「ふぅ~。涼しい風に、心地よい太陽の日差し、鳥の鳴き声。
冒険の醍醐味ともいえる風景を鑑賞しながらの旅が満喫できる~!
って思っていたのに、何でこうなるの~!!」
叫ばずにはいられなかったのか、森をやっと抜け、帝都へと続く道を歩いていたくろちゃんは先ほどから続く出来事に嫌気がさし、雲もない、青々した快晴の空へと鬱憤を晴らしていた。
時を遡る…。
シズク族領を離れ、ギルドに入るために帝都へと向かっていると、大きな森に着いた。この森は帝都に行くには絶対に通らなければならない場所で、太陽の日差しまで、殆ど遮るほどの高い樹が至る所にあり、広大なため、この辺りの民には”迷宮の森”と言われ、恐れられていた。
「そういわれても、ここを通らないと、帝都にはまず着けないし、ギルドに入ろうとしている身なんだから、何があっても大丈夫でしょ!」
”迷宮の森”に関してまったく危機感を持たずに、さっさと入ろうとするくろちゃんにいきなり怒声が飛んできた。
「おい!!そこのお前! この森に入るな! 出てこれなくなるぞ!!」
怒声を放った方へくろちゃんは向くと、そこにはアウトドアな服装をした、黒髪短髪の若者が走ってきた。かなり鍛えているんだろう、服越しからでもわかるほどの引き締まった筋肉質な身体つきをしていた。
「誰ですか?私、早く行きたいんですけど?」
「何をバカな事を言って…! いや、俺はこの森の入り口を守っている門番のシュンだ! それより、悪い事は言わねえから、この森に入る事だけはやめろ!!マジで危ないからな!」
そういうと、頼んでもいないのに、この森について話し始めた。
何でも、一度中に入ったら、帰ってこない人が数十人いたそうだ。
運よく、戻ってこれた者もいたが、あまりの恐怖を体験してきたのか、何があったか頑なに話そうとしなかったらしい。それ以来、民がこの森に入る事がなくなった。それがこの森に伝わる言い伝え。だから、もし帝都に行くなら、森を入るのではなく、空を飛んでいくことをお勧めする。
と、門番の…名前はなんだっけ?
あ、そうそう。ションにあれこれ聞かされた。(シュンだよ、くろちゃん。)
その情報をもとに、どうするか思案することにしたくろちゃん。
手持ちのCADには飛行魔法の起動式は入っていない。
あれは、つい最近、帝都の一部の魔法式専門販売店でのみ販売された新魔法。
数ある魔法式の中でも、難度が高く、高級魔法式の類に入るものだ。
それを買うための値段はちょっと稼いだだけでは買えないレベル。まあ、シズク族の私にはその問題はあっさりスルーだけど。
だから、そもそも飛行魔法で空から森を抜けるなんて無理。使用者の相子量が一定の限度を達するまで使用できるけど、使用した後は相子枯渇で魔法が使えなくなる。更に、例え魔法式を持っていたとしても、この広大で、未知な森を飛行魔法で通過できるとは思えない。何かあった時のためにも、万全の状態でないと。
というわけで、この案は却下。答えはただ一つ。
「御親切にありがとう。でも、飛行魔法は持っていないので、森の中を歩いていきます。」
「そうか。分かったよ。気を付けて行って来いよ。ああ、そうだ。これをやるよ。」
そういって、門番の人にもらったのは、魔法ランタンだった。
火を灯す部分に加熱系統魔法が施されていて、起動式を展開し、読み込むと、灯りが付く、旅人には便利な物品一体型CADだ。
「この森は見たとおり、森の樹木が日差しを遮っているから、かなり暗くて、視界が悪すぎるんだ。そのせいで、俺なんか、木の根っこに足を引っ掛けて転んだり、泥沼にはまり掛けたからな。」
これからの冒険に気分をリフレッシュさせようとしたのか、人懐っこい笑顔でランタンを渡した。
「ありがとう。ありがたく、使いますね。………それでは、行ってきます!」
門番にお礼を言い、ランタンを持って、森へ入っていくくろちゃんを門番は手を振って見送った。
しかし、くろちゃんの顔には先ほどまでの明るく、可愛らしい表情は一切なく、逆に気を引き締め、先を見据えた好戦的な表情になっていた。
《物品一体型CAD》…日常生活で使用する道具に単一魔法の起動式を組み込まれたもので、相子を流せば、誰でも使える便利な魔法アイテム。
いや~、小説読むのが好きなのに、文章力がないな~。と思っていましたが、うまくいってよかった。
でも、運命の邂逅はお預けになってしまいました。ごめんなさい。
次回は魔法バトルまでいけたらいいな(笑)