魔法科の御伽魔法書   作:薔薇大書館の管理人

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ドレーナはよく耐えたな~…。愛する者が目の前で殺されたら、絶対に暴走するのに。


血で染めた手

 

 

 

 

 

 「それは、復讐か?」

 

 

 「あたりまえじゃない!? この私から愛する人を奪ったんだから、消されるのは当然だわ。あの時、暴走せずに済んだのは、まだ愛しい息子のショウリンがいたから…。何とか理性を飛ばさずに、任務を遂行することに決めたのよ。

  だけど、心の内側には、殺意の炎を燃え上がらせたままにして…。」

 

 

 二人とも顔を見合わせたまま、苦笑する。

 

 暁彰は、苦笑しながらも瞳に映る復讐の炎が揺らめいているのを感じ、ドレーナの決意が固いことを知った。ドレーナをショウリンと再会させたかったが、それを放棄したドレーナに何を言っても考えを変えないと理解した。

 

 

 「…はぁ~、わかった。ドレーナの願いは受け取った。

  ショウリンは俺たちROSEが責任もって預かっておく。

  ただし、これだけは言っておく。

  この戦いが終わるまで絶対に復讐が終わっても、去るな!最後まで見届けてから行け…!あれからショウリンは君に逢うために魔法師として頑張ってきた。まだ危うさはあるが、成長したところを見ていってくれ…。

  それと…、あくまでショウリンは預かりだ。いずれSAMAを引退し、”日常”に戻るのなら、俺たちの元へ帰ってこい…!!絶対だぞ!!」

 

 

 暁彰のこの言葉は、仲間になろうという誘い言葉だった。

 

 

 「……ふふふふふふふ!!!」

 

 

 暁彰の言葉の意味に気づいたドレーナは、面白くておかしくて、緊張の糸が外れ、笑い出した。相当ツボったのか、お腹を押さえ、大笑いしそうになるのを堪えて咳き込んだ。

 

 

 「はぁ~!久しぶりに笑ったわ。もう…、敵にそんな情けをかけてどうするのよ?

  おかしな人だわ、暁彰。」

 

 

 「確かに今は、敵だな。だが、次に君が俺達の前に現れた時には、すっきりした顔で現れるさ。…仲間として、な。

 

  ………違うか?」

 

 

 「…そうね~、考えとくわ。その日まで私の中の憎悪が消えたなら。」

 

 

 微笑を浮かべたまま、ドレーナは胸の谷間に手を差しこみ、ある物を取りだす。手に握ったそれは、暁彰に向かって軽く投げられた。

 

 暁彰は、難なく投げられたものを右手で掴み取り、手の中の物に視線を向けた。

 

 

 そこには、金色の鍵があった。

 

 

 鍵先には、特殊な起動式が組み込まれているのを確認し、何かの解除術式の一つだと理解した。

 

 

 「それがあなたの欲しがっていた運命の鍵よ。 …まったくあなたの言うとおりになったわ。私から鍵を渡すって言っていたでしょ?」

 

 

 「ああ。まさかすんなり渡してくれるとは思わなかったけどな。」

 

 

 「あら?私と相まみえるつもりだったの?」

 

 

 「君が俺達ROSEに恨みがあるなら、共倒れをさせた方が都合がいいからな。ここで、俺を負傷させるなり、カバルレとの戦闘に支障をきたすくらいにするとは思っていた。それか、怨み晴らしに対戦するかとも思っていた。」

 

 

 「それもいい選択ね。でも、あなた達は殺さないわ。だって、あの子があんなにもあなた達に懐いているんだもの。」

 

 

 満面の笑みでショウリンへの愛情を感じさせるとともに、ROSEへの信頼も見せた所で、暁彰がドレーナの横を通り過ぎ、みんなの元へと歩き出す。

 ドレーナは立ち尽くして、そのまま暁彰を見送る。

 

 

 「鍵、ありがとうな。…無事でいろよ。」

 

 

 「いいえ、どういたしまして。…あなた達もね。それと、残り滓は置いといて。」

 

 

 こうして、互いに健闘を祈る言葉を告げ、暁彰は先に行ったみんなが待つ螺旋階段まで走っていった。

 

 

 

 

 

 暁彰の気配が消えたのを確認し、ドレーナは振り返り、ため息を吐き出す。

 

 そして軽く準備運動をすると、目的の場所に向かうため、壁を『雲散霧消』で穴を開け、先を歩いていく。

 

 

 復讐する相手を殺すために…。

 

 

 

 

 

 

 そして復讐する相手がいる部屋に来ると、ちょうど格好の餌食というしかない状況に置かれているターゲットがいた。

 

 しかも、完全に油断している。

 

 すぐさまドレーナはターゲットの心臓に至近距離で両手に纏った分解魔法で胸に風穴を開けて差し入れ、温かく脈打つ心臓を勢いよく引き抜いた。

 

 存在こと消し去ってもよかったが、愛する人が生きたまま殺されたため、同じように味わらせて殺したかったのだ。

 

 

 

 

 

 最高幹部、ウォンとターン双子を…。

 

 

 

 

 

 こうして心臓を引き抜かれた双子を見下ろし、息絶えた事を確認すると来た道を引き返し、ゆっくりと歩く。

 

 歩いてきた床には、双子の血が点々と続いており、ドレーナの手は双子の血で染まっていた…。

 

 

 

 

 

 双子は、カバルレの出した計画に真っ先に賛成し、ドレーナの夫に数々の毒薬を投与し、魔物を取り込ませた実行犯だったのだ。

 意気揚々と楽しみながら投与し続け、ドレーナの夫が死んだと知ると、大笑いして、実験の時の事を下衆な笑いで、なんとドレーナに聞かせたのだ。

 

 絶対に殺してやる…。

 

 ドレーナはずっと決意した殺意を抱えていたのだった。

 その念願が叶い、残りはカバルレのみ。

 

 

 

 

 ドレーナは殺意を身に纏い、最上階に近づくにつれ、ゆっくりだった歩みが徐々に早くなっていった。

 

 

 

 

 




はい、双子を殺した犯人は、なんとドレーナでした。

まぁ、双子には天罰が下ったんだよ!! 

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