そうそう!! こんなに胸がすっきりしたのは、久しぶりだぜ!!」
「いいって事よ!! でもさ~、マスター。
あいつらを追い払ったら、この店のイメージダウンに繋がってしまわないか?」
「ああ…、大丈夫ですよ。
噂を聞いて、悪態を振りまく人のご機嫌を立てるよりも、この店を愛して下さる皆さんの安らげる空間を守る方が、私には一番大事な事なのですよ。」
「「「「「マスター………!!!!!」」」」」
マスターの言葉で感涙する店内の客一同。
今更だが、今までの流れは全て、演技だったのだ。
目的は、この店の評判を落としに来たあの3人組を追い出す事。
彼らが執拗に店を弄っていたのはそういう事だ。
しかし、彼らは依頼を受けてきただけだ。
本当の悪は、この喫茶店の向かいにある人気喫茶店のオーナーだ!!
自分の店の利益を上げるために、邪魔なマスターの店の評判を落とし、客足を奪おうと画策して、仕掛けてきたのだ。
役割としては、男達が店の評判を落としにかかる。そして店先には、パンチラ女性達を配置し、彼女たちのパンチラに翻弄された異性を呼び込む計画だ。
マスターは、この画策に気づき、男達が来店する前に、常連客も協力して追い出し作戦を実行に移す。
しかしその直後にくろちゃん達が来店した事で、作戦を少し変更し、くろちゃん達がその追い出し係になる事になった。
他の客達も全員意見が一致し、くろちゃん達もマスターの店を潰されると、「ヘムタイの居場所がなくなるからいやだ!!」と燃え上がり、あっさり了承する。
……くろちゃん達がやった方がインパクトを与えられるから…という理由だったんだが。
まぁ、そんな訳で、マスター立案の作戦は見事成功で収まる。
店内が浮き足立っている中、くろちゃんとにょきにょきは首を傾げる。
「あれ?………あの3人組はどこに行った?」
「おかしいね~。3人そろってトイレかな?」
店内をきょろきょろと見渡すが、姿が見れない。
(二人が無意識で追い出したんだけど…、黙っておいた方がいいにゃ!!)
心の中でこっそりと呟くちゃにゃんは、口笛を吹いて、天井を見る。
すべて、演技だった……………
とはいったが、一つだけ訂正する。
ちゃにゃんのヘムタイ制裁は………マジです!!
本気で二人を消しにかかってましたし、今も頭のたんこぶを取られたため、たんこぶがようやく引っ込んだ(萎んだとも言える)頭から未だに血が流れ落ちている。
顔もべっちょりと血で濡れている。
意識もどこか覚束ない二人は、作戦が終わった事を理解するのに時間がかかるのだった。
★★★
「よし!! 顔もすっきりした!! どう?ちゃにゃん?」
「私も綺麗になった?」
「……………汚いままにゃ。」
げっそりしながら答えるちゃにゃんは、脳天にチョップをかけたくなる衝動に駆られていた。
血で汚れた顔を二人は拭き取るが、その拭き取った物というのが………
男達から破り取ったパンツだった………。
平気で顔の血を拭うその姿は女性にとって、許容レベルは軽く超えるだろう。しかし……
「え?この手ぬぐい、パンツだったの? ………へっへっへっへ。」
「これはいいものを手に入れたね、くろちゃん♥」
……なんて、ヘムタイ達がむしろ喜ぶとしか思えないちゃにゃんは、それがパンツの切れ端だという事は黙っておくことにした。
もう面倒はこれ以上、御免被りたいと強く念じる。
しかし、ヘムタイに何かを引き付けるパワーがあるのか…?
ヘムタイスレイヤー資格を本気で取得しようかと考えているちゃにゃんの気苦労は、ここで終わる事を認めてはくれなかったのである。
後に、ちゃにゃんはこう叫ぶことになる。
「私もヘムタイなのか~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~!!!!!」
………と。
…………だから、何で注文まで行かないんだよ!!
でも明日ですべては解決する…。
最悪な展開だけどね!!
絶対に夢に出るね!!