魔法科の御伽魔法書   作:薔薇大書館の管理人

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前回は、ドレーナがあのショッキングな双子殺害を暴露しましたが、ここからもショッキングな展開になりますね。


優しく包まれた幸せの中にいた

 

 

 

 

 

 

 なんとなく胸騒ぎがし出して、気付けば走っていたドレーナ。

 

 潜入捜査をしてからずっとカバルレの事は感情が乏しい自分でも一定の怒りを覚えるほどになるまで詳細に調べてきた。調べてきた中でなら、今頃、カバルレはROSEの闘争心や彼らの大事にしている仲間を壊すために小細工を披露しているだろう。

 しかし、かなり調べてきてもまだカバルレには何かがあるように感じる。隅々まで情報を得るには、『精霊の眼』は役に立つが、残念ながら、カバルレには使えない。そのため、別の方法で情報を集める必要があり、一般人の情報収集力より少し上という結果になった。

 

 どうして、カバルレに『精霊の眼』が使えないのかというと、入団する時の身体検査の際に、魔法力を調べ上げられ、カバルレ一座に入った証の紋章タトゥーが刻まれる。その紋章は、半分はピエロの顔で、もう半分は骸骨の顔をしたカバルレ一座を示すものだ。ドレーナには背中に刻まれていた。

 ただの紋章だと初めに考えたのが過ちだった。この紋章の線は、目に見えないくらいに小さくした起動式で刻まれたもので、カバルレに謀反を働けば、身体中に耐えられないほどの痛みを刺激させ、毒のように身体を蝕ませる。もっともまずいのは、カバルレに対し、魔法が使えない事だ。カバルレに対し魔法を使おうとすれば、呪いのように自分に跳ね返され、精神を崩壊させる。既にこの餌食になった下僕や奴隷達を見てきている。これが、ドレーナが『精霊の眼』が使えない一番の理由だったのだ。

 

 痛みは元々『再成』の度に受けてきたため、慣れている。だから寧ろ『再成』の痛みと比べれば、まだいい方だと思える。しかし下手に動いて、カバルレに気づかれるのは、厄介だと遠回りの情報収集に動いていた。

 

 

 

 

 …だが、この時すこしでも『精霊の眼』でカバルレの構造を視ていれば、少なくとも(愛するショウリンの目の前でこんな残酷な再会を果たす事はなかったのに…。)と考える必要はなかった。

 

 

 驚いて、私の名を叫ぶ我が子の泣き叫ぶ声も聞く事はなかった。

 

 

 SAMAの仕事は、正確に仕事をする私がこのような結果を生むなんて…。SAMA魔法師失格ね…。

 

 

 苦笑を浮かべるドレーナの頭には、ある日の出来事が蘇る。

 

 

 それは、愛する夫とショウリンと三人一緒にサーカスを見に来た時の事だった。素晴らしいパフォーマンスにショウリンが飛び跳ねて喜び、目を見開いて、「あんな人を笑顔にする魔法師になりたいなぁ~」と言ったのを、夫と顔を見合わせ、微笑み合った。

 サーカスが終わると、三人で手を繋いで、日が傾き、沈んでいく夕日を浴びながら家に帰った想い出を思い起こした。

 

 

 (…ああ、そうだったのね。

 

  心の中でやっぱり愛する二人との想い出ができたこのサーカスだったから、どこかで甘さを出していたのね。)

 

 

 

 苦笑から微笑に変わり、泣き叫びながらリテラの腕の中で暴れるショウリンに大丈夫と微笑みかける。

 

 

 (私はあなたを守れてよかったわ。私に生きる意味をくれたあなた達に感謝しているのよ?

  優しく包まれた幸せの中にいた私は、本当に幸せだった…。

 

 

  だから、泣かなくていいのよ…。)

 

 

 微笑む瞳から涙が零れ落ちる。

 

 

 涙で視界がぼやけながら、ショウリンを見つめていると、暁彰たちが駆け寄ってきた。暁彰は息を切らして、血相が悪い。

 

 

 

 「………!! 君はなんて無茶をっ!! 」

 

 

 

 

 

 

 そう言って、暁彰が見つめるドレーナは、背中からカバルレの尖った長い尾を身体に貫通させて、大量の血を流し、吐血し、死神の迎えを待っていた…。

 

 

 

 




なんだか身体が貫通するシーンが多いな…。でもさ、身体真っ二つはしたくないし、まだ息があるうちに話させたいじゃん!!

…取り乱しました。ドレーナの状況に動揺しました。

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