「湯船にショウブ入れたから、香り搔いてみてね。」っていわれて、
入ったけど、全然におわないよ~!!
「うわぁ~。ホントに暗いや。これじゃ、方向感覚も鈍ってくるわね。」
魔法ランタンで先を照らし、足元に気を付けながら、進んでいた。
木の根っこが細かく乱れており、先ほどから、躓いて転びそうになるのだ。
それでも何とか転ばず、歩き続けてしばらく経ってから、くろちゃんは自分が同じところを通っている事に気が付いた。
「…やっぱり、この場所はさっき通った場所だね。念のためにとつけておいた目印あるし。」
くろちゃんが言ったとおり、”迷宮の森”と呼ばれているだけに以前に使用されていた森の人工道を歩いていても、迷うだろうとあらかじめ、樹木に自らの相子を流し、マークを付けておいたのだ。その結果、そのマーキングした樹木が目の前にあった。
くろちゃんはため息をついた。
「ここで時間割いている場合じゃないんだけどな~。いい加減にしてくれないかなっと。」
愚痴を言い終わないうちに、自分を基点とした振動系魔法を発動した。
『音波連鎖(チェイン・アンデュレーション)』
高周波の音の波動を発動基点を中心として、球体上に連鎖的振動をさせ、対象物にダメージを与える攻撃型魔法。波動の強度によっては三半規管を麻痺させる効果あり。
くろちゃん以外は誰もいないこの森の中で発動しても、ただ、草や樹木の枝葉が揺れ動くだけ。まったく意味のないものになるはずだった。
…そう本来なら。
しかし、この魔法によって、事態は急変化した。
周りの樹木から突如、呻き声を上げながら、落下してくる者、覆い茂る草陰から何かが倒れる物音、互いに言い合う声など、一気に人の気配が漂い始めた。
「そろそろいいかな。 うんうん!初めて発動してみたけど、結構イケてたよね!?
この母上がくれたCAD、性能がいいな。とにかく魔法発動が楽! さすが、母上が認めたものだわ!」
CADの性能とマザコン発揮で自分が今、痛い目に合わせた怪しい集団をまるで存在しないかの如く、無視し、浮かれていた。
しかし、ふと我に返り、さっきのダメージでよろめきながらも、地面から力を振り絞って何とか立った筋肉質な身体つきをした男に声が聞こえる適度な距離まで近づいて行った。
そしてくろちゃんはいたずらが成功した子供のような無邪気な笑顔でその男に暴露した。
「またお会いしましたね! ションさん!!」
「ションじゃない!! シュンだ!!」
とっさに答えたためだろう。先ほどのダメージの影響で、まだ頭がはっきりしないのに、正体を隠すつもりが、つい明かしてしまった己の恥を悔いるのと一緒になって、顔色が一層悪くなり、せっかくの筋肉質な身体が平ぺったいもやしのようになって、リーダー格のはずが、その迫力さえ霧散していた。
ただそれでも憎き敵でも見るかのように、剥き出しの闘志を秘めた眼差しをくろちゃんに向けた。戦意を失わなかったのは、それなりの場数を経験しているからか。…それか、己のプライドを傷つけられた腹いせか。後者にありそうだけど。
だいぶ体の感覚も戻ってきたのか、くろちゃんに問うてきた。
「なぜ、分かった!?
俺達は気配も姿も上手く消していたはずだ! 計画は完璧だった!
お前みたいな素人魔法師に見透かせるはずがないんだ!!」
怒気を露わにし、誰が見ても明らかにくろちゃんを徹底的に見下した態度で、自分が絶対的なのだとアピールしてきた。
そんなシュンをみて、くろちゃんは今まで抑えていた感情が一気に爆発した。
「ぷっ!! ……くっくっく!! キャハハハハハハ!!!もうダメ!!
ぐぁ!! きゃはははあははハアハアははあは!!!!おなかが痛い!!
ここまでとはね~!!!」
くろちゃんの爆笑が森中に響き渡り、森の中なのに、こだまとなっていった。
笑われている当のシュンはというと、青白い表情でも怒気を含んでいた表情から一転、怒りで顔面が赤くなり、額には深いしわが刻まれていた。
これではせっかくの女受けしそうなルックスが台無しだ。
「よくも……!! この俺を笑い、侮辱したな…!!」
「ひっひっく…。 だって、あんた。自分が犯したミスも気づいていないのに、自分がまだ有利だと思っているんだもん!
笑うな!って言う方が無理だわ!」
「何を!! 馬鹿な!!」
「そしてもうあんたの思うような展開には絶対にならないよ。こっからは私のペースで終わる…!」
シュンの全てを見抜いていたくろちゃん!!
シュンの計画とは一体。
そしてとうとう魔法バトル勃発!!
パソコンが勝手に再起動するというハプニング。
あと少しで投稿だっただけに、初めからの文章書きはきつかった…。