魔法科の御伽魔法書   作:薔薇大書館の管理人

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ドレーナが死んでしまうという涙流れるシーンの後で、本当に…。

KYな男は好かれないぜ!!おっと、もう人間じゃないから、男とは言えないか。


奥の手を見せる魔物の姿

 

 

 横たわって、動かなくなったドレーナにROSE全員は今まで溜めていた悲しみを堪えられなくなり、号泣し出す。ドレーナと戦い、危ない目にもあったくろちゃん達もそんな事がもう遠い過去のように、ドレーナのために涙を流した。

 ドレーナが一人で抱えていた事情を、タイミングが悪いというか、こんな感動的な親子の再会とは真逆な展開ですべてを知る事になり、改めてドレーナとの戦いを思い出す。

 すると、ドレーナと最初に闘っていたくろちゃん達は自分達がドレーナと直接戦ったわけじゃない事に今更ながら気が付いた。戦闘員の”ガンマ・オクタゴン”での攻撃や炎獣たちの連携攻撃に苦戦し、負傷したが、ドレーナとは一回も剣を交えたり、魔法をぶつけあったりはしていなかった。

 それは、ドレーナが自分達を殺すつもりもなかった。ただ単に大事な愛する息子であるショウリンを託すのにふさわしい人間なのか…。それを見極める試練だった…。それを知って、寧ろ今は、ドレーナを仲間のように想い、涙を流していた。

 

 タツヤ族は、理性を忘れるほどの感情をただ一つを除いては感情を持たない。その唯一大事に思える感情は人それぞれ…。

 

 暁彰、ミナホ、tokoは”友情”…、仲間を大事に思う、愛する感情を。そして、ドレーナは”家族愛”、家族を愛し、守る感情を持っていた。唯一愛せる人のため、身を挺して守ったドレーナ。任務のために復讐を抑えていたドレーナは、最後にROSEを信じ、後の事を任せ、復讐に捕らわれたままで死ぬ道より、最後に残されたショウリンを”愛する”道を選んで、死んだ…。

 

 

 そんな母親らしい最期に誰が涙を流さずにいられようか…!

 

 

 ショウリンはもう動かないドレーナの遺体をずっと見つめ、嗚咽を漏らしながら、大声で泣き叫んだ。やはり、目の前で自分を守って死んだ母親の姿は子供であるショウリンには少し辛い思いだろう。

 

 …その感情を持っている、感情が一定でも悲しまずにいられないというのに、あの魔物は、大声で蔑む笑いを漏らすのだった。

 

 

 『”カカカカカ…、カ~~~~~っバッバッバッバッバ!!!

  コレハ、コッケイダ!! ジツニワラエルミセモノダッタ…!!

 

  ソシテ、レイヲイオウデハナイカ!! ……モラウゾ、オマエヲ!!”』

 

 

 魔物カバルレは己の動きを封じていた魔法を振り払い、尾を再生させた。そして、復活した尾をまたショウリンへと向ける。

 

 

 「!!ショウリン!!」

 

 

 「退避っ!!」

 

 

 ミナホがショウリンを抱きかかえ、後ろに勢いよく飛び、くろちゃんの掛け声で一斉に散る。カバルレの狙いがショウリンだと思っていたみんなはショウリンの周りを囲み、警戒態勢を取る。

 しかし、魔物カバルレが狙ったのは、ショウリンではなかった。

 

 

 …ドレーナの遺体だった…!!

 

 

 「え!!ドレーナを!!」

 

 

 「くそっ!! 返せ!!」

 

 

 ドレーナの遺体に尾を巻きつけて、自分の元へと引き寄せるカバルレ。剣崎兵庫とホームズが取り返そうと飛び出す。しかし…

 

 

 「「ふぎゃぁ!!」」

 

 

 カバルレの干渉力で波打っていた床が耐久力が低くなり、脆くなっていたため、走り出した二人の足元の床が崩れ、見事に足をつっかえた二人は前のめりに思いきり転げ倒れた。

 

 その隙に、ドレーナの遺体を手に入れた魔物カバルレは、狂気に満ちた笑いをしながら、ドレーナの遺体を身体に取り込んだ。

 

 その瞬間、魔物カバルレの身体が脈動し始める。

 

 

 『”カ~~~~バッバッバッバ!!!

  パワーガアフレテクルゾ!! サイコウダ!! モット…モットダ!!”』

 

 

 赤い眼が光り、身体から瘴気で作り上げた無数の手を一斉にどこかへと向かいだす。ROSEのみんなを無視して、床や壁を擦り抜けていく無数の手が何をしているのかわからず、動揺する。

 

 

 「何をしているんだ!?」

 

 

 「…なんだか嫌な予感しかしないよ!!」

 

 

 「それ、結構当たるよね。」

 

 

 「……もしかしたら、エネルギー…、いや、相子を求めてる?」

 

 

 ホームズが難しい顔で独り言を述べたその時、先程からどこかへと向かって行った瘴気の手が戻ってきた。その手の中には、明らかに人間が握られていた。

 

 

 「た、助けて~~!!」

 

 

 「止めろ~~~~~~!!」

 

 

 その人間たちは、戦闘員たちで、悲鳴を上げて助けを求めていた。悲鳴を上げていない人間は、既に死んでいる者達。つまり死体だ。それから毒薬等の実験体たちも捕まっていた。

 

 ROSEのみんなは、いくら敵でもやり過ぎると解放しようと前衛隊が突撃する。しかし、無数の瘴気の手が邪魔をさせまいと進路を塞ぎ、襲い掛かってくるため、容易に近づけない。そのうちにと、魔物カバルレは、瘴気の手で捕まえた人間たちを次々に自分の体内へと取り込み始めた。

 その度に、魔物カバルレの巨大な身体が更に大きくなり、魔力も相子も高まっていき、ついには、最上階の床が重さに耐えられずに崩れ落ち、本部棟は完全に破壊され、崩壊した。崩壊する本部棟から瓦礫を飛び交いながら、緊急避難する。

 

 

 そして、崩壊が終わったあと、目の前の巨大な影に覆われた。

 

 

 崩れた本部棟になんと地下都市の天井近くまで巨大化した魔物カバルレがそこにはいた。

 

 

 

 

 取り込んだ人間たちの相子や魔力を取り込み、力を得たのだった…!!

 

 

 

 

 

 

 『”カ~~~~~バッバッバッバ!!!

 

  ドウダ…!! コノオレサマガモットモツヨイ、セカイノハシャダ!!

  オレニハムカッタコトヲコウカイサセテヤル…!!

  イマノオレハ、ヒャクニンリキ……、イヤモットダ!!センニンリキダ!!”』

 

 

 

 傲慢な態度と地下都市に響き渡る蔑んだ大笑いをする魔物カバルレはとうとう全滅のために奥の手を持ち出したのだ。

 

 

 ROSEは冷や汗を掻きながら、魔物カバルレをただ見つめる。

 

 

 




ドレーナの死を嘲笑うだけでなく、そのドレーナを己の力にするために取り込むとは…!!


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