魔法科の御伽魔法書   作:薔薇大書館の管理人

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大丈夫だよ…。ドレーナもタツヤ族だから、『再成』使えるし…!


託された愛

 

 

 

 

 ドレーナの身体を貫通したままのカバルレの尾が蠢く。サガットがその尾を斬り落とし、慎重にドレーナから抜き取る。抜き取った尾の先端はミナホが分解し、塵にした。身体に大きな風穴を開けた状態で前のめりになるドレーナの身体を暁彰が肩を貸し、支える。どんどん溢れてくる生温かい血の感触が背中に回す腕に伝わる。

 これは、一刻も早く『再成』をしないとまずいとドレーナに魔法を使う事を促す。

 

 

しかし、ドレーナは首を横に振り、『再成』を拒んだ。

 

 

 「何をやっているんだ! これならまだ『再成』が間に合う。ショウリンをこれ以上悲しませるのか!?」

 

 

 「…………ショウリンには本当に…、申し訳ないとは、思っているのだけど、もう私に『再成』を使うことはできないわ…。」

 

 

 「どうしてだ!? そんなはずはないだろ!? …ったく、俺がやる!!」

 

 

 頑なに『再成』しようとしないドレーナに声を荒げて、代わりに暁彰が『再成』を発動させようとする。『精霊の眼』でドレーナの復元ポイントを探り出す。一瞬にして、読み込む暁彰の表情が一変し、驚愕するのだった。この時、ドレーナが『再生』を断った理由がわかったからだ。

 

 ドレーナはすでに取り返しのつかない身体になっていたのだ。

 

 刻まれた紋章から体内に毒素が回り、全身に広がった毒が相子を汚染し、体を蝕んでいた。24時間以内なら過去を遡って復元することは可能だが、それ以上の時間が経過している上に、蓄積された毒で、『再成』してもしなくても余命は後わずかだという事がわかった。

 

 

 「……これが理由だったのか?君がショウリンを俺たちに預けようとしたのは…。」

 

 

 暁彰のこの言葉で、タツヤ族であるミナホとtokoが『精霊の眼』で事態を把握し、絶句した。驚きを見せたミナホだったが、事態の状況を把握すると、リテラの腕の中で涙目でドレーナを見続けていたショウリンの元へ行き、ショウリンの腕を取って繋いで、ドレーナの元へ連れてきた。

 すでにドレーナに突き刺さっていたカバルレの尾はない。ショウリンに危険はない。せめて、親子の時間を過ごしてもらおうと胸を痛め、必死に涙を見せないように歯を食いしばってドレーナにショウリンを抱きしめさせた。

 

 

 ドレーナはもう虫の息状態だった…。

 

 

 カバルレから愛するショウリンを守るために、最後の力を振り絞って、カバルレが作り出した怨霊達を最大威力の加熱系統魔法『火炎地獄』で消滅させ、身を挺した。もうドレーナには、余力は残されていなかった。

 

 

 「ママ…!! やだよ~~!! せっかく会えたのに、僕を置いていくの~!?」

 

 

 「…可愛いショウリン、ごめんね…。これから先、あなたが成長する姿を近くで見れないのは…、残念だけど、でも、あなたが今まで一生懸命に頑張って、ここまで戦ったことは、ずっと見てたわ…。

  立派になったわね、偉いわ~…。」

 

 

 「でもぉ…!!ぼくは何もできなかったぁ!!」

 

 

 ショウリンの頭を優しく撫でていたドレーナは、不意にショウリンの頬をつねりだす。

 

 

 「ふぁ、ふぁにふんほ!!ふぁふぁ!!(何するの!!ママ!!)」

 

 

 「私は、そんな意気地なしの…、ショウリンは嫌いですよ?何もできなかった?あなたはその眼で、みんなを、守ったんじゃないの?何もできなかったら、あなたをROSEが、こんな場所に、連れてくると思う?

 

  もっと、自信を持ちなさい…。自分の力に臆さずに向き合って、物にしなさい…。

 

  あなたなら、それができるわ。…だって、ママの子だもの…。」

 

 

 ドレーナの最期の助言に泣いてばかりいたショウリンは、その言葉に自然と泣き止み、袖で涙を拭い、ぎこちない笑顔でドレーナを見つめ返した。

 

 

 「うん…!! 約束する!! ぼくは負けないよ!!」

 

 

 「うん…、ママもずっとショウリンを見ているからね…。

  しっかり栄養のあるものを食べてね?早寝早起きもする事。それから…」

 

 

 虫の息だというのに、これが最後になると思うと、どうしても不安でこれからショウリンが生きていけるか、心配になり、母親らしい気遣いを見せ始める。それを、強く頷きながら、涙を堪えて行儀よく聞くショウリン達の姿を、号泣したい気持ちを抑え込み、二人を見守るROSE達。

 

 そしてついに、ショウリンに伝える事は全て言った後、再びショウリンを強く抱きしめる。そのまま、ROSE達に目配せし、ショウリンを頼むと伝える。ショウリンへの愛を託されたROSE達は、一斉に頷き返し、ドレーナの最期の願いを受け取った。

 

 ドレーナはそれを確認すると、満面の笑みを浮かべ、最後に一言を述べる。

 

 

 

 

 「………私は”愛する”事ができて幸せだったわ……。」

 

 

 

 

 

 

 溢れる涙を流し、涙声で告げた言葉を残し、ドレーナはショウリンを抱きしめていた手の力が抜け、支えられる力もなくなり、床に崩れ倒れ、最期を迎えたのだった…。

 

 

 

 

 

 そのドレーナの最期の顔には、幸せそうに笑う純粋なものだった…。

 

 

 




うわ~~~!!!
ドレーナ~~~!!

何てことだ…。ドレーナが…!! カバルレ~~!!


*今日でチャレモ終了!!見事全勝し、報酬もゲットだぜ!!

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